高まる東京五輪中止論も、アスリートを政治的志向で巻き込むのは筋違い

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◆陰謀論を真面目に考える人たち

 誰でも自由に投稿できるネットでは、突拍子もない異次元の話に出くわすことが多々あります。

 最近だと新型コロナウイルスのワクチン陰謀論がなかなか笑えました。新しいワクチンだから「数年後はどうなるかわからない」と不安になるのは理解できます。しかし「コロナワクチンにはマイクロチップが入っていて、5G電波で洗脳・操作される」といった類いのものも見られます。「そんなバカな」と思いますが、一部の人は真面目に考えているようです……。

 福井県の斉藤新緑議員は、朝日新聞のインタビューで「コロナのワクチンにはマイクロチップが入っていて、5G電波で操られる。打てば5年で死ぬ」「菅も麻生も逮捕された。今、表に出ているのはゴムマスクやクローンだ」などと答えています。失礼ながら、この記事を見たとき僕は泣くほど笑ってしまいました。

 ワクチンの陰謀論もさることながら、福井の自民党県連では会長代行まで務める斉藤氏が、党総裁に対してクローンだと言うなんて笑うしかないでしょう。議員レベルの人が陰謀論を真面目に受け止めているのですから、本質的には笑えないんですけどね。

◆滞るワクチン接種。五輪の行方は

 このように謎の不安を覚える人がいる一方、高齢者へのワクチン接種に予約が殺到しています。緊急事態宣言がダラダラと延長される中、経済活動再開の希望はやはりワクチンでしょう。特にリスクが高い高齢者への接種が進めば、社会の空気も変わってくるのではないでしょうか。

 しかし日本ではまだまだ接種率は低い状態が続いています。菅総理は7月をメドに一日100万回接種を目指すと宣言していますから、本当に実現できるなら希望が持てます。

 ここで気になるのは東京五輪の行方です。開会式は7月23日ですから、今発表されている情報でいえば、ワクチンを希望する高齢者の接種にようやくメドがついているかどうかの頃でしょう。日本は高齢者だけの国ではありませんから、より接種数を増やしていかないと不安は残るばかりです。

◆五輪はやるのかよ!高まる「中止論」

 国内には東京五輪中止論もくすぶっています。確かにコロナ対策で国民に我慢を強いた上で、あらゆるイベントやスポーツの大会が中止や自粛に追い込まれているのに、五輪はやるのかよというのはツッコミとして合理性があります。

 菅総理は五輪について「対策を徹底することで、国民の命や健康を守り、安全、安心の大会を実現することは可能」と見解を述べていますが、緊急事態宣言もダラダラ続けて本当に可能なのかという話です。

 国民意識も徐々に変化していて、読売新聞の世論調査を見ても五輪は「中止する」が59%、「開催する」は39%となっています。僕としてはせっかくの日本での五輪ですし、開催してもらいたいというのが本音です。ツラい状況だからこそ、己の限界に挑戦するアスリートに勇気づけられることも多いでしょうしね。

 ただ、開催国である日本の国民感情が反発するなら難しいだろうと考えています。

◆五輪の政治利用に反発

 もはや当初思い描いていた五輪のシナリオは完全に破綻しているというのも、国民感情が一種の諦めになってしまっている要因なのではないでしょうか。

 本来ならば、五輪の特需があったはずなのです。多くの外国人観光客が来て関連業種はウハウハ。五輪に備えて設備投資をした企業や施設も多くあります。ところがコロナの影響で目当ての観光客は基本的に来ることができません。

 そういう状況ですから、そもそもやる意味があるのかという話です。五輪はスポーツの祭典といっても、結局は政治的な意図が絡み、経済的な要因が大きいのも現実なのです。今開催するのかしないのかは、一連のコロナ対応における政治問題でしかありません。

 政府や組織委の対応も批判を招くポイントです。ワクチンの打ち手も不足する中、組織委がスポーツドクターを無償ボランティアで200人募集したり、日本看護協会にも500人の看護師参加を要請したり……。優先順位どうなっとんねんということで批判が高まるのです。

◆池江選手を批判した8割がリベラル系?

 政権に批判的な勢力は五輪を利用してバッシングを強めています。一部はお門違いな批判も展開していて、競泳の池江璃花子選手のツイッターに突撃し、「辞退しろ」などと圧力をかけていました。もうアホか、と。

 しかし池江選手は大人なので、「決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけ」とツイートし大きな反響を呼びました。ちなみに池江選手に辞退を求めるツイートを拡散しているアカウントの80%近くが、過去のツイートから「リベラル系」とラベリングされていたアカウントだったことがわかっています。

◆選手を政治的思想に利用するのは筋違い

 アスリートは五輪に命を懸けて調整しています。そのアスリートを政治的な志向で巻き込もうとするとは、批判の方向音痴も甚だしい限りです。結局は政治の決断です。これはやっても文句を言われるし、やらなくても文句を言われるでしょう。

 難しい判断を下すことになりますから、現状はやる気でも、まだどうなるかわかりません。でも今文句を言っている人も、開催したら結局見ちゃう。それが五輪なのではないでしょうか。

今週の一言

五輪はやってもやらなくても批判される。しかし、アスリートを政治的志向で巻き込むのは筋違いである。

<文/KAZUYA>

―[ライトなライト論]―

【KAZUYA】

動画配信者、作家。1988年、北海道帯広市生まれ。2012年より、YouTubeとニコニコ動画にて「KAZUYACHANNEL」を開設し、政治や歴史、社会問題などのニュースをほぼ毎日配信する。YouTubeのチャンネル登録者数は70万人超、ツイッターのフォロワーは11万人超。『日本人が知っておくべき「戦争」の話』など著書多数

2021/5/23 15:52

この記事のみんなのコメント

2
  • 玉葱

    5/25 3:07

    中止か開催の2択みたいに書いてるけど、再延期の項目を開催希望に入れてるなぁ?(笑)純粋な開催希望は、2割程度って結果だったはずだけどwww

  • トリトン

    5/23 17:38

    オリンピックの陰謀とか知らないが、アスリートは頑張ってやってるのかもね、でもいつも思うがアスリートな金魚の糞のようにぞろぞろついてくるゴミ半分も有らんやろう。減らせや金の無駄やん。本当なこのようなダにはそこら辺にうじゃうじゃいるよね。

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