パチンコ業界事情 「北斗無双」など旧基準機設置延長が招くボッタクリ営業増加とホール倒産ラッシュ

 連休前に発出された第3次緊急事態宣言。「短期間で集中的に感染を抑制する」と当初は連休明けに期限が設けられていたものの、政府関係者以外の全ての国民が予想していた通りに延長が繰り返される結果になった。

 いつ解除されるのか先が全く見通せないなか、パチンコ業界は基本的に休業要請に応じず(※正確には各ホールの判断に一任)営業を続けているのは、昨年同時期の最初の緊急事態宣言下との大きな違い。

 それでも宣言が発出されている状況では、特に感染リスクが高いとされる年配層のファンが減少しており、ホールの経営環境は厳しいままである。

 そのため、コロナ廃業という言葉も珍しくはなく、かつてないペースでホール軒数が減少中である。しかしコロナ禍が直接の廃業の理由になっているホールばかりではなく、あくまできっかけというホールも少なくないだろう。

◆高設定が見抜きやすい台の登場でホール営業はますます苦境に

「自店もそうでしたけど、コロナで廃業したっていえば言葉は悪いですけど、いろいろと丸く収まりますよね。でも実際にはパチスロ5号機の撤去が直接の原因です。6号機が徐々によくなっているとはいえ、玉を出さなければお客さんが打ってくれないという状況は変わっていません。

 メーカー側も稼働をつけるためにこの台は高設定ですよっていう演出が出やすくなっていたりと、お客さん側に出る台が分かりやすくなっています。そんな台をお客さんが打ってくれるのは当たり前ですけど、ホールとしてはそれじゃあ経営できないですよね。だってそれ以外の低設定台、利益を生み出してくれる台が全く動かなくなりますから。

 今年に入ってから導入された6.1号機はベース(※通常時の玉持ち)が低くなって、売上げが上がりやすくなるんじゃないかと期待していたんですけど、やっぱり6号機は6号機でした。低設定はすぐに見切られて、結局動くのは高設定だけ。高設定台を使わなければいいといっても、それじゃあ誰も打ってくれないのが6号機なんですよ。

 会社の方針として他のホールに先んじるべく6号機時代へいち早く移行しようということでしたが、それは完全に失敗だったといわざるを得ません。結局、5号機を多く残しているホールにお客さんが流れちゃいましたから」

 このように語るのは、今年に入って廃業したパチスロ専門店のA店長。パチスロの新規則機、つまり6号機が登場して約3年。メーカー側も行政への陳情など改善を続けているものの、出玉リミッターの搭載に代表される厳しい出玉規制によって相変わらず客側からもホール側からも支持を集めていないままの状況である。

「ホールにとっていいパチスロは、しっかり動いてちゃんと利益を残してくれる機種ですよね。現状の6号機でそれができているのは、残念ながらほとんどありません。お客さんにとっても、仮に低設定でも“事故れば出る”という希望がある5号機なら、ちょっと煽れば動いてくれるんです。その代表といえるのが、昨年末に撤去されるはずだったミリオンゴッド凱旋ですよね」(A店長)

「はずだった」と語るのは、凱旋の撤去はあくまで業界団体としての自主決議だったから。パチスロ5号機、またパチンコCR機など旧規則機は経過措置として2018年2月の規則改正から3年間は設置・営業が認められていたが、昨年5月にはコロナ禍による入れ替え削減などを理由として行政側が1年間延長を決定。

◆旧基準機撤去を巡って足並みが揃わない業界

 その際に業界団体として、高い射幸性が認められたとされる機種については設置を延長しないなどの方針を決議していた。

 しかし一部のホールは「法律で認められている以上は撤去する必要がない」として凱旋などの高射幸性機の設置を継続。その後も沖ドキ!!など複数の機種においてルール破りをするホールが続出するという、業界として足並みが揃わない状態になってしまった。

