最近のドラマが「離婚」をポジティブに描く意外な理由。松たか子“バツ3主人公”のかっこよさ

『大豆田とわ子と3人の元夫』(関西テレビ制作/フジテレビ系、火曜夜9時~)、『リコカツ』(TBS系、金曜夜10時~)など、4月開始の連続ドラマで目立つのが、“離婚”が重要なキーワードになっている作品です。

 大昔はタブーとされ「バツイチ」という呼び方に見られるように、失敗扱いされている「離婚」という決断。しかし、現代のドラマでは、その描き方に変化がみられています。

◆離婚はポジティブに、結婚はネガティブに

 松たか子さん主演の『大豆田とわ子と3人の元夫』(通称『まめ夫』)は、3度結婚し3度離婚している大豆田とわ子と元夫たちのヒューマンコメディ。北川景子さん主演の『リコカツ』は、運命的な出会いで結婚したにもかかわらず早々に離婚を決意した夫婦のストーリーです。

 両者とも、実際の離婚のドロドロとはかけ離れた明るいタッチで描かれているのが印象的。2020年10月から放送していた『恋する母たち』(TBS系)も、不倫を描いていた分シリアスであったものの、最終的にパートナーと別れる決断をした女性たちを前向きに描いていました。

 一方、現在テレビ東京系で放映中の『生きるとか死ぬとか父親とか』(金曜深夜0時12分~)では、自由奔放な父親に悩む母親を見守り続けていた吉田羊さん・松岡茉優さん演じる娘の葛藤や、夫の不倫に気づき苦しみながらも子供のために一緒にい続けることを選択する女性が出てきます。

 いま、離婚はポジティブに結婚はネガティブにと、まるで世間の一般的なイメージとは逆の表現をされているのです。

◆“離婚もの”は、かつての不倫もののように定番化?

 これまでの離婚ドラマと言って思いつくのが、まず2005年放送の『熟年離婚』(テレビ朝日系)。

 渡哲也さん主演で、定年退職を迎えたその日に、長年連れ添った松坂慶子さん演じる妻から離婚を切り出されると言うストーリーです。このドラマは多くの話題を呼び、高視聴率を記録。ドラマタイトル『熟年離婚』というワードがその年の流行語になったほどです。

 また、『まめ夫』の坂元裕二さんが同じく脚本を担当した2013年放送『最高の離婚』(フジテレビ系)もその年の日本民間放送連盟賞など多数の賞を得るほど評価が高く、今でもファンが多い作品です。

 離婚は感情のぶつかり合いや、当人たちの人間性が深く描ける分、ハズレがない題材と言われています。また、さわやかでハッピーな題材よりも、多少不幸なイメージがある方が興味を持ちやすいものです。

 かつては同じような理由で『金曜日の妻たちへ』(TBS系)、『Age,35 恋しくて』(フジテレビ系)などをはじめとする「不倫もの」が流行り、やがて定番となっていた時期もありました。ですが不倫に厳しい風潮の昨今、正しい選択という描き方もできる「離婚もの」が新たな定番ジャンルに加わるのも時間の問題と言えそうです。

◆『おちょやん』『半分、青い。』離婚した朝ドラ主人公たち

 NHK朝の連続テレビ小説でも、近年ヒロインが離婚をするという展開が目立ってきています。

「死んでくれ」という衝撃的なセリフと共に、家族よりも夢を選ぶ夫に別れを告げた『半分、青い。』、逆に家庭事情を顧みず自分の信念を追求しようとしたために夫が去って行った『スカーレット』、そして夫の浮気によって別れを選んだ『おちょやん』……。

 この3作のヒロインはいずれも、離婚で傷つきながらもさらに奮闘し、成功を勝ち取っています。

 このように、国民的ドラマ枠の中でも離婚する女性が増えているということは、その決断がネガティブなものから、自分らしく生きるためのポジティブな選択肢であると認識が変化している風潮の表れともいえます。

 離婚=悲劇・失敗・傷物、というのはもう古い話なのでしょうね。

 トレンディドラマが男女雇用機会均等法によって生き生きとおしゃれに働く女性を映し出したように、選択的夫婦別姓制度が議論されている中で、家庭や配偶者に囚われず自分らしく生きる女性を描いた昨今の離婚ドラマ。

 その乱立はまさに時代を表しているのかもしれません。

<文/小政りょう>

【小政りょう】

映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

2021/6/8 15:46

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