「今さら妻とは…」交際期間が長い夫婦。子どもを作るため、夫がとった衝撃的な行動
「やめるときも、すこやかなるときも、あなたを愛する」と誓ったはずなのに…。
“やめるとき”は、愛せないのが現実。
思い描いていた結婚生活とは程遠く、二人の間に徐々に生じ始める不協和音。
「こんなはずじゃなかった」と不満が募ったとき、そもそも「この結婚、間違ってた?」とふりかえる。
あなただったら、この結婚生活やめる?それとも…?
▶前回:「普通の幸せが欲しい…」高級レジデンスで優雅に暮らす、29歳セレブ妻が抱える心の闇
Vol.6 女として愛されたい
【今週の夫婦・結婚4年目】
夫:真人(31)総合商社勤務
妻:早苗(31)バリスタ
「えっ…!結婚してから1回だけ?その1回で、莉子ちゃんができたの?」
「ちょっと玲子!!」
神南にあるカフェで、大学からの友人・玲子が大きな声を出すので、慌てて注意する。
「私もそうなったらどうしよう~。今はまだ付き合って半年だから大丈夫だけど、結婚したら、やっぱり減るだろうなぁ…」
玲子は、神妙な面持ちで、アイスラテを一口飲んだ。
「そういう悩みは、まずはプロポーズされてからね!」
私は、カプチーノのカップを持ち上げながら、わざと軽快に言い返した。
「もぉ~、早苗は意地悪だねぇ。ね、莉子ちゃん」
来月1歳になる娘の莉子は、大人しくベビーカーの中で麦茶を飲んでいる。
私は、結婚を機に新卒から勤めていた出版社を退職し、都内のカフェでバリスタになるための修行を経て、資格も取得をした。
育休中の今、こうして他店のコーヒーを勉強がてら飲みに来ている。
稼ぎを気にせず、好きなことを仕事にできるのは、夫がいるからだ。でも、私たち夫婦は、解決困難な“ある問題”を抱えている。
玲子に打ち明けたのは、私たち夫婦の夜の営みのことなのだ。
― やっぱり、言わなきゃ良かったかな…。
真っ昼間に、子どもを連れて話す内容ではなかったと反省したが、もう遅い。玲子の目は、そうなった背景や原因、解決する見込みはあるのかを聞きたがっている。
レスなのに、子どもがいるの!?子どもを作るために、夫が提案した“ヤバイ方法”とは?
妻に興奮できない夫
夫の真人とは、大学時代にイベントサークルで知り合った。
付き合い始めたのは、3年生のクリスマスイブ。就活が本格的に始まり忙しくなる前に、想いを伝えたかったと言われたのを覚えている。
そこから一度も別れることなく結婚まで辿り着き、約10年。
付き合って3年目の記念日あたりまでは、少なくとも週に一度は体を重ねていた気がする。しかし、それから半年後に同棲がスタートした頃には、真人に誘われないことが当たり前になっていた。
そう。結婚する前から、私たちは既にレスだったのだ。
抱かれない寂しさから、枕を濡らしたことは何度もある。
私から誘ったこともあるが、断わられたことがトラウマとなり、夫に触れることさえ怖くなってしまった。
そのくらい、女性から誘うのは勇気がいるものなのだ。
「そろそろ、僕らも子どもが欲しいよね」
ある日そう言ってきたのは、真人の方だった。
レスになってもう5年以上も経つというのに、今思えばよくそんなことが言えたなと思う。
― 作り方、わかってるの…?
