B’zはいかにして偉大なロックバンドであるか? 庄村聡泰が解説する“通ぶる”ための楽曲・歌詞論!

 今年3月に、人気ロックバンド[Alexandros]を勇退したドラマー庄村聡泰が、稀代のハードロックユニット・B’zのサブスク解禁を記念して、その偉大さ、魅力をミュージシャンの立場から解説!

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 日本三大イナバと言えばやはり物置のイナバライトツナのイナバそしてB’zのイナバと相場は決まっており、そして日本三大マツモト言えばヒトシ、マリカ、ダンプ……。はたまたコウシロウ? いやはや引越しセンター? やべえ案外いっぱい居やがるなマツモト偉大だなどうしよう。

 だがしかしである、兎角、殊更、音楽の世界に限定すればの日本三大マツモトと言えば嵐のマツモトはっぴいえんどのマツモトそしてB’zのマツモトと相場は決まっている。異論は認める。

 そんなB’zが待望のサブスク解禁である。大瀧詠一に続く朗報。最近までは一演奏家として、そして今現在はプロデューサー並びに歌詞書きの端くれである筆者(『不楽、足る。』と言う名のグループをやっています。お見知り置きの程)が定義する所のB’zとは、言わば”世界で1番異端で巨大なハードロック”。こちらの由縁の説明と共に、改めてその偉業と名曲の数々を噛み締めてみては如何だろうかと言う試みにございます。

 先立っては筆者による定義について。世界で1番異端で巨大とする由縁、これはある意味J-POPそのものとも似通う部分ではあるのだが、弾きまくり生ギターと打ち込みの共存とハードロックそのものの共存にある。

 代表曲の枚挙に暇もなくではあるが、要するにultra soulとイチブトゼンブのリズム、こちらに耳を傾けて貰えば一聴瞭然の通り前者は打ち込み、それも古くは太陽のKomachi Angel辺りからさして変わらぬディスコ調の四つ打ち、一方の後者は力強い生ドラムとベースにより作られている。

 特に90~00年代のJ-POPには前者の様式によるパターンが多く、代表例としてはあゆの隣のよっちゃんを思い浮かべて貰えば伝わるだろうか。また、後者の様式はそもそもJ-POP的ではなくゴリゴリのハードロックのパターンなのである。

 このスタイルを未だに両立出来ており、極めてハードロッキンなギターと四つ打ちがさも当たり前の様にポップスとして、また世界的に見ればとっくのとうに終わっている(セールスとして)ハードロックをこれまたさも当たり前の様にポップスとして共存、そして評価、売上と言う形で成立させているのである。数十年に渡って。こんなヤツらいるか? 否である。故に異端で巨大。異論は認める。

 その活動を上記の如く偉業足らしめている由縁の一つに筆者が挙げたいのは”口語の持ち込み”。こう称させて頂く事としよう。

 ここまで見事に俗と洒脱を兼ね備えた歌詞が、これまたさも当たり前の様にポップスとして広く長く聴かれている例も、国内に於いてはB’zの他に筆者は知らない。世代に起因する選曲の偏りはどうかお見逃し頂くとして、DEEP KISSで書かれる”わかってる、わかってるって、ハヤかったり、ヘタクソだったり、やたら気がきかなかったり、そりゃ他に男でもできるわ”。

 FIRE BALLで書かれる”尻にしかれっぱなし 座ぶとんのような心と体よ この形勢を逆転したいと からまわりしてびんぼうゆすり”。

 ギリギリchopで書かれる”シマリがないとまたみんなにコソコソ笑われるぞオマエ”。

等々々々々…と、中でもかなり激し目の曲を敢えて選んでみた所の一節が、これである。

 この極めて口語的な軽口をハードロックにぶち込んで行く様式、そしてそれを圧倒的、いや、衝撃的な歌唱力で以て歌われる様式にこそ、ハードロックであるB’zがさも当たり前の様にポップスであり続けられる由縁ではないかと思うのだ。インテリジェンスとユーモラスとペーソス。且つ当意即妙に市井を描写してみせるパンチラインの数々であると言えよう。異論は認めん。そう考えるとB’zって革ジャン、ブーツ、笑顔の無いアー写、ハードロッキンな曲調、と対を成すポップなメロディ、口語的な歌詞、積極的なタイアップ、衣装のホットパンツ、要するに一言で言えばこれ”ギャップ萌え”って事なのかしら。

 そうか、B’zはギャップ萌えなのか、だから凄えんだ。”世界で1番異端で巨大なハードロック”じゃなくて、”世界で1番ギャップに萌えるハードロック”なんだ。何か分かった気がするし、異論は認める。

 と、つらつら書き連ねて参りましたが、当記事は同時にそろそろB’zの正しい発音も覚えてみては如何だろうかと言う試みでもあるので、最後に発音の小咄をば。

 そう、発音。各所で取り沙汰されており最早周知の事実でもあろうし、何なら当人による2012年の”どっちでもいい”と言う発言も出てはおる物の、やはり通ぶるのなら今である。声高に記しておきたいのは正式な(本人並びにスタッフが発音すると言う意味)発音は、”ビール”並びに、”チーズ”、と同音。テストに出るから覚えておこう。

 因みに筆者が敬愛して止まないLUNA SEAも長らく正式な発音が定着せず、こちらは”ジェラシー”と同音である。それでは。

2021/6/7 19:00

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