日本サッカー五輪代表の18名は? 6月の最終選考前に大予想

 長引くコロナ禍によって東京五輪開催の是非が問われるなか、日本サッカー協会は6月に行われる東京五輪に向けた強化を目的とした国際親善試合に出場するメンバーを発表した。その会見で森保一監督は、「最終選考」であることを宣言。

 そんななか、6月3日に開催予定のA代表とジャマイカ代表との対戦が急遽中止に。代わりに史上初の日本代表同士の試合が行われ、結果は”兄貴分”が貫禄を見せ、3-0という結果となった。

 そして、今後行われる5日と12日の試合によって、今回選ばれた27名から本大会に出場する18名が選出されることに。タイトな日程の中、選手にとっては最後のアピールの場となる。

◆なぜ23歳以下の選手なのか

 五輪の男子サッカー競技には、23歳以下の選手でチームを構成しなければならないという独特のレギレーションがある。これはワールドカップとの差別化を図るため、1992年バルセロナ大会より設定された。しかし、無名の若い選手が多い試合は集客力がなかったため、1996年アトランタ大会からは24歳以上の選手を最大3名加えられるオーバーエイジ枠を設けることになった。

 また、ワールドカップでは最大23名の選手を登録できるが五輪は18名と登録メンバーが5名も少なく、監督はその選考に悩まされることになる。

 新型コロナウイルスのパンデミックによって1年延期となった東京五輪に限り24歳以下というレギレーションに変更され、これまで強化してきたチームから大きな変化がないように考慮された。U-24日本代表はこれまで多くの選手を招集して強化に励んできたが、今回は3名のオーバーエイジ枠も選ばれて最終選考および最終調整という意味合いが色濃くなっている。

 今回選ばれた27名のメンバーは以下のとおりで、よほどのことがない限りこのなかから東京五輪に出場する18名が選ばれることになる。

GK

大迫敬介(サンフレッチェ広島)

沖悠哉(鹿島アントラーズ)

谷晃生(湘南ベルマーレ)

鈴木彩艶(浦和レッズ)

DF

吉田麻也(サンプドリア[ITA])※OG

酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ[FRA]※発表当時)※OG

町田浩樹(鹿島アントラーズ)

旗手怜央(川崎フロンターレ)

古賀太陽(柏レイソル)

冨安健洋(ボローニャFC[ITA])

橋岡大樹(シントトロイデンVV[BEL])

菅原由勢(AZアルクマール[NED])

MF

遠藤航(VfBシュツットガルト[GER])※OG

板倉滉(FCフローニンゲン[NED])

中山雄太(PECズヴォレ[NED])

相馬勇紀(名古屋グランパス)

三好康児(ロイヤル・アントワープFC[BEL])

三笘薫(川崎フロンターレ)

遠藤渓太(1.FCウニオン・ベルリン[GER])

堂安律(アルミニア・ビーレフェルト[GER])

食野亮太郎(リオ・アヴェFC[POR])

田中碧(川崎フロンターレ)

久保建英(ヘタフェCF[ESP])

FW

林大地(サガン鳥栖)

前田大然(横浜F・マリノス)

上田綺世(鹿島アントラーズ)

田川亨介(FC東京)

※OG=オーバーエイジ枠

◆オーバーエイジの3枠は確定か

 この27名が18名の枠を争いしのぎを削ることになるが、オーバーエイジ枠の3選手は本大会のメンバー入りが確定と森保監督が明言している。実質的には、24名が15名の枠を争うことになる。さらに、ポジションごとに詳しく見ていくと誰と誰が枠を争っているのかがハッキリし、6月の親善試合で注目すべき選手が浮き彫りとなってくる。

 GKは前例を踏まえると2名の選手が選ばれることになる。このチームでの実績を考慮すると、大迫敬介は当確と言えるだろう。今季のJリーグでも申し分ない成績を残しており、森保監督のファーストチョイスとなる見方が強い。残りの1枠は、沖悠哉と谷晃生で争われることになる。鈴木彩艶に関しては、他と比べるとJリーグでの実績も乏しいうえ、2002年生まれで次大会のパリ五輪を目指せる世代の選手である。従って、今回は将来を見据えた強化という意味合いで招集されていることだろう。よって沖と谷のどちらかが本大会のメンバーとなり、もう一人が予備登録メンバーに回ることになる。Jリーグでの調子から見ると、現段階では谷の優勢と言えるが、2試合の結果では評価が逆転する可能性は十分にあり得る。

 登録メンバーが少ない五輪におけるフィールドプレーヤーに関しては、複数のポジションをこなせる選手が優遇される。あるいは、突出した個の力を持っている選手が選出されることになるだろう。

 オーバーエイジ枠で出場する選手は、その突出した個の力を期待された選手と言っても過言ではない。DFでは、センターバックの吉田麻也と右サイドバックの酒井宏樹になるが、加えて既にA代表でもレギュラーとして活躍するセンターバックの冨安健洋も頭抜けた個の力を持っており当確選手になる。

◆DFとMFはどうなる?

