米津玄師、サザンらのモデルがいる曲6選。「うっせぇわ」作者の新曲はM-1王者か
今年の大ヒット「うっせぇわ」。その作詞と作曲を手掛けた、syudouの新曲「爆笑」が、2020年M-1グランプリで優勝したお笑いコンビ・マヂカルラブリーのことを歌っているのではいかと話題を呼んでいます。
https://youtu.be/KQPpw3dzEks
◆M-1での上沼恵美子激怒から3年後の優勝が歌詞に?!
「笑いについての曲です」とsyudouがYou Tubeへの投稿に添えていますが、歌詞は全編マヂカルラブリーへのオマージュではないかとTwitterではさまざまなファンの考察がなされています。
例えば下記があがっています。(山カッコ内は「爆笑」歌詞)
●<1番右の座 笑顔無し><笑みと失笑 西の魔女送るリスペクト><勝ちで実証 最下位経ての真の王者 好みじゃない 話したくない 狂ってもがいた2,3年後>
:2017年度のM-1グランプリで、審査員席右端の上沼恵美子から「好みじゃない」「ごめん、聞かないで」など叱責を受けたうえ最下位。その3年後の2020年「どうしても笑わせたい人がいる男です」と登場し、チャンピオンに輝いた。
●<「これを辞めろだ?そうか分かったぜ死ねってこったな?」実の親さえも泣かせちゃった>
:野田クリスタルが、かつて自身の母からお笑いを諦めるように言われた時に返した言葉とほぼ同じ。
●<そういつかは買い慣らす オーデマピゲ&デモン>
:かつて村上が高級時計「オーデマ・ピゲ」を買いたいと話していた。デモンはM-1で披露したネタ「フレンチ」に登場。
また曲の方でも冒頭にM-1の出囃子(でばやし。舞台に上がる時にかける音楽)が引用されていることや、曲の長さがマヂラブのM-1最終ネタ「吊り革」のネタ分数と同じ3分26秒であることなど、数多くのポイントがあげられています。
◆マヂラブがラジオで歓喜
ネット上では歌詞の考察が飛び交い、当のマヂラブがラジオ「マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0」(ニッポン放送 5月27日放送回)で触れたのです。
番組の開始早々「あれ、絶対に僕らですよね、『爆笑』」と切り出した野田クリスタルに、相方の村上は「いやいや、僕らが言ったら寒いのよ」「みんなが言うことなのよ」などと言いつつも「嬉しい限りですね」と喜びを隠しきれない様子。
野田は、「(タイトルが)『ややウケ』だったら俺らだ。『爆笑』になってくるとちょっと違うか?」と謙虚さを交えたジョークを繰り出しつつ「出囃子にしましょうよ」と終始嬉しそうにしていました。
◆syudou 「10時間足らずで届くとは」
syudouも自身のツイキャスやブログなどで、暗にマヂラブをモチーフにしたことをほのめかし、このアツい楽曲の種明かしをしていました。
ラジオ放送の翌朝28日にインスタグラムのストーリー機能で、野田のペットのハムスター“はむはむ”とみられる背景画像のもと「起きていつも通りランニングしながら聴いてたら 冒頭でいきなり触れて頂いて心臓が口から出るかと思いました」「この上ない光栄です」と投稿。「是非ガンガン使って頂ければ」と出囃子の使用もオッケーの模様。
同日の夜のツイキャスでは、「固有名詞出すと品がないから」「粋な男でありたいから」としつつも「10時間足らずで届くとは」と驚きと感謝を述べ、27日18時という楽曲投稿の投稿日やタイミングでは同日深夜27時放送の彼らのラジオを意識したと告白。
31日更新のブログでは「まさかあんなに早くラジオで取り上げて頂けるとも思っていませんでした」とつづり、4日に投稿のYou Tubeトーク動画では「ある実在の人たちをモチーフに作らせていただいた曲なんですけれども」「皆さんのお察しの通り」とのべ「こみ上げるものがありましたね。あの方々に とてつもなくしんどい時に救われたことがあるので」と本人たちに届いた驚きと感謝を語っていました。
お笑い・音楽、双方のファンの盛り上がりもあってか、「爆笑」はYou Tubeでの動画再生回数が225万回を突破しています。
このように、具体的なモチーフやモデルを持つ歌詞は多いもの。ここからは、いくつか振り返ってみましょう。
