生活保護を受けるのは恥ずかしい?知っておくべきセーフティーネットの現状

新型コロナウィルスの影響で生活に困窮する人が増えた。生活保護を受けるか悩んでいる人もいるだろう。「教えて!goo」でも「生活保護は恥だという夫に嫌悪感」という投稿に多くの意見が寄せられている。そこでNPO法人生活支援機構ALLの坂本慎治さんに、生活保護の現状について率直な意見を聞いた。

■知識不足が偏見を生む

日本では「生活保護を受けるのは恥」という考え方の人が多い。権利があっても受給しない人がいる現状は、なぜ生まれたのだろう。

「生活保護制度に関する知識は、学校では教えてくれません。そのため、世間で取りざたされているようなネガティブな事象ばかりが目についてしまいます。しかし不正受給をしている人や、ギャンブルをして暮らしているような人はごく一部です」(坂本さん)

大半は病気やケガなどで就労が難しい、本当に困窮した人たちが受給しているという。

「今回の新型コロナウィルスの流行という経験から、『すべての人が生活保護を受ける可能性がある』という考え方が周知されてほしいです。そして制度について国民をしっかりと教育し、偏見や誤解をやわらげていくべきでしょう。以前お笑い芸人の母親が生活保護を受給していた件で、ある議員が『扶養していないのは不正だ』などと発言していました。議員でさえ生活保護制度に関して理解が乏しいほど、正しい知識が広まっていないのが現状です」(坂本さん)

制度が国民にも浸透している他国から日本が学べることがあるというので聞いてみた。

「セーフティーネットが充実している国はその分消費税などの税金が高く、福祉サービスや医療、子育て支援に国が多くお金を出しています。たとえば、ノルウェーでは出産費用や学費は無料、医療費も年間自己負担額を超えた分は無料となります。このような税金の使い方であれば国民は理解しやすく、偏見なくセーフティーネットを活用できるのではないでしょうか」(坂本さん)

国民一人ひとりが知識を付けていくことはもちろん大切だが、利用しやすい制度や支援の環境整備も求められる。

■ 自分や国を守ることにつながる生活保護

坂本さんいわく、コロナ禍によって失業や廃業が増え、相談件数が倍になったという。その中で最も多かったのは「生活保護を受けたくないが、受けないと生活ができない」というもの。こういった状況の中で、坂本さんが感じたセーフティーネットの重要性について聞いた。

「一時的な給付金や国の貸付制度がありましたが、それを受けたところで元の生活に戻れるわけではありません。困窮し、打つ手がなくなった人が多いのが現状です。いざ生活保護を受けようと思っても、資産の売却や生命保険の解約など、ハードルが高いのが大きな課題でしょう。受給後は再起が難しくなるというのも確かな側面ですね。セーフティーネットは誰もが受けやすく、再起しやすい制度にしなければならないということを実感しています」(坂本さん)

生活保護を受給することで国の負担につながるという考え方もあるが、それは間違った認識だと指摘する。

「セーフティーネットは日本国民が国内で使うものです。国内でお金が回っているため、国視点で考えるとお金は減っていません。むしろ経済の回復が早まり、雇用が増えるのではないかと考えています。生活保護などを活用せず困窮者が増えれば、景気の回復が遅くなる可能性があります。生活保護は国のためにも受けるべきものだと思っています」(坂本さん)

セーフティーネットを利用することは、決して恥ずかしいことではない。コロナ渦に限ったことではなく、利用できる制度をきちんと知っておくことは自分の生活、そして国をも守ることにもつながるのだ。

●専門家プロフィール:NPO法人生活支援機構ALL

失業、虐待、DV、ケガ、病気などが原因で生活に困っている人達に訪問・相談を通じて必要な制度を紹介する社会貢献事業を行う。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

2021/5/27 11:50

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