延命のGT-R、アリア登場で再注目のリーフ…侮れない日産の底力

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆世間ではボロクソ言われておりますが……

 やっちゃえ!日産!すごいぜ!日産!と言えば言うほど、空回りしてしまった感じもありますが、カーマニア的には、あまり売れなくなったGT-Rの改良をいまだに続けている日産はエラいのひと言。

 EVだって新型をもうすぐ発売するし、テスラ・モデル3にぶち抜かれたリーフだって地味に進化中。世間の評価は無視して、カーマニアとして日産を評価してみました!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi

◆GT-Rに延命の余地あり?

 去る4月14日、GT-R NISMOの’22年モデルが先行公開された。発売は10月末の予定だという。

 それを聞いて私は「あれ?」と思った。なぜならGT-Rは、騒音規制の強化に対応できないため、’22年でいったん生産を終了するはず、といわれていたからだ。

 もちろん、これがラストという意味かもしれない。しかしひょっとして、GT-Rはもうしばらく生き延びるのではないか?

 というのも、騒音規制が強化されるのはヨーロッパの話で、日本への規制の導入は未定だからだ。「我が国においては、現時点では技術的見通しを立てることが難しいことから、国連の検討状況を踏まえながら、規制値の適用時期について検討する」(環境省自動車単体騒音専門委員会)とされていて、決定はしていない。

 北米にいたっては、強化自体が実施されない。つまり、GT-Rはヨーロッパでは売れなくなっても、日米では売り続けることが可能では?

◆’22年モデルが登場!生き残っているだけでなんだかうれしい!

 日産によると、昨年のGT-Rの地域別販売状況はこうなっている。

日本/675台

北米/349台

欧州/293台

 そのほかは、オセアニア24台、アジア22台、中東21台など微々たるもので、日米だけで7割以上を占めている。COや騒音規制に熱心な欧州から撤退すれば、まだまだGT-Rはイケる気がする!

◆GT-Rは日本の誇りだ!

 日産GT-Rは、誕生から14年を経過し、グローバルでも年間1000台強しか売れなくなっている。フェラーリが年間1万台以上売れているのに比べると、微々たる数字だ。

 しかしGT-Rは、現在も日本を代表するスーパースポーツカー。毎年のようにバージョンアップを続けているため、いまだに世界第一級の実力を保っている。ホンダNSXは全世界で鳴かず飛ばず状態だし、トヨタにもGT-Rに対抗できるスポーツカーはない。GT-Rは日本の誇りなのだ! もうちょっと生き永らえてくれい!

◆SUV型のEVが登場!

 しかしこうして見ると、日産というメーカーは「ダメダメだ」、「もう倒産寸前だ」とボロクソ言われているわりには、意外と頑張っているし、その底力は侮れない。

 たしかにEVの分野では、せっかくリーフで世界をリードしたのに、あっという間にテスラにブチ抜かれ、現在はVWやルノー、中国メーカーにもゴボウ抜きにされ、今や周回遅れだ。日本の家電や半導体業界ソックリの惨状である。

 しかし、この状況を打破するため、日産は6月、新型EV「アリア」を発売する。その性能はというと、加速や航続距離、急速充電速度など、おおむね「テスラ・モデル3」とイーブンになる。はやりのSUVタイプで、デザインも悪くない。

◆デザイン、スペックも十分だが……

 ただし価格も上昇する。日本では、補助金を含めて最安400万円台に納まるらしいが、車両価格は500万円オーバー。テスラ・モデル3の最安モデルが434万円なので、それよりかなり高い。

 今さらテスラより高いEVを売り出して、どれくらい売れるんだろうか? 日本ではともかく、海外ではあんまり通用しないのでは……。

◆EVと言えば今も日産!

 こうなると逆に注目なのが、もはや時代遅れ扱いのリーフである。

 今回、久しぶりにリーフに乗ったところ、そのホンワカした乗り味に癒されました。最新の高性能EVにはない、この親しみやすくまろやかな味わい。そして332万6400円からという低価格。リーフ、まだ意外とイケてるんじゃ?

 しかもリーフなら、中古車が山ほど流通していて、現行モデルでも150万円くらいから買える。初代なら20万円台から買える(笑)。少なくとも中国で大ヒット中の45万円EV「宏光MINI EV」よりは、中古リーフのほうが断然イイんじゃないか? 日産は侮れない! まだまだイケる!って言われてもうれしくないでしょうけど、陰ながら応援してます。日本人ですから!

◆【結論!】

 思えばニッポンには、GT-Rとリーフに取って代われるスポーツカーやEVが、いまだに存在しない。日産はこの両分野で、現在も日本のリーダーなのだ! 

 なんだか訳もなく涙が出てくるじゃないですか。ウオ~ン!

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

2021/5/30 8:53

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