ドラクエ、FFの陰で天下を取れなかったファミコンRPGたち

―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]―

◆ドラクエが35周年

 この5月27日に『ドラゴンクエスト』シリーズが35周年を迎えました。1986年にファミコンで1作目が発売されてから、もうそんなに経つんですね。

 ファミコン時代から続いているRPGも『ドラクエ』『FF』『女神転生』『メタルマックス』くらいになってしまいました。今回のコラムは、ファミコン期のコマンド式RPGの良作・人気作を振り返っていきたいと思います。もし世界線がわずかにずれていたら、これらのタイトルが国民的RPGになっていたかもしれません。

◆『闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光』

1987年6月/データイースト

『闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光』は、ギリシア神話の英雄ヘラクレスのエピソードをモチーフにしたRPG。地獄の魔王ハデスにさらわれた美の女神ヴィーナスを救うため、ヘラクレスが旅立ちます。

 基本的には正統派のRPGですが、当時「ヘンなゲームならまかせとけ!」というキャッチコピーで鳴らしたデータイーストらしく、突っ込みどころもちらほら。

 鍛冶屋のヘパイトスを町で雇うと道具扱いになって売り飛ばせたり、美女の中ボスに「にゃんにゃんしませんか?」と誘惑されたり……。

 ナンバリングは『ヘラクレスの栄光4 神々からの贈り物』(1994年/SFC)まで続き、なかでも『ヘラクレスの栄光3 神々の沈黙』(1992年/SFC)は感動的な名シナリオとして知られています(シナリオ担当はのちに『ファイナルファンタジー7』も手がけた野島一成さん)。

◆『ミネルバトンサーガ ラゴンの復活』

1987年10月/タイトー

『ミネルバトンサーガ ラゴンの復活』は隠れた名作と評価されるファンタジーRPG。主人公は暗黒神の子ラゴンによって滅ぼされた王家で唯一生き残った王子。光と闇の神が争う重厚な世界観です。シナリオ担当はライトノベル『自航惑星ガデュリン』シリーズで知られる作家・羅門祐人さん。羅門さんが関わった小説やゲームと共通する壮大な設定となっています。

 コマンド選択と見下ろし型2Dアクションが融合したバトルも独自色あり。戦闘ではボスから逃げられるのも親切でした。直接の続編としては『シルヴァ・サーガ』(1992年/ファミコン)、『シルヴァ・サーガ2』(1993年/SFC)がリリースされています。

◆『桃太郎伝説』

1987年10月/ハドソン

 昔話の「桃太郎」をパロディ化したハドソン初のRPG。監督は当時「週刊少年ジャンプ」の読者投稿コーナー「ジャンプ放送局」でおなじみだったさくまあきらさん。いろいろな昔話が混ざったギャグ満載のにぎやかな内容で、ミリオンセラーを記録しました。

「びんぼうがみ」は敵として初代『桃太郎伝説』から登場。「きんぎんパールプレゼントのオニ」「あかおにホーマー」なんて敵もいました。ちなみに「スリのぎんじ」もこのときからイベントキャラとして登場しています。

『桃太郎伝説』自体は、『2』(1990年/PCエンジン)や『新桃太郎伝説』(1993年/SFC)などが発売されていますが、今ではスピンオフの『桃太郎電鉄』(1988年/ファミコン)のほうが国民的ボードゲームに発展していますね。

◆『MOTHER』

1989年7月/任天堂

『MOTHER』は、コピーライターでのちに徳川埋蔵金発掘でも人気者となる糸井重里さんがデザイン・シナリオを手がけたRPG。現代アメリカを舞台にしたポップな世界観とどこか哲学的なセリフ回し、そして心を打つ音楽。『ドラクエ』的RPGが増えるなか、唯一無二の存在感がありました。

 シリーズは『MOTHER3』(2006年/GBA)で完結しましたが、いまだに新たなグッズが発売されるなど国内外を問わず根強い人気があります。糸井さんは「『MOTHER4』はありえない」と明言していますが、なんらかの形で次代につながってほしいなあと。

◆『サンサーラ・ナーガ』

1990年3月/ビクター音楽産業

『サンサーラ・ナーガ』は、『機動警察パトレイバー』の監督・押井守さんが手がけたRPG。押井さんは『ウィザードリィ』などゲーム好きでも知られています。キャラクターデザインは『しあわせのかたち』のマンガ家・桜玉吉さん。

 一人前の竜使いを目指す主人公となって、倒した怪物たちを幼い竜に食べさせて育成していきます。自分ではなく相棒の竜が強くなるRPGは目新しく、最後に衝撃の展開を迎えるシナリオも奥深いものがありました。シリーズは『サンサーラ・ナーガ2』(1994年/SFC)で止まっています。

 みなさんの心に残っているコマンド式RPGは何ですか?

<文/卯月 鮎>

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【卯月鮎】

ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も

2021/5/30 8:52

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