NHK朝ドラ『おかえりモネ』に業界人から厳しい評価「コケる要素が多すぎる」

◆絶好調だったNHK連続テレビ小説にやや陰りが……

 NHKの朝を代表する番組である“朝ドラ”こと「連続テレビ小説」シリーズ。

 1994年の『ぴあの』以降は長く低迷期が続いていたが、2010年以降は『ゲゲゲの女房』『おひさま』『カーネーション』『あまちゃん』に始まり、『ごちそうさん』『花子とアン』などが20%近い高視聴率をマーク。立て続けにヒット作が生まれて再ブレイクを果たした。

 その背景には、オーディションを減らして実力派の若手女優を起用したこと、女性の強さだけでなく家族愛を描くようになったことなどが挙げられる。

 ところが、5月15日で最終回を迎えた『おちょやん』の全115話の期間平均世帯視聴率は17.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、一度も20%に届くことなく終了。

 朝ドラで20%超えの回が一話もなかったのは『つばさ』(2009年前期)以来約12年ぶりで、業界内では「朝ドラにやや蔭りが見えてきたのでは……」という声も囁かれている。

 そんななか、スタートした清原果耶主演の『おかえりモネ』はどうなのか。序盤の放送回を見た業界関係者たちに話を聞いた。

◆『おちょやん』がヒットしなかった意外な理由

 キー局でドラマのプロデューサーを担当する40代男性のA氏はこう語る。

「『おちょやん』や前作の『エール』が振るわなかったことは、新型コロナウイルスの影響が大きい。おウチ時間が増えて、夜帯のドラマや見逃し配信は上向きになっていますが、どうしても朝はニュースでコロナのことを知りたい視聴者が多く、数字が伸びなかったのだと思います。

 内容面でいうと、モデルとなった浪花千栄子さんの知名度の低さ、主演を務めた杉咲花さんの演技力にやや厳しいところがあった面も大きかったかなと。後半の伏線回収や盛り上がりは見事でしたが、前半に視聴者を固定できなかったかなと」

 モデルとなる人物、そして役者の演技力は大きなカギを握るというわけである。

◆『おかえりモネ』はコケ要素の大きい現代劇

 では、現在放送中の『おかえりモネ』をA氏はどう見ているのか?

「視聴率はこのまま下がっていくと思います。初回こそ19.2%をマークしたそうですが、それ以降は17%前後と早くも低迷中。朝ドラといえば“女性の半生を描く時代モノ”という認識が定着しており、現代をテーマにした作品は元々ヒットしづらい。近年の現代モノでヒットした朝ドラは『あまちゃん』(2013年前期)や『半分、青い。』(2018年前期)くらい。

 ただし、両作は宮藤官九郎さんと北川悦吏子さんというヒットメーカーの作品であったうえに挑戦的な演出をしていたのが大きい。現代モノは、どうしても朝ドラのメイン視聴者である中高年層が離れてしまいますからね。

 今回の脚本を手掛ける安達奈緒子さんはラブストーリーから医療モノまで幅広く心情描写をドラマチックに描ける注目の作家さんではありますが、中高年層に刺さるストーリーを作っていけるかは不安」

◆ロケ舞台の“東北”に疑問の声も……

 キー局ドラマのキャスティングに関わる映像制作会社の女性社員・B氏にも話を聞いた。

「東日本大震災から10年の節目にあたることから舞台が宮城県になったそうですが、隣県の岩手を舞台にし、震災についても描いた『あまちゃん』の印象が強すぎて、「またか」「今やるべきドラマか?」といった声も多い。

 もちろん震災のことは風化させてはいけないと思いますが、コロナ禍に描くドラマとしてふさわしい舞台だったかというと疑問が残ります。また、ロケ地である宮城県の人々もコロナ禍ということもあり、撮影自体に歓迎ムードがなく地元の盛り上がりもやや欠けているようです」

 コロナめ……と恨み節が聞こえてきそうなところだが、それを差し引いてもマイナスの要因が多いようだ。

◆抜群の演技力だがピュアさに欠ける清原果耶

 また、ヒロインを演じる清原果耶の演技力の高さについてもB氏は指摘する。

「朝ドラのヒロインといえば、ピュアさや天真爛漫な雰囲気がカギ。その点では清原さんはピュアなルックスと圧倒的なオーラを持っていますが、良くも悪くも演技がうますぎる。

 今年映画5本に出演するなど、繊細な演技や表現力は若手トップクラスですが、朝ドラヒロイン特有の“天真爛漫さ”に欠ける。朝の慌ただしい時間に見るドラマだけに、オーバーアクションや多少の粗さがあったほうがよいのでしょうがそれでは清原さんのよさも出ないですし……難しいところですね。

 その他の俳優でいっても、鈴木京香さんや夏木マリさん、西島秀俊さんあたりも達者すぎる。見ごたえのある演技なので私は好きなのですが……」

◆主人公・百音の心情に感情移入できない?

 最後に、深夜ドラマやアニメ映画の脚本を手掛ける女性脚本家・c氏にも話を聞いた。

「序盤を見る限り、“夢を持っていない”主人公に感情移入できないところがあります。天気に興味を持つ、気象予報士を目指すという過程にも説得力があればよいのですが、やや“ご都合主義”なところがあるかなと……。

 ただ、脚本家の安達さんはラブストーリーや職業ドラマの名手。上京してからの展開でだんだんと盛り上がりが出てくるはずなので、見続けようとは思っています」

 上記のように業界関係者は見ているようだが、物語はまだまだ始まったばかり――。主人公・百音の成長とともに『おかえりモネ』も“曇りのち晴れ”になっていくことを願いたい。

〈ライター/木田トウセイ〉

【木田トウセイ】

テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

2021/6/12 8:53

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます