熊田曜子の夫DVで逮捕。結婚前の「ヤバい予感」は悪い形で当たるのか

<亀山早苗の恋愛時評>

 次々と報道される有名人の結婚離婚。その背景にある心理や世相とは? 夫婦関係を長年取材し『夫の不倫がどうしても許せない女たち』(朝日新聞出版)など著書多数の亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)

◆熊田曜子の夫、妻への暴行容疑で逮捕

 タレントの熊田曜子さん(39歳)の夫が5月18日、妻への暴行容疑で逮捕された。深夜に口論となって、熊田さんは顔を平手打ちされたり体を蹴られたりしたという。

 1年間の交際を経て妊娠を機に結婚して9年、3人の娘がいるが、彼女はSNSやテレビ等でたびたび「夫は変わっている」と笑いに交えて語っていた。

 彼女の作った夕飯を食べず、「今朝もまたこれを処理する。もう100回以上」と冷めた料理に箸でバッテン印をつけた写真をアップ。それでいてゴミ箱にはカップラーメンの残骸があったと嘆く。家にいない、会話がないとも打ち明けていた。

 夫は現在、会社経営者なのだが、以前は丸の内に勤めていた。いつ退職して起業したのか、妻である彼女は知らない。

 あげく、姑が彼女の実母に電話をかけて1時間、嫁へのダメ出しをしたこともある、とインスタのストーリーに投稿。そのことで夫が自身の母親に抗議した形跡はなさそうだ。夫は自分の母親寄りの態度を示していたのではないだろうか。

 一方で5月13日の今年の誕生日には、夫からメッセージつきの花束が送られてきたことを明かし、そのメッセージに泣いたことも書き綴っている。夫との距離をなんとか縮めたい、夫婦の関係を修復したいと彼女は思っていたようだ。暴行沙汰が起こったのはその5日後である。

◆夫と姑はグラビアに反対?

 彼女の言い分を聞いていると、どうしてそんな男性と結婚して3人も子どもを産んだのかと思う向きもあるだろう。誕生日の花束にしても、夫が花束を抱えて帰ってきたわけではない。配送されてきたものだ。夫が自ら発注したのか、秘書や部下に頼んだのかわからない。

 妻を泣かせた「知り合った当初に言われたうれしい言葉が書いてあった」メッセージについては、夫の誠意が見られるが、はたして真意はどこにあるのか。「離婚したくない」ということなのか、「今も愛している」と伝えたかったのか、あるいは単純に誕生日だから喜ばせようとしただけなのか。

 夫婦のことは夫婦にしかわからないから何も断定できないが、夫も姑も彼女がグラビアの仕事を続けていることには反対だったらしい。ただ、彼女はグラビアが大好きだったし、誇りをもって仕事を続けてきた。出産後もあれだけの体型を維持してきたのがその証拠だろう。家事や育児にも手抜かりなく、凝った弁当を作ったりもしていたようだ。

 生き馬の目を抜くような芸能界で活躍しつづけるには、相当の努力と気の強さが必要なはず。お気楽な仕事ではないのだ。それだけに孤独感もあっただろう。夫はそれをまったく理解してくれないどころか、彼女を妻として認めてくれさえしなかったと彼女が思っても不思議はない。

「妻はこうあるべき」と押しつける夫と姑。子育てや家事を完璧にやっているのだから好きな仕事を続ける、と努力し続ける妻。実はいずれも「従来の夫婦像」から抜け出してはいないのだが、それでも「がんばりすぎる完璧な妻」が、夫にとってはうっとうしかったのかもしれない。

 夫がもっと家事育児に関わっていれば、妻の気持ちに寄り添えたのだろうけれど、家庭には不向きな男性だったのだろうか。

 熊田さんは、警察に出した被害届を現在までに取り下げていない。

◆「なんだかヤバい」男と結婚に突き進んで

 1年つきあって妊娠を機に結婚した熊田さんだが、結婚前に「この人、いい夫になれないのではないか」という危惧はなかったのだろうか。

 似たような経験をしたユキさん(42歳=仮名)は、「結婚したあとで、やっぱりと絶望感を覚えました」と言う。

 彼女が結婚したのは29歳のとき。ふたりとも自宅住まいだったので、外でデートしてときどきホテルに行くようなつきあいだった。彼を長い時間、ゆっくり観察する機会はあまり多くなかった。

「それでも結婚前に沖縄に3日間、旅したことがあったんです。どこを観光するかで意見が割れて、『じゃあ、お互いに行きたいところにいってあとで報告会をしようよ』と私が言ったら、彼が朝食をとっていたテーブルをバンッと叩いて去ってしまった。

 どうしてそれほど怒るのか私にはわかりませんでした。せっかく来たのだから、それぞれが興味のあるところへ行けばいい。その日はメッセージを送ってもまったく返ってこない。私は自分の行きたいところへ行って、夕飯もひとりで居酒屋へ。そこで知り合った人たちと盛り上がったので、彼も呼ぼうと電話したのですが、やはり出ない。結局、深夜までひとりで楽しんじゃいました」

 ホテルの部屋に戻ると、彼はすでに寝ていた。翌朝、前日の話をすると、彼は一応、相づちを打ちながら聞いてはくれたが、ずっと苦い顔をしていたことを、ユキさんは結婚してから思い出したそうだ。

「自分の意見に従わず、ましてひとりで勝手に楽しんでいたことが、彼には本当に腹立たしかったんだと思います。結婚前はなんとかそこで怒りを爆発させずに自制したんでしょうね。あのとき、もっと彼の心の奥まで入り込んでいれば、この人と結婚したら危険だと思えたかもしれないけど」

◆つわりで苦しむ妻に「甘えてる」

 当時は彼女も「結婚したい」思いが強かった。彼が短気だと薄々わかってはいたが、爆発したところまでは見たことがなかったので、人間、みんな短所はあると思って結婚へと踏み切ったのだ。

 ところが結婚して半年後、彼女の妊娠がわかったころから彼は自分を抑制しなくなった。妊婦となった彼女が「弱い立場」になったから、本来のわがままを発揮するようになったのかもしれない。

「つわりで苦しむ私に、妊娠は病気じゃないっておふくろが言ってただの、甘えてるだの、今思い出してもはらわたが煮えくり返るような言葉を浴びせてきました。どんなにつらくても私、仕事は続けていたし、夕食も自分が食べられなくても夫の分は作っていたんですよ」

◆結婚前の黄色信号は絶対に赤信号に変わる

 我慢していれば平和な家庭生活が待っているかもしれないと一時期は思った。ところがある日、気分が悪かったため、夕飯に買ってきたサラダなどの惣菜と冷凍食品の餃子を焼いたところ、夫が手をつけなかったことがあった。

「私は食べ物の匂いで気持ち悪くなりながらも、ここまでやったの、どうして食べてくれないのと言ったら、『オレは手作りのおかずしか食べない。そういう家で育った』と言い放ったんですよ。

 実はうちは商売をしていて、両親が忙しかったので、近所の惣菜屋で買うおかずがいつもメインだった。夫はそれを知っていて、そういう言い方をしたんです。親までバカにされたと思いました」

 彼女はテーブルの上にあった料理を皿ごと夫に投げつけ、そのまま身の回りのものを持って実家に戻った。

「結婚前に黄色信号がついている彼への疑問点は、結婚後に絶対、赤信号に変わります。特にモラハラは気をつけたほうがいい。当時の自分にも言ってやりたいくらい(笑)」

 現在、ユキさんは実家で、両親と12歳になるひとり娘との4人で楽しく暮らしていると笑顔を見せた。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio

2021/5/28 8:46

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