3代目プレマシーは「冴えないミニバン」じゃない。隠れた名車説を検証する

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆今でもマツダ車で最高の乗り味は絶版プレマシー説を確かめてみた!

「SPA!AUTO CLUB」でマツダ車の乗り心地の話題になると、決まって出てくるプレマシー。永福ランプが何度も「プレマシーこそ、マツダ車の乗り心地で頂点だ!」と言うもので、その真相を確かめるべく、近所のカーシェアリングで借りたプレマシーをカーマニア3人で乗り回してみました。それにしても、カーシェアリングのクルマってボロボロですね、涙

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi

池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆キミはマツダのプレマシーを知っているか!?

 今回は、3年前に絶版になったマツダ最後のミニバン・プレマシーにもう一度乗るために、わざわざカーシェアリングに入会して借りてきました!なぜならプレマシーは、見た目は冴えないミニバンだけど、「マツダ史上最良のハンドリングマシン」だったから!

担当K:おおっ!茶色のプレマシー、いいですね!

永福:えっ?走行約10万㎞、内外装小キズだらけだけど……。

流し撮り職人:いや、永福さんに妙に似合ってますよ。

K:似合っているというか、ランボルギーニやBMWに乗ってるより、好感度が高いです!

永福:控え目ってことね。

K:で、走りはどうなんですか?

職人:言うほどいいようにはぜんぜん見えませんけどねえ……。

◆走行約10万kmでこの乗り心地!

 ということで、カーマニア3人で代わる代わる試乗。結論から言うと、全員がプレマシーの素晴らしさを認めざるを得なかった!

K:10万㎞目前のカーシェアリング車とは思えない乗り味でした。新車はどんだけよかったのか!新車で乗ってみたかったなあ……。

永福:でしょ?

職人:しなやかな足ですよね。常にタイヤの接地感が失われないから、安心してコーナーに入れます。このままニュルブルクリンクをアタックしたいくらい(笑)。日本でも、雨の中央道とかを安心して飛ばせると思います。

永福:でしょでしょ? 11年前に初めて乗ったときは、1ミリも期待してなかっただけに、本当に衝撃だった。思わず「何だこれーーーっ!」って叫んだくらい。

◆なぜプレマシーの乗り味が最高なのか

K:これでも新車時よりはヘタってるんですよね?

永福:もちろん!新車のときはもっとダンピングが効いてて、もっとスポーティに走ったよ。乗り心地はフンワリしてるのに、キビキビと意のままに走る。それがプレマシーの走りの奥深さなんだよ!

K:そもそも、何をどうしたらこんな感じになるんですか?

永福:とにかくタイヤの接地性がいい。サスペンションが上下に動いても、タイヤの向きがピシッとしてるから、道路に張り付くように走る。だから疲れないし気持ちイイ。マツダ車がドイツでの評価が高いのは、その点にある!

職人:カーブの途中でデコボコを通過しても、姿勢が全然乱れませんね。

◆新型車もプレマシーに完敗

K:これに比べたら、MAZDA3とかCX-30の乗り心地は、「プレマシーと比べて、まだ!まだ!」っていう永福さんの意見にも納得です。

永福:でしょ? 11年も前に出たミニバンより新型車の走りが悪いなんて、あっちゃいけないよ!

K:どうしてこうなったんですか?

永福:たぶんマツダとしては、もっと高みを目指そうとして、足を固めたんだろう。それでバランスが崩れて、路面の凹凸でガタガタするようになった。でもマツダも反省したのか、去年10月に登場したMX-30はかなり良くなったし、MAZDA3もマイナーチェンジで改善された。それでもまだプレマシーには負けてる!

◆ミニバンの走りを極めた、マツダの空振りに涙……

K:ところで、こんないいクルマ、なんで売れなかったんでしょうね。

永福:そりゃ、ミニバンを買う人は、走りの良さなんか求めないから。

職人:ミニバンで大事なのは、広さとか装備と値段ですからね。

永福:誰も求めてないのに、ミニバンの走りをこんな高みに持ち上げたマツダの空振りに涙が出るよ!

◆中古車は10万円台から

K:MAZDA3がこの乗り味で出てれば、カーマニアはこぞって絶賛したでしょうに。

永福:ホントだよ!MAZDA3のデザインとプレマシーの走りが合体すれば、最高だったんだけど。

K:もし、この先の人生でミニバン買うことがあったら、僕は迷わず、この3代目プレマシーを選びます!

職人:中古車は、10万円台から買えますよ。

永福:不人気ぶりがまた泣かせるね。

◆【結論!】

くたびれたカーシェアリング車でも、プレマシーの走りは凄かった。しかし、そのことに気付いている人はほとんどいない。ミニバンゆえにカーマニアの注目も集めなかった。これぞ日本の隠れ名車の代表格!

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

2021/6/6 8:52

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