 このチームは4バックと3バックの可変型として強化してきており、今回の最終選考メンバーもどちらにでも対応できるメンバーがそろっている。そのうえで遂行できる役割が重なる選手が選出されており、その選手がふるいにかけられることになる。

 ひとつは、左サイドバックとセンターバックをこなせる町田浩樹と古賀太陽が当面のライバルとなる。同様に左サイドバックの枠を争う選手として旗手怜央も挙げられるが、旗手はそもそも攻撃的な選手で枠を争うライバルはMFで登録されている相馬勇紀になる。

 もうひとつは、右サイドバックとセンターバックの役割を担う橋岡大樹と菅原由勢になる。しかし、この枠では酒井宏樹が確定している。また冨安健洋も同じ役割を担え、橋岡と菅原にとっては厳しい戦いとなる。そういったなかで、菅原は酒井、冨安、橋岡よりもより攻撃的にシフトチェンジできる。それを踏まえると、菅原が優勢で橋岡が落選する可能性が高い。

 このチームのMFは、中盤の底に位置するボランチの枠と攻撃的な役割を担う枠に分けられる。ボランチの1枠はオーバーエイジの遠藤航で決定しており、もうひとつのレギュラーポジションと補欠枠を板倉滉、中山雄太、田中碧の3人で争うことになる。板倉はボランチ以外にもセンターバックを担える選手だ。

 中山も同様だが加えてサイドバックの経験もある。一方の田中はひとつ前の攻撃的なMFを得意としており、他に重なる選手もいないことから当落レースをリードしている。おそらく、もう一枠を板倉と中山で争うことになるが、ここで気になる情報がある。このチームではこれまで中山がキャプテンを務めてきており不動のように思われたが、今回のメンバー発表会見のなかで森保監督はA代表でもキャプテンを務める吉田麻也に変更することを示唆した。そのことから中山が落選濃厚なのではないかと予想される。

◆A代表組の久保建英と堂安律は当確

 続いて、このチームのストロングポイントと言える攻撃的なMFのポジションだが、A代表でも定着している久保建英と堂安律は当確だろう。この2人は共に左利きで右サイドやトップ下を得意とする。この2人と重なるのが、三好康児だ。この年代で常に中心的存在だった三好だが、現段階のメンバー争いでは遅れをとっていて落選も十分にあり得る。しかし、2017年に開催されたU-20ワールドカップでは3人の共演もあったので、ポジションが重なることを承知のうえでメンバーに残す可能性も考えられる。

 また、この3人とはタイプが違うがドイツに渡ってプレーの幅を広げた遠藤渓太もこのポジションを争うことになる。左サイドを主軸とする攻撃的なMFは相馬勇紀、三笘薫、食野亮太郎で争われることになる。3人はそれぞれプレースタイルが異なり、最終的にはチーム戦術などを踏まえた監督の好みによる選出となりそうだ。

 このチームでの実績で言えば相馬、Jリーグでの実績では三苫、海外選手との経験では食野といった具合で横並びである。他の選手とのコンビネーションという意味では、このチームで実績のある相馬がやや有利のように思えるが、川崎フロンターレ出身の選手が多いことを踏まえると、三苫もコンビネーションを期待されている。いずれにしても、この2試合の結果で選考内容が最も左右される枠のひとつとなるだろう。

◆FW枠は2試合の出来次第

 FWの枠を争うレースも4人の横並びと言える。このチーム内の実績では田川亨介が抜け出ているが、今季のJリーグでは3得点(6月4日現在)と4人のなかで最も得点が少ない。逆に、Jリーグで最も得点しているのが9得点の前田大然で調子の良さをうかがわせている。また、それぞれに得意なプレーは異なり右サイドの攻撃的なMF枠と同様に最終的には監督の好みによる選出となる。このなかから少なくとも1人、多くて2人が落選することになり、2試合の出来が選出に大きく関わってくる枠となる。

 最も熾烈なメンバー争いを繰り広げるは、攻撃的なMFの枠だろう。右と左に分けて解説したが、いずれの選手も左右関係なくプレーできるポテンシャルを持っている。4バック主体であれば3名、3バック主体であれば2名がレギュラーとなるわけだが、個人の見解としては得点力のある選手を選出してほしい。

 3月に行われたアルゼンチン戦では左サイドを崩してクロスボールを入れる場面が多く見られたが、ゴール前の人数が少なくシュートの可能性を減らしていたように見受けられた。久保にしろ、三好にしろ、食野にしろFWと共にゴール前に飛び込むようなタイプではなく、FWが引っ張った後ろのスペースに位置してミドルシュートを狙うタイプ。それでは相手の恐怖も半減してしまう。狭いスペースを見つけてゴール前に飛び込み、積極的にシュートを狙える選手を選ばなければ、僅差の試合が続く五輪は勝ち抜けないだろう。

文/川原宏樹

【川原宏樹】

スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる

2021/6/5 15:52

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