「逃げるようにハーバード」女性経営者が放った桁違いマウンティングの衝撃

 マウンティング──それはビジネスでもプライベートでも有効に活用すれば、自身の生活の幸福度を格段に高めてくれる古来から常に存在し続けてきた必須のコミュニケーションの一種。マウンティングポリス連載の第9回では、マウントを取る気は一切ないのに“結果的に”マウンティングになってしまっている「桁違いマウント」事例について紹介していきます。

◆実業家・南場智子氏「逃げるようにハーバードに留学」

「マウンティングを制する者は人生を制する」という考え方のもと、我が国においてもマウンティングリテラシーの重要性が真剣に議論され始めています。

 一方で、些末な「マウント争い」に明け暮れる人々の数も大幅に増加しており、深刻な社会問題となりつつある。そんな中、今、私たちが心に刻むべき究極のマウンティング事例があります。

 今回ご紹介させていただくのは、DeNA・南場智子会長のケースです。IT分野にとどまらず、今や日本を代表する経営者の一人として称されることも多い南場氏ですが、NIKKEI STYLE「トップ女性起業家の後悔 自分の尺度で生きるの遅れた」のインタビュー中で、「大学卒業後にマッキンゼーに就職したのは自分で決めましたか」という質問に対して次のような印象的な回答を述べています。

「就職は父に決められたわけではないのですが、自分の尺度で決めたわけでもありませんでした。マッキンゼーは当時ものすごく人気があって、みんなこぞって受けているから自分も受けてみようかなという程度。コンサルタントって何なのかもまったくわからないまま、就職を決めてしまいました。入社してからコンサルタントの仕事の厳しさを知りました。あんまりつらくて、逃げるようにハーバードに留学したほどでした」

◆無自覚かつ規格外な「桁違いマウント」

 この回答で最も注目すべきは、「マッキンゼーがつらくて、逃げるようにハーバードに留学」という箇所です。

 世界最高峰のコンサルティングファームとして知られるマッキンゼーで活躍していたという事実だけでも十分にスゴイのですが、それに加えて、マッキンゼーから“逃げ出した”先が世界屈指の名門・ハーバード大学とは……あまりにも無自覚かつ規格外な「桁違いマウント」といっていいのではないかと思います。

 もちろん、南場氏本人にはマウントを取る気は一切ないのでしょうが、実力が桁違いすぎて一般人から見れば結果的にマウンティングになってしまっているという意味では、非の打ちどころのない稀有な事例と捉えることもできるでしょう。

◆マウントポジションを見つけることの重要性

 また、本記事で個人的に印象に残った箇所がもう一つあります。それは南場氏が就活生に対して、自分だけのマウントポジションを見つけることの重要性について力説している部分です。

「20歳前後というのは、世の中のすねかじりから社会の一員に変わっていくタイミングです。就活は、初めて偏差値がない、大きな意思決定ですよ。中高大と偏差値という尺度の中で自分の手が届く一番いいところを選んできたと思うけれど、それはすべて他人の尺度。他人の尺度で選択している限り、あなたはあなたの人生を生きているとはいえません。職業選択は初めて、他人の尺度から解放されるチャンスです。絶対に『親が喜ぶ』とか『友達にドヤ顔できる』という尺度で就職を決めないでほしい」

 6月には女性初の経団連副会長に任命されることが内定している南場氏ですが、自らを「不格好」と称した書籍『不格好経営』は累計10万部を超えるロングセラーとなっています。

◆「桁違いマウント」を実現して「マウントフルネス」に到達しよう

 最近、『何者』かになろうとしてSNSのフォロワー数をむやみやたらに増やしたり、目先の「いいね」を掻き集めて自己顕示欲を満たそうとする人が年々増えていると聞きます。ただ、SNS上の影響力だけを必要以上に高めたところで、結局は『何者』にもなれない残念な人生が待っている。そんな可能性も考えられます。

 短期的なマウントに溺れると中長期的なマウントが取れなくなる──凡なる我々は今こそ「南場流マウント」からビジネスパーソンとしてのあり方を体得し、「マウントフルネス」の実現を目指すべきなのです。「1億総マウント時代」において、その重要性はますます高まっていくことでしょう。

【マウンティングポリス】

「人間のあらゆる行動はマウンティング欲求によって支配されている」「マウンティングを制する者は人生を制する」を信条に、世の中に存在する様々なマウンティング事例を収集・分析し、情報発信を行う。ツイッターアカウント@mountingpolice

2021/5/29 8:54

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