 ただしルール破りとはいっても、あくまで破っているのは業界団体の自主決議。法的にはなんら問題はないだけに、業界団体として実効性のあるペナルティは科せられていない。

 さらにホール団体の役職者からも業界団体へを公然と批判する文章が業界紙誌へ送付されるなど、足並みが揃わないばかりか乱れまくっているといっても過言ではない状況に陥っている。そしてこの5月には、業界団体が自ら決議したルールを反故にするかのような文章が加盟ホールに通知された。

「パチンコ・パチスロ産業21世紀会(5月20日)決議内容」の一部改定について、という表題で送られた業界団体の文章は、3回目の緊急事態宣言が発令されるなど「今後一層、厳しい営業を強いられることが危惧される」としたうえで、「行政当局に対し、こうした状況を説明し、21世紀会決議の改定について、ご相談申し上げたところ、行政当局のご理解を得ることができました」として旧規則機の設置期限を延長することが記されている。

◆21世紀会決議を見越して廃業を決めたホールも……

「21世紀会決議」とは、業界団体として昨年5月の経過措置延長によって旧規則機を来年1月末まで設置できるようになったところ、「遊技業界一丸となって、計画的な入替を推進する」として今年11月末を撤去期限としたもの。これは射幸性が抑制された新規則機(パチンコのP機、パチスロの5号機)へ、行政が改めて定めた期限よりも先に入れ替えることで業界の健全性をアピールする目的もあったかと推測されるが、今回の一部改正によって1年延長された経過措置に合わせる形、つまり来年1月末までの先送りとなったのである。

「どこのホールも11月末の旧規則機撤去を見据えて動いていたと思うんですよ。だからいち早くその方向で動き、結果として廃業せざるを得なくなったのがこの店だと考えれば、ルールを守るのが馬鹿らしいというのが正直な気持ちです」(A店長)

 そもそも業界団体が一度定めたルールを「厳しい営業が強いられる」からといって改正すること自体に疑問が残る。厳しい営業はコロナ禍以前からであり、その影響で行政が旧規則機の設置期限を1年延長したなら、最初からその通りにしておけばA店のように廃業に追い込まれることもなかっただろう。

 今回の改正について「行政当局のご理解を」得られてとしているが、行政側が1年延長したのだから断る理由はないはず。それでも一旦決めたことを守れない業界だというイメージを与えたことは、今後の行政の動きにも影響を与えかねないだけに、悪手であるといわざるを得ない。

◆設置延長はファンにとってもホールにとってもマイナスか

 A店のように廃業に追い込まれるまでとはいかなくても、昨年の決議内容に従って残しておきたい機種を泣く泣く撤去したホールも少なくない。今回の改正には旧規則機の設置比率を段階的に引き下げていくという項目もあるが、都内の某ホール関係者はこのように語る。

「そんなものは守らないですよ。行政側に報告する必要はありますけど、あくまで報告だけで残していたからってどうなるものでもありませんから。なので自店では設置できるギリギリまで旧規則機を使っていくつもりです」

 この関係者が語る言葉は、現在のホール関係者なら誰もが思うところである。ファンにとっては出玉面で魅力がある旧規則機、特にパチスロ5号機の設置期限が延長されたのは歓迎すべきことであるが、この一貫性のない業界団体の動きによって翻弄されたホール側は、ますます体力を削られていく。結果、出したくても出せないというファン側の不利益にもつながる可能性は高く、手放しで喜んではいられないだろう。

 自由に競争できる環境を整えつつ、業界側のピンチにはしっかりとした方向性を示し足並みを揃えていく。これが業界を成長させることが目的である業界団体の姿であるとしたら、今回のような不公平で迷走しているともいえる施策は、いかがなものかというのが正直な感想だ。

 コロナ禍で疲弊しているところに、延長されたとはいえ旧規則機から新規則機への大々的な入れ替えが待ち受けている業界の危機的な状況、このままでは残念ながらさらに悪化するとしかいえないのが現実である。 <文/キム・ラモーン>

【キム・ラモーン】

25年のキャリアを持つパチンコ攻略ライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞など幅広い分野で活躍する。

2021/6/7 8:29

この記事のみんなのコメント

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  • パチンコ🎰何故⁉するの解らない‼

  • 5号機になってからは完全に止めた😶かても今はムダ金も休みもありません🎉

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