急速に老化する「プロジェリア」の25歳男性 自ら研究者に「革新的な治療法を見つけたい」(伊)

イタリアのベニス近郊に住むサミー・バッソさん(Sammy Basso、25)は、これまでに世界で確認されているのが179例という「ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(通称プロジェリア)」を患っている。

身長138センチ、体重20キロと小柄なサミーさんは、小さな顎や尖った鼻、顔の皺、禿頭、脱毛など典型的なプロジェリアの容貌をしており、関節のこわばりなどの症状にも苦しむ。

サミーさんは普通の人とは外見が違うことについて「物心ついた頃から、自分が人と違うことは認識していました」と明かし、「プロジェリアとして生まれたことで、次第に『自分が人生で何をしたいのか』ということが見えてきたのです」と語る。

そんなサミーさんはイタリアのパドヴァ大学で自然科学を専攻し、分子生物学について学ぶとそのまま大学院へと進学。プロジェリアをテーマにした卒論を書いて修士課程を修了した。

現在、分子生物学者として研究を続けるサミーさんは数年前、プロジェリアの情報提供や科学的研究をサポートする非営利団体「プロジェリア・サミー・バッソ (Progeria Sammy Basso)」イタリア協会を立ち上げており、「自分なりのやり方で世界を変えたい」と夢を語る。

サミーさんは「私たちはプロジェリアについて理論的には理解していますが、医学的に解明はされていない。たとえば私は数種類の薬を飲んでいますが、その中の1つは昨年11月に米国食品医薬品局(FDA)に医薬品として承認されたものです。これは老化を遅らせる薬としては初めてのことですが、私はプロジェリアの革新的な治療法を見つけたいのです」と明かし、このように続けた。

「私は2歳でプロジェリアと診断され、寿命は13歳だと言われました。この病気のために長時間歩いたり、走ったりジャンプすることはできませんし、心疾患や血管障害もあります。でも決してマイナスの面ばかりでなく、プロジェリアであったからこそ経験できたこともたくさんありました。」

実はサミーさんは2015年にアメリカを旅行し、その体験を本にまとめている。またイタリア政府とコラボして研究を行ったり、プロジェリアについてより多くの人に知ってもらうための講演や募金活動もしている。そしてプライベートでは地元のランニングクラブに属し、「いずれはミラノマラソンに参加したい」と笑う。

サミーさんは「マラソンでは、特別な車いすに乗った私を仲間が押してくれます。また時には友人らと羽目を外し、パーティをするなどして楽しみます。プロジェリアであるからこそ、今の人生があるのです。だからもし、もう一度人生がやり直せたとしても、プロジェリアのまま生きたいと思っています。」

なおサミーさんの父アメリゴさん(Amerigo)は「息子が誕生する前はプロジェリアという言葉さえ聞いたことがなく、生まれてからは『とにかく息子を守ってあげなくては』という気持ちでいっぱいでした。でも時間が経つにつれて『息子がやりたいように、普通の生活をさせるのが一番なのではないか』と考えるようになりました」と語っており、母ローラさんも「息子が人生を生きる“真の意味”を教えてくれました」とサミーさんの生き様に共感し、応援しているようだ。

ちなみにサミーさんは今後、ジーンセラピー(遺伝子治療)なども視野に入れてリサーチを進めていくそうで「研究は一生続けますよ」と爽やかな笑顔を見せている。

画像は『Born Different 2021年4月17日付Instagram「Progeria helped me understand what I want to do in my life.」、2021年5月17日付Instagram「The 25-Year-Old Who’s Ageing Too Fast」』『Progeria Research Foundation 2019年12月1日付Facebook「Sending Happy Birthday wishes to Sammy Basso!」』のスクリーンショット

(TechinsightJapan編集部 A.C.)

2021/5/20 6:00

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