「年賀状の子どもの写真にモヤッ」黒い気持ちをほぐすための考え方

 こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

 子どもを持たない女性たちが近年増えています。生涯独身や子なし夫婦などケースは様々ですが、子どもがいないことで自分自身やパートナーとの関係に時間とお金をかけられ、子育てとは別の充実した人生を歩めるという見方もあります。

 ですがまだ少数派であるこの生き方は、社会にある「女は子どもを産むべき」といった旧時代の価値観と向き合うこととも隣り合わせ。中には、傷ついたり生きづらさを感じたりする人も多いようです。

 前回記事ではそんな彼女たちの生きづらさについて、子を持たない人生を決めた女性を応援する「マダネ プロジェクト」の代表・くどうみやこさんに話を聞きました。今回は、子を持たない選択をした女性たちが、どのように苦しみを昇華させ、自分らしい人生を見つけようとしているかを話してもらいました(以下、コメント全てくどうさん)。

◆子がいないことで抱えるモヤモヤとは

 現在はコロナもあり、インターネット開催となっている“子どもがいない女性の会”。そこでは、どんなふうに皆さん分かち合いをしているのでしょうか。

「会は8~10人ほどのグループに分け、ファシリテーターを入れて自己紹介や子がいない経緯について話をしていきます。また、いつも他の参加者に聞いてみたいことを質問としてあげていただくのですが、日頃感じている悩みや、ブラックトーク的なものが共感を得たりしますね」

 たとえば働いている人の場合、産休育休メンバーのフォローに回ることが多くてモヤッとすることがあるけど、他の方はどうしているかといった話や、老後のことや子を持つ友達との付き合い方もよく出る話題だそう。

◆黒い気持ちも、分かち合うだけでほぐれていく

「ブラックな気持ちも、皆さんここだから言える部分はあり話題にあがりやすいです。年賀状の子どもの写真にモヤッとするとか、SNSで周りの子どもの成長を見るのが辛いとか。人の子をそんなにかわいいと思えないという声もあります。また友達同士で集まると、どうしても子持ちの中に子なしの自分が入ることが多く、2時間ずっと子どもの話……なんて事になり、困り果てるという悩みも聞きます」

 4月15日に発売されたくどうさんの新刊『まんが 子どものいない私たちの生き方: おひとりさまでも、結婚してても。』(小学館刊)では、こういった子どものいない女性が感じるモヤモヤをマンガスタイルで紹介。本編では6名の子なし女性が登場し、それぞれの悩みが紐解かれていきます。

「開催を続けていく中で、嬉しい変化を感じることもあります。最初は気持ちを消化できずに泣いていた方が、2回3回と参加される中で感情を整理され、今では経験者として他の参加者の気持ちに寄り添う立場に変わっていく。これまで、会に参加することで気持ちが好転していく方をたくさん見てきましたが、言い出せない苦しさという問題には、今後も向き合っていきたいです」

◆60代以上の“子を持たない先輩”に学ぶ

「マダネ プロジェクト」では子を持たない60代以降の女性たちを「グランマダネ」と呼び、モヤモヤを乗り切った先輩として話を聞く機会もあるといいます。

「現在60代以上の女性というのは、私たち世代が感じているモヤモヤ以上の社会圧の中で、子を持たない人生を歩んできた方たちです。そういった世代的にも気持ち的にも成熟している方に話を伺うことで、素直に聞ける、ロールモデルとして見られるといった効果があります。

 グランマダネの方たちに共通しているのは、ガッと何かを頑張ってこられた方が多いということです。仕事や趣味など何かに生きがいを見つけたことで、子どもがいなくても圧があっても、自分らしい生き方が通せたのかもしれませんね」

 この話を聞いていて、筆者はふと、亡くなった私の二人の大叔母のことを思い出しました。

 戦時中に生きた彼女たち。二人とも結婚はしていたようですが(筆者が大きくなった頃には先に他界)理由はわかりませんが生涯子を持ってはいませんでした。

 私がきちんと彼女たちと話せたのは小学校の中学年頃だったので、彼女たちの気持ちや女性としてのあり方について話してもらった記憶はありません。ほぼ皆婚時代に子を持たない選択をした彼女たちは、どんな気持ちで生涯を過ごしたのか。取材中、少しだけ思いを馳せたのでした。

◆個人と社会、両面での生きやすさを実現させたい

 現在も参加希望者が絶えない「マダネ プロジェクト」。くどうさんは、このプロジェクトや自身の発信を通して、個人と社会、両面での生きやすさを探っていきたいと話します。

「個人に対しては、『マダネ プロジェクト』を通じて、当事者同士が気持ちを共有し、前向きに自分らしく輝いてほしいと願っています。実際運営をしていると、辛さを克服し、社会や他者のために頑張ろうと気持ちを切り替えている方も増えています。

 社会に対しては、私が色んな方の話を聞いて発信することで、子がいてもいなくても、フラットに生きられることが大事だということや、異なる価値観の人を尊重しようというメッセージが広まることを目指したいと思っています」

 くどうさんのこうした活動が記事になると、一定数の批判が集まることもあるそうです。

「負け惜しみにしか聞こえない」「少子化を喜んでいる」「子どもがいないと、ありがたみはわからない」など、偏見に満ちた声です。

 私たちは自分の思い込みをベースに、正しい正しくない、好き嫌いといった目で世界を見てしまいがちです。何かを見てネガティブに感情が揺れたとしても、それは思い込みに基づいているかもしれません。

 昔は光が当たりにくかった“子を持たない生き方”も、フラットに受け入れられる世の中になったらいいなと感じるのでした。

【取材協力】くどうみやこ(大人ライフプロデューサー/トレンドウォッチャー)

大人世代のライフスタイルからマーケティングまで、時流やトレンドをとらえた独自の視点で情報を発信。近年は子どもをもたない大人のマーケットに着目し、子どものいない女性を応援する「マダネ プロジェクト」を主宰。

<取材・イラスト・文/おおしまりえ>

【おおしまりえ】

水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518

2021/5/14 8:47

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