「優しくするとナメられる」はもう古い。若手に好かれる「共感力」とは
あらゆる時代の転換点に置かれ、右往左往してきた40代、50代の会社員。世間の意識も次第に変容し、叱ることがタブーとされる今、慕われる上司・先輩のひとつの武器は「共感力」だ。後輩から慕われる共感力を身につけ、「イケてる中年」にアップデートする方法を探る!
◆苦労を糧に養った共感力
産廃処理会社で課長を務める鈴木英紀さん(仮名・47歳)もまさに“共感する上司”。
鈴木さんの部下は、「とにかく温厚で優しい。かといって舐められているわけでもない」と社内で一目置かれている存在だと話す。その共感力がどうやって培われたのか、鈴木さんはこう語る。
「大学卒業時に就職氷河期の影響で就活に失敗し、契約社員として滑り込んだ会社を上司のパワハラで退社しました。その後、2年半引きこもり、30歳目前で『このままじゃダメだ』と、アルバイトとして働き始めました」
ほどなく真面目な働きぶりが評価され、正社員に登用。多くの部下を持つまでになった。
◆相手の気持ちを理解することが上司の役目
「課長になってみると、やっぱり過去の経験がフラッシュバックします。自分がされて嫌だったこと、苦しかったこと、逆にしてほしかったこと……。
そう考えると、頭ごなしに否定せず、『なぜそういうことをするのか?』『なぜそういうことを言うのか?』と相手の気持ちを理解することが、自分なりの上司の役割だと思いました。いくら仕事がデキても、高圧的な上司は一番嫌な上司かもしれません」
鈴木さんの部下は言う。
「ウチみたいな産廃業者は、職を転々としているとかスネに傷をもつ連中が少なくありません。でも、課長は絶対に見下さず、同じ目線で話をしてくれる。自分たちに寄り添ってくれる。それがわかるんです」
鈴木さんは「褒めすぎだ」と照れつつも、こう続ける。
「今の会社の入社3年の離職率は10%以下。働きやすい職場づくりに貢献できて、これほど嬉しいことはないです」
己の弱さを知るからこそ人の痛みや弱さも理解できるのだ。
◆貫く信念に若手が共感
若手に共感するというより、逆に若手から共感され、尊敬される。そんな人物が、私立高校のベテラン教諭・武田裕二さん(仮名・52歳)だ。武田さんを慕う30代教師は、こう熱弁する。
「私が赴任した際も、指導教官に手を挙げてくれました。武田さんがスゴいのは、学校に対して厳しい意見もズバズバ言うこと。例えば、問題となっていた一部ベテラン教員の態度を改めるため、企業向けのパワハラ研修を定期的に行うように提案してくれた。
上の人間からは煙たがられていますが、若手が“校長・教頭になってほしい先生”として勝手に支持しているので、認めざるを得ない状況があります」
◆教育現場で昇進。民間出身の若手がとった行動とは
そんな武田さんは、実は元会社員。夢を捨てきれず、脱サラして教育現場に飛び込んだが、厳しい現実に直面したという。
「転職して一番驚いたのは、学校という閉鎖空間の時代錯誤で保守的な体質。いじめなどの問題の責任をなあなあで済ませたり、職員間でひどいハラスメントが横行していたり。希望をもって転職した自分は愕然としました」
その状況を、どうやって打破してきたのか?
「たしかに、自分一人がいきり立ったところで何も変わらない。特に民間出身だと異分子扱いで、どうしても浮いた存在になります。だから、まず目の前の仕事に全力で取り組みました。また、クレーム対応など他人が嫌がる仕事を積極的に買って出た。元は営業マンだったので、クレーム対応には慣れていましたしね」
今では教頭に次ぐポジションにまで押し上げられた武田さん。「せっかく教師になったのに、自分で自分を損ないたくなかった」と語る背中と貫いた信念が、後輩の共感と尊敬を集め、着実に実を結びつつある。
<取材・文/週刊SPA!編集部>
―[[イケてる中年]の肖像]―