夫が亡くなって前妻と初対面。接してみて180度変わった印象

 筆跡アナリストで心理カウンセラーの関由佳です。過去の記事でも何度か触れていましたが、亡き夫は3回結婚歴があり(正確には2回入籍、3回目は事実婚)、私は4番目の妻になります。

 夫が元気な頃は、ときどき子どもに会うときや養育費の相談で前妻たちと連絡を取っていました。が、そもそも前妻という存在は私にとって面白い存在ではありませんでした。外国やどこかの芸能人のように、前妻とその子どもたちと集まってパーティーをするなんて、とても考えられない世界です。

 そのため当時は、子どもがいる限り仕方がない、と割り切っていました。

 ところが数年後、私は3番目の妻と仲良く食事をする機会が訪れるのです……!

◆夫が亡くなる約1か月前に前妻と初対面

 3番目の奥さんとの初対面は、夫が亡くなる約1か月前。がんが発覚してから、「夫に何かあったときに必ず連絡をする」と3番目の奥さんの長子(夫の4人目の子ども)とだけ約束をしていたため、LINEでつながっていました。

 もう意識がはっきりしている時間も少なくなってきたと感じたので、ちゃんと会話ができる間に会ってほしいと思い長子に連絡を取ったところ、奥さんも一緒に病院へ来たのです。

◆想像と第一印象とのギャップ

 この時の私は、前妻に対して、夫の最後に会いに来てくれることに感謝する気持ちが大きかったのですが、やはり少し緊張はしていましたし、拒絶されたらどうしようかという不安がもやもやと胸に広がっていました。

 しかし会って少し話した段階で、その不安は杞憂に終わりました。彼女は重い空気を感じさせない、さっぱりとした方で、とても気さく。どこの馬の骨かわからない私に対して、「大変だったでしょ」「無理しないで」と声をかけてくれた上に「できることないかもしれないけど、何かあったら言ってくださいね」とねぎらってくれたのです。

 それまで、遠くにいる夫の親戚や、夫とのことを反対していた自分の家族には頼れず、一切を一人で背負ってきたため、見守ってくれる親族がいるということは本当に心強く、その言葉はその後の私のメンタルを十分に支えてくれました。

◆前妻との電話で、夫が旅立った日でも笑顔になれた

 それから3番目の奥さんとちゃんと話す機会ができたのは、夫が亡くなった日。亡くなってすぐに電話をしました。

 葬儀の日程などの事務的な話の後、自宅看護の話や亡くなった様子について、またそれまでの治療の経緯についてなどなど、ねぎらっていただきながら会話を交わしているうちに、気づけば1時間も話し込んでいました。波長が合うのか、ポンポンと言葉が出てきて、話が途切れないのです。

 私も夫の亡骸と向き合いながら家で1人きりでいるのは苦しく、そもそも夫を亡くしたという事実を受け止めきれていなかったこともあり、情緒が不安定でした。そんな状態のときに、人と話ができることは大変ありがたかったですし、会話をしながら笑えている自分に安心したのを覚えています。

 このとき、ずっと勝手に抱えていた前妻に対しての印象は、180度変わっていたのです。

◆知らなかった夫の一面を教えてもらう

 それからコロナ禍になり、さらに次子の受験なども重なり、なかなか会えない状況が続いたのですが、夫の葬儀から約1年後、ついに3番目の奥さんと再会することとなりました。

 当然、共通の会話は亡き夫のこと。彼女が夫と知り合ったのは夫が30代のときで、バリバリ働いていた頃です。当時の夫は、仕事はできるけれどハラスメント気質だったらしく、かなり社内で嫌われていたそう。私が知っている夫は全くそんな傾向がなかったので、意外でした。

 ただ、バカ正直で熱くて愛情深くて突っ走るところは変わっておらず、彼女とのなれそめを聞いて、「その性格は昔からなんですね~」とお互いで爆笑。昔の一夫多妻制の頃の妻同士はこんな会話をしていたのでは、と想像してしまいます。

◆過去の話で夫の人生が立体的に

 ほかにも、ケンカした話や浮気未遂を取り押さえたときの話など、私が知っている夫とは違う一面がたくさん知れて、とても刺激的。タイミング的に私が夫の最期を看取ったことになったので、なんだか夫の人生を知った気でいましたが、実は全然知らなかったのだなと改めて実感しました。

 死してなお夫の新しい面がわかり、夫の人生の新しいパズルピースをはめ込めたような、夫の姿が平面から立体になったような不思議な感覚。なんだか一瞬夫が生き返ってきたような気持ちになりました。

◆違う立場でも同志のよう

 さらにポロリと彼女が漏らした言葉で印象的だったのは「いろいろあったけど、死んじゃうと憎しみもなくなるし、綺麗な思い出になってるんだよね」という一言。今、子どもたちが進路や人生に迷うときに「パパなら何て言うかな」と会話をよくするそうです。

 私とは違う立場だけれど、この人も夫の死に対して考えたり思いをはせたりしているのだ、と思うと、なんだか同志のよう。「一人じゃないんだ」と安心感を覚えていました。

 不思議な縁ではありますが、この結びつきは私にまた新しい発見を与えてくれました。これからも、彼女とはなんらかの交流を続けていけたらと思っています。もしかすると、天国の夫は苦虫をつぶしたような顔をしているかもしれませんが(笑)。

―シリーズ「私と夫の1063日」―

<文/関由佳>

【関由佳】

筆跡アナリストで心理カウンセラー、カラーセラピストの資格も持つ。

芸能人の筆跡分析のコラムを執筆し、『村上マヨネーズのツッコませて頂きます!』(関西テレビ)などのテレビ出演も。

夫との死別経験から、現在グリーフ専門士の資格を習得中。

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2021/6/11 15:47

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