変異コロナワクチン「副反応の処方箋」10(3)6カ月の効果持続を確認

7_変異ウイルスにも有効か?

 日本でも確認されている変異コロナは英国由来や南アフリカ由来など複数あるが、変異ウイルスにも有効なのだろうか。

「日本でも確認されているイギリス由来に関しては、ファイザー社のワクチンは十分効果があることが、イスラエルの大規模な臨床研究結果などからわかっています。また、南アフリカ由来に関してはまだ情報が少ないですが、実験室での研究結果と最近のカタールでの研究結果などから、ある程度の有効性が保たれていることが期待されています」(峰氏)

 さらに最近ではインド由来が猛威を振るうなど、油断ならない状態が続いているが、

「ただ、アストラゼネカ社のワクチンは、南アフリカ由来に対して有効ではありませんでした。ワクチンの種類と変異ウイルスの種類によって有効性が変わってくるため、ニュースを見る時は『どのワクチン』と『どの変異ウイルス』の話をしているのか注意することが必要です」(峰氏)

 今後は、ウイルスの変異を見極め、どのワクチン接種を受けるかが肝要となってくる。

8_ワクチンの有効期間はいつまで?

「現時点では正確にはわかりませんが、ファイザー社は、2回接種後6カ月経った時点でも高い効果が保たれていることを発表しています。これは『6カ月しか』もたないということではなく、今の時点では『少なくとも6カ月』効果が持続するということです。実際にどれくらい有効な時間が続くのかは今後も検証が続けられていきます。ちなみに02~03年に流行した、今回の新型コロナウイルスとよく似たSARSでは、中和抗体が2~3年持続していたという研究報告もあります」(峰氏)

 いずれにしてもワクチン接種すれば、罹患した場合でも重症化する可能性が減るという効果は期待できるのだ。

9_そもそもmRNAワクチンに拒否反応がある。

 風疹などの生ワクチン、インフルエンザなどの不活化ワクチンに対し、今回のファイザー製はmRNAワクチンという人類史上初めて広く使用されるものだという。

「あまりよく知らないことに対して、不安や漠然とした拒否反応が出てしまうのは仕方がないことです。一部の人は〝未知のワクチン〟などと不安を煽る表現を使うことがありますが、実際にはmRNAワクチンに関しては15年以上前から研究が続けられてきました。mRNAワクチンがどのような仕組みで働くのか、有効性と安全性の評価、使用後の安全性のモニタリングがしっかりと行われていることを知れば知るほど、今回のワクチンに関する不安や拒否反応は少なくなってくると思います」(こびナビ)

 一部ネット上などで囁かれる陰謀説などに踊らされないよう気を付ける必要がある。

10_日本がワクチン後進国なのは問題だ。

 5月10日時点での日本国内のワクチン接種率は2.4%。これは世界196カ国中129位、経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国の中では最下位という有様だ。

「自国でのワクチン開発・治験に時間がかかっている、承認前に日本で独自の第1・2相の臨床試験が必要だった、当初のワクチン調達量が少なかった、感染者数が一部の国に比べて少なかった、緊急性が低く捉えられていたなど、様々な原因があると言われています。ただし5月以降は政府の努力もあり、接種が急速に進んでいくことが期待されています」(峰氏)

 その上で、今後の医療制度に関しこう提言する。

「事態の終息後、なぜワクチン接種の遅れが生じたのか、日本での課題を細かく分析して、システムの改善、資金の投入、人材育成など、課題に応じて対策を考えることが重要になると考えます。というのは、新型コロナウイルスのような新しい感染症によるパンデミックは、長期的に見れば再び起こる可能性がありますし、根底に存在する日本の医療提供体制の様々な課題を、今回のパンデミックが浮き彫りにしたともいえる状況だからです」(峰氏)

 未知のワクチンでもその正体を理解すれば、案ずるよりも打つが易し、のようだ。

*「週刊アサヒ芸能」5月27日号より

2021/5/22 18:00

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