『恋ぷに』惨敗『特捜9』圧勝、春ドラ“テレ朝しか勝たん”の方程式

 現在、放送中の春ドラマがそれぞれ後半戦に入っているが、放送前に話題になっていたドラマの多くが平均世帯視聴率で苦戦している。その一方で、安定した強さを発揮しているドラマには、ある傾向があることが見えてきた。

 折り返し点の第5話の平均世帯視聴率で比べてみると(すでに第15話まで放送しているNHKの大河ドラマ『青天を衝け』は除く)、第1位の『ドラゴン桜2』(TBS系)が13.8%、第2位の『特捜9 season4』(テレビ朝日系)が12.9%。

 第3位の『イチケイのカラス』(フジテレビ系)が12.3%、第4位の『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)が11.8%と2ケタ台をキープ。続く、第5位の『桜の塔』(テレビ朝日系)が9.9%と大台目前で健闘している(ビデオリサーチ調べ/関東地区)。

 放送前、本サイトが10代~50代の女性300人に行った、“一番楽しみな春ドラマ”のアンケートを参照すると、第1位『恋はDeepに』(日本テレビ系)、第2位『ドラゴン桜2』(TBS系)、第3位『レンアイ漫画家』(フジテレビ系)で、ラブコメが優勢だった。

■話題のドラマはどれも苦戦

 そのほか、『ネメシス』(日本テレビ系)や『着飾る恋には理由があって』(TBS系)などが票を伸ばし、斬新な設定やクセの強いキャストの『コントが始まる』(日本テレビ系)や『大豆田とわ子と三人の元夫』(TBS系)も話題になっていた。

 しかし、『ドラゴン桜2』以外はすべて1ケタ台の視聴率で、期待値の高さに反して苦戦。王道ラブコメとして期待されていた『恋はDeepに』は、2ケタに届いたのは初回だけで、『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)のようなヒットにはなっていない。

 そんな中、安定した結果を残しているドラマの共通点を探っていくと、2つのポイントが見えてきた。それは『特捜9』や『警視庁・捜査一課長』シリーズ、『桜の塔』など“刑事モノ”であること。再放送でも『相棒』シリーズが健闘している、テレビ朝日系ドラマの得意ジャンルだ。

 もうひとつが、最終回まで伏線の回収で引っ張っていくタイプではなく、毎週、事件や問題が解決してスッキリできる“1話完結モノ”であること。これも上記のテレビ朝日系ドラマの得意パターンで、今期放送分ではないが『ドクターX~外科医・大門未知子~』も強い。

■クセの強いドラマはウケない?

 また、系列局は違うが刑事裁判官が主人公の『イチケイのカラス』も、テレビ朝日系の2つの枠型にはまっている。こうなると、春ドラマのヒットの法則は、冒険的でクセの強いドラマではなく、安定したテレビ朝日系ドラマの様式美なのかもしれない。

 しかし、この法則も弊害はある。様式美を持つドラマばかりになって冒険的なドラマが深夜枠に移動し、才能あるクリエイターや俳優が、コアなファンにしか認知されない知る人ぞ知る存在になってしまう可能性があるのだ。

 そんな中、ドラマファンが注目しているのが、テレビ東京だ。力を入れ始めている23時枠のドラマは、斬新なミステリー『私の夫は冷凍庫に眠っている』や、女性版“孤独のグルメ”の『ソロ活女子のススメ』、大人のラブコメ『理想のオトコ』、中村倫也(34)のギャップ萌えが楽しめる『珈琲いかがでしょう』など、バラエティ豊かな内容で充実している。

 テレ朝一強の裏で、実力を蓄積しつつあるテレビ東京。これから、地上波ドラマがどう変わっていくのか、注目したい。(ドラマライター/ヤマカワ)

2021/5/28 9:30

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