◆サザンオールスターズ「栄光の男」 長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督
https://youtu.be/iQwd3CtjjFw
2013年発売のシングル。青山学院大学の学生だった桑田佳祐が、ふと立ち寄った喫茶店のテレビで目にした長嶋監督の引退試合がモチーフになっています。くすぶっていた自身の学生生活と、ブラウン管に映る輝かしい世界のギャップに衝撃を受けたことで、やる気スイッチがオンになったのだそう。
明るく楽しいだけじゃない、どこかほの暗いサザンのルーツがかいま見える一曲です。
◆米津玄師「飛燕」 映画『風の谷のナウシカ』
2017年のアルバム『BOOTLEG』のオープニングトラック。開放感のあるさわやかな曲調が印象に残ります。米津自身が「ROCKIN’ ON JAPAN」(2017年12月号)のインタビューで語ったところによると、曲を書くときに指針としているのがナウシカなのだそう。
「すごく慈愛に満ち溢れた人間だけれども、その裏に混沌とした狂気的な部分も持ってて。」
そんな矛盾を抱えながら、周囲や他者を受け入れていくナウシカに憧れているんだとか。
◆BUMP OF CHICKEN「アルエ」 『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイ
https://youtu.be/H0-XBsKaD1Q
2004年発売のシングル。タイトルは、エヴァの登場人物、綾波レイのローマ字イニシャルをもじったもの。綾波レイにホレてしまったボーカルの藤原基央の思いがつまった一曲です。
歌詞に「嬉しい時 どんな風に笑えばいいか解んない」など、綾波レイがしゃべりそうなフレーズを盛り込むなど、モチーフを超えて一体化してしまったほどの勢いを感じます。
見えないものを見ようとして、エラい曲ができてしまった例でしょうか。
ここまでは、キャラクターや有名人など固有のモチーフがある例を紹介してきました。ここからは、作者自身の実体験を反映した歌詞を紹介していきましょう。
◆米津玄師「LEMON」 祖父の他界
https://youtu.be/SX_ViT4Ra7k
2018年の大ヒット曲。ドラマ「アンナチュラル」(TBS)の主題歌でもおなじみです。
ドラマのプロデューサーから「傷ついた人たちを優しく包み込むような曲」とのオファーを受けた米津。普段から創作にあたり死を意識していたという彼のポリシーと共通するところがあったようです。ところが、楽曲の製作中に米津の祖父が他界。近しい人の死に直面し、彼の中に迷いが生じたため、曲の完成までにはかなりの時間を要したとのこと。
その結果、セールス以上に、時代の精神性を象徴する一曲が生まれました。
◆瑛人「香水」 元恋人
https://youtu.be/9MjAJSoaoSo
2019年に配信リリースされ、“どーるちぇあーんどがっばーなぁー”のフレーズで一世を風靡(ふうび)しました。
恋人と別れて3ヶ月ほど経った時期に作られた曲で、ドルガバの香水は瑛人のアルバイト先のハンバーガーショップの店長がつけていたそう。店長からあずかったその香水をつけたときに、失恋のモヤモヤとともに曲ができたというのですから、何が幸いするかわかりませんね。
余談ですが、MVを見るたびにエクストリームの「More Than Words」を思い出してしまいます。
https://youtu.be/UrIiLvg58SY
◆花*花「さよなら大好きな人」 作者こじまいづみの祖父の他界
https://youtu.be/sUTyaXF-LHs
2000年リリースの大ヒットシングル。先日亡くなった田村正和さん主演のドラマ『オヤジぃ。』(TBS)の主題歌でもありました。
ほとんどの人が失恋ソングと思うかもしれませんが、実は作詞と作曲を手掛けたこじまいづみが 16歳のときに亡くなった祖父のことを歌っているのだそう。具体的な描写や固有名詞を省いたからこそ、多くのリスナーが自由に感情移入できるのかもしれません。
こうしてみると、人生の様々な場面が歌になり得るのだと感じます。コロナ禍を経て、どんな曲が生まれるか楽しみにしましょう。
<文/沢渡風太&女子SPA編集部>