そう言いたいのをグッと堪えたのは、私も真人との子どもが欲しかったから。
だけど、これを機に、また定期的に仲良くできるかも?と期待した私がバカだった。
真人が、私を抱くことは至難の業だったのだ。
“夫はもう、私に興奮しない”
それを知ったときの虚しさや、悲しみ、胸をえぐるような悔しさは、言葉にできなかった。
◆
「早苗、おかえり!玲子ちゃん元気だった?」
日曜の15時すぎ。
真人はリビングの65型TVの前で、競馬の中継を見ながらハイボールを飲んでいる。
「うん。今回の彼氏は続いてるね。相手に結婚願望がないみたいで、悩んでいたけど」
私は、莉子を真人に預け、クローゼットへ向かう。そして、ゆったりとしたオーガニックコットンの部屋着に着替えた。
最近は、自分が着たいものを着ることにしている。だって、どんなに可愛いくてセクシーな格好をしても、夫には響かないから。
私が妊娠に成功した方法は、こうだ。
まず、真人には別室で勝手に興奮してもらう。そして、その余韻を残したまま、寝室で待っている私を抱く。
その提案を聞いた時、一瞬私は顔が引きつった。でも、どうしても子どもが欲しかったから了承した。
そうして任務を遂行しているときの真人の顔を、今もはっきりと覚えている。
なぜなら、私の目を一度も見なかったから。
ギュッと目を瞑った彼の頭の中では、きっと他の何かを想像している。その事実に泣きそうになり、思わず顔を背けた。
そのたった1回。それで、莉子がきてくれた。
まだ女として終わりたくない妻・早苗の本音
妻の提案と本音
我が子は本当に死ぬほど可愛い。私の寂しさや孤独感、夫に愛されていないという心の穴は、莉子が埋めてくれたと言っても過言ではない。
ただ、娘への愛が深まるのと反比例して、夫への興味は薄れていった。
あの時の目を思い出すたび、ただの同居人、莉子の父親。そんなふうにしか見られなくなったのだ。
真人は、私の20代の全部を捧げた生涯で一番好きな人。
周囲の友達が苦労して婚活しているなか、迷うことなく彼と結婚できた私は、この上なく幸せだと思っている。
でも……。
― 彼が、最後の男でいいの?もう女として見られなくて、本当に後悔しない?
育児に慣れてきた最近は、そんなふうに自分に問うことが増えた。
「今日、夕飯どうする?外に出かけたから疲れたんじゃない?俺が作ろうか」
「いいの?ありがとう」
チャーハンしか作れないけど、と言いながらキッチンに向かう夫の背中は出会った頃より筋肉がついて、たくましくなっていた。
自粛期間中に筋トレにハマったらしく、真面目にジムにも通っている。でも、その背中に手を回すことも二度とないと思うと、胸が痛くなった。
真人だって、まだ31歳の健康な男性だ。持て余した性欲を、一体どこで解消しているのだろう。
― いっそ、浮気でもしてくれていたらいいのに…。
そしたら、私だって恋愛を外に求めることに罪悪感を抱かなくて済む。
そもそも、夫に女として見られていないのに、浮気はしちゃいけないなんて、生き地獄だ。女を捨てたまま生きろということなのだろうか。
「できたぞ~!」
莉子をお風呂に入れていると、真人の声が聞こえた。
「やっぱり、チャーハンは真人が作ったほうが美味しいね!早く莉子にも食べさせたいな」
中華鍋を使っていないのにパラパラに仕上がっている油多めのチャーハンは、学生時代によく作ってくれた思い出の味だ。
「早苗……?どうしたの。具合でも悪い?」
そう言われ、慌てて目頭を抑えた。知らないうちに涙が頬を伝っていたのだ。
「なんでもない。久しぶりに食べたら本当美味しくて。思い出の味だから」
泣くなんて大袈裟だと笑いながら、真人はチャーハンをスプーンですくった。
今の仕事は、バリスタといってもカフェのアルバイトだ。もし離婚することになったら、莉子を養うために、また会社員に戻らないといけないだろう。
でも、ブランクのある子持ちの30代を、雇ってくれるところなんてあるのだろうか。
総合商社の真人の給与は、1,200万円。
この金額で3人暮らしは、東京では贅沢な暮らしはできない。それでも私がバイトでもやっていける額ではある。
― 離婚なんて、無理だ…。
別れることは、莉子のためにも利口な選択ではない。
完璧な夫というわけではないが、何年も一緒にいるから、空気のように居心地はいいし、情もある。
抱いてくれないということだけで、離婚を考えるなんてバカげているのだろうか。考えれば考えるほど、答えが見つからない。
「ねぇ、莉子を寝かしつけたあと、話したいことがあるんだけど」
「えっ!なに?なんか、怖いんだけど」
眉をしかめた真人に、直球で聞くしかない。これが得策なわけじゃないことはわかっている。もう二度と夫に抱かれないことも覚悟だ。
でももう、私だけが努力して改善できる問題ではないところまできている。
いつまでも女として求められたいと願うことくらい、許して欲しい。それが夫ならベストだが、それが無理なら、やはり他の方法を提案するまでだ。
「私を抱く気がないなら、彼氏作ってもいいよね」そんなふうに言ったら、夫はどんな反応をするだろう。
そもそも、レスられている側の気持ちを、理解してくれるだろうか。
莉子に添い寝しながら一緒に目を閉じると、また涙が頬を伝う。
本音は、浮気なんてしたくない。他の男に取られたくないと焦る夫を想像し、指で涙をぬぐった。
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