娘から「死にたいのか?」と言われても…ワクチンを打ちたくない人たちの理由

 医療従事者に高齢者……と、ついに一般人向けの接種も始まった新型コロナウイルスのワクチン接種。予約が取りづらい、接種までのスケジュールがわからないなど一部で混乱は続いているが、いち早く接種を完了した人々からは、安堵の声も聞こえてくる。

 一方で、「ワクチンを打ちたくない」という人たちも存在する。一体どんな理由があるというのか、当事者に話を聞いた。

◆「ワクチンを打ちたくない」人たちの理由

 ワクチン接種は「決まり」ではないものの、一刻も早くコロナ禍を抜け出したい多くの人々が「我れ先に」と思うなかで、「ワクチンを打ちたくない」人たちの心境は複雑だ。

「ワクチンは打たないというと、かなり驚かれました。上司は人それぞれの自由だから、なんて言っていたのに翌日には豹変。ワクチンを打たないのなら職場に来るな、と叱責までされたんです」

 関西在住の准看護師・浪瀬ゆかりさん(仮名・30代)は大の注射嫌い。痛いからなどといった理由ではなく、小学生時代に予防接種を受けたあと、体調に異変を感じ、注射跡が赤く大きく腫れ上がったからだ。

 以降、予防接種の類は避けてきたが、コロナウイルスの感染には恐怖を覚え、直前まで迷った。

「気分も悪くなるだろうし、感染するのと同じくらい怖い。年齢も若くないし、ワクチンを接種したせいで余計に悪くなるような気がして。やっぱりやめようと思ったんです」(浪瀬さん)

 これまでも職場での予防接種を回避したこともあったため、今回も同じように避けよう、くらいの気持ちでいたが、上司は浪瀬さんを執拗に責め立てた。

「陰謀論を信じているのかとか、コロナは風邪だと思っているのか、なんて言ってくる人もいましたが、そうじゃない。ワクチンの有効性は分かっているつもりですし、接種した高齢者が気分的にも明るくなって、元気に帰っていかれる姿も見ています。ただ、私にはワクチンは合わない、それだけの理由なのに……」(同)

 もちろん、一般人からしてみれば、医療従事者がワクチンを打っていない、となれば違和感も覚える。しかし、体に合わないという理由があるのに、それを強いるような行為は、果たして正しいと言えるのか。

◆マスコミに踊らされたくない

 埼玉県在住の自営業・古田輝彦さん(仮名・70代)は、基礎疾患もある高齢者ということで、かかりつけの医師から「優先的にワクチン接種を受けられる」と連絡を受けた。

 実は古田さんも、かつて予防接種を受けた後、体調を崩して寝込んでしまった経験があり、今回のワクチン接種にも及び腰だった。だが、今回ワクチン接種を「拒否」した理由は他にもある。

「ワクチンがまだ日本に届かない頃、テレビや新聞はワクチン接種の後に死亡した海外の人のことをよく取り上げたでしょう?

 その後、日本人でもワクチンの接種が受けられるようになると、報道は“いつ打てるのか”ということばかり垂れ流して、不安な国民を煽っているかのように感じるのです」(古田さん、以下同)

 確かに、本当にワクチンを接種しても大丈夫なのか、という議論は、連日テレビのニュースなどでも取り上げられていた。

 ワクチン賛成派と慎重派の識者が議論を交わす様子なども眺めていたが、いざワクチン接種が始まると、そんな議論は消えてなくなった。

 代わりにマスコミが騒ぎ始めたのは、ワクチン接種が遅い、ワクチンの量が足りない、ということだ。

◆娘からは「死にたいのか?」

「ワクチンへの不安を煽った後は、ワクチン接種できない人を焦らせていませんか? 高齢で体も弱いから、コロナに感染したくないという気持ちは強い。今はあくまでも様子見のつもりでした」

 古田さんはこうした経緯から、ワクチン接種を見送ることを家族に相談。すると返ってきたのは、驚くべき反応だった。

「まず娘から、死にたいのかと怒られまして……。仕事を手伝ってくれていた息子も、親父がワクチンを受けないのなら一緒に仕事はできないと、突き放されました。仕方がないので私は会社に行かず、一人自宅にいるばかり」

 娘はその後も「接種して」と何度も連絡をよこしてきたが、それでも断ると、今度は古田さんを“ボケ老人”扱いし始めたという。

「ネットで変な噂を読んだんじゃないかとか、いろいろなことを言われました。でももう、何を言っても分かってくれませんから、ひっそりとコロナ禍が収束するのを待つしかないという心境です」

◆ワクチン接種は強制ではない

 厚生労働省のホームページ内「新型コロナワクチンQ&A」には、「接種は強制ではなく、あくまでご本人の意思に基づき接種を受けていただくものです」と示されている。また、職場における対応についても次のように明記されており、困った際の相談窓口も案内されている。

職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないよう、皆さまにお願いしています。仮にお勤めの会社等で接種を求められても、ご本人が望まない場合には、接種しないことを選択することができます

 ワクチンがなければ騒ぎ、ワクチンが届いても騒ぐ。せっかくコロナ禍収束に向けての、かなり現実的なロードマップが見えてきたというのに、人々の分断は深まるばかり。

 新型コロナウイルスの脅威がなくなったとしても、この様子では明るい近未来の到来は期待できないと思う他ない。

<取材・文/森原ドンタコス>

2021/5/26 15:54

この記事のみんなのコメント

1
  • 脱走兵

    6/1 14:59

    ワクチンが効こうが効くまいが、ワクチンが原因の死人が出ようが出まいが、8割・9割の人間がワクチン接種完了するまで『コロナ禍の終息』が宣言される事はないだろうね。中身がブドウ糖でも生理食塩水でも『ワクチン接種』を義務化してでも受けさせなきゃキリが無いよ。補償も罰則も強制力も無い『緊急事態宣言』が2回目以降効果が無いのといっしょ。

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