尾野真千子、約4年ぶりの映画主演で語る「役づくりへのこだわり」
約4年ぶりの主演映画『茜色に焼かれる』が5月21日に公開となる尾野真千子。出世作となった朝ドラ『カーネーション』での明るく快活な姿が印象に残っている人も多いだろう。
この日の撮影でも、カメラマンのかけ声に応じておどけた表情を見せるなど、サービス精神溢れる一面を見せてくれた。一方で「ちゃきちゃきした役は、自分に似てるからこそ難しい」とも語る。そんな彼女の役づくりへのこだわりとは――。
◆最近は楽に生きられている気がします
――昔から現場ではムードメーカータイプなんですか?
尾野:どうなんでしょうね。でも、素の自分は明るいほうだと思ってます。最近は緊張がほぐれてきたというか、いらないものがだんだん削ぎ落とされて、自分が出てる感じですかね。楽に生きられている気がします、最近は。
――4人姉妹の末っ子という家族構成の影響もあるんでしょうか。やはり尾野さんが一番明るい?
尾野:いやいや、それが私よりも姉たちのほうが盛り上げ上手というか。姉妹みんな明るいので、うるさいくらい賑やかですよ。
――リアル『カーネーション』一家ですね!
尾野:そうかもね(笑)。誕生日になるとサプライズしたり、そういうお祭り的なことが好きなんでしょうね。何かとイベントにしたがる家族です。私たち姉妹は40歳を節目と考えているところがあって、盛大に祝ってきました。今年は私の番なんですよ! どんなことしてくれるかなー、逆にサプライズしよっかなーとか今から考えてます。
――どんなふうにお祝いされてきたんですか?
尾野:ほとんどごはんを食べる会なんですけど、「仕事で帰れません」って断っておきながら、実はこっそりみんなで集まって、ふすまとか、廊下とかに隠れて、「ジャジャーン!」とか、お店の個室を飾り付けして祝ったりとか。
◆明るい役は近すぎて苦手。自分から離れた役が面白い
――素敵ですね。これまでもたくさんの家族を演じられていますが、尾野さんにとって“理想の家族”というと尾野家なんでしょうか。
尾野:うん。やっぱり理想は自分の家族になっちゃいますね。
――明るい印象がある一方で、シリアスな役を演じることも多いですが、やりづらさを感じることは?
尾野:いえ、陰のある役のほうが断然やりやすいです。気持ちも楽。自分にないもののほうが「こんなのどうだ!」って面白がってできるんですよね。ちゃきちゃきした役って、なんか難しいんですよ。自分に似てるほうが演じにくい。“尾野真千子”が邪魔になると嫌じゃないですか。「尾野真千子じゃなくて役として見てほしい」が前提にあるから、難しいのかもしれないです。
――母親役の印象が強いですが、5月28日公開の『明日の食卓』では、「母を演じることは難しい」とコメントされていたのが意外でした。
尾野:母親って、我が子という分身がいるわけですよね。それってすごいことで、周りのお母さんに話を聞いても、経験がない私には理解できなかったりするんですよ。「なんでそれが許せるの?」とか、「ここは怒るんだ」「ここは許すんだ」っていう境界も私の想像とは全然違ったりして、「ああ、母ってちょっと難しすぎるな」と。でもやらなきゃいけないので、とにかく想像。ズルいかもしれないけど、台本通りが多いです。
◆やってることは嘘でも気持ちに嘘はつけない
――理解より想像を深めるということですか?
尾野:知ったかぶりは嫌なんです。それって嘘が見えてしまう気がして。想像しても考えても答えは出てこないから、親子を演じる子役の子を見て、この子が本当にかわいいと思えるか、虐待するほど憎めるか、相手あってのお芝居だと思います。
「どんな気持ちでお話ししてくれるのかな」とワクワクしながら現場に行って、「ああ、そうきたか!」って。ぶっつけ本番みたいなものですよね。特殊な役だったらある程度の役はつくりますけど、相手の声に反射神経で気持ちのままに応えたいんです。
※5/18発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
【Machiko Ono】
’81年生まれ。’97年に河瀨直美監督の『萌の朱雀』で映画主演デビュー。’11年、朝の連続テレビ小説『カーネーション』(NHK)のヒロインに抜擢される。4年ぶりの主演映画となる『茜色に焼かれる』が5月21日に、出演映画『明日の食卓』が5月28日に全国公開予定
取材・文/小西麗 撮影/尾藤能暢 スタイリング/伊藤真弓(BRÜCKE) ヘアメイク/稲垣亮弐(マロンブランド)
衣装協力/オールインワン3万1900円(オットダム/ストックマン) サンダル1万9800円(ノーネーム/ストックマン) イヤリング、インナー、ベルト(すべてスタイリスト私物)