「賞を獲らないと数字が獲れない」唐揚げ戦国時代の最新トレンド

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 コロナ禍でフードデリバリーやテイクアウトの需要が高まる中、最近よく目につくのが唐揚げ専門店

 商品に「日本唐揚協会」主催の“からあげグランプリ金賞”という文字を見たことがある人もいるのではないのだろうか。

 美味しいと認定された店などに掲げられている「金賞」とは、既存の唐揚げとどのように違うのか。唐揚げ業界のトレンドについて、日本唐揚協会の専務理事を務める八木宏一郎氏に話を伺った。

◆金賞を受賞すると、売上が2倍に! 

 そもそも『からあげグランプリ』とはどのようにして始まったのだろうか。

「『からあげグランプリ』は、日本で一番うまい唐揚げ店を決定するという趣旨の元、12年前から始まりました。現在は唐揚げ店舗部門と、スーパー総菜部門と2つの部門に分かれています。スーパー総菜部門は2019年から始まって、今年は3回目でした」

 いったい、どのような基準でノミネートされる店舗は決められているのだろうか。

「唐揚げ店舗部門は、ネット投票なので唐揚げファンの方の投票で決まっています。最も高得点の店が最高金賞になっています。今年は、投票の総数が22万8388票で、投票からエントリーを経て、ノミネートされたのが175店舗、受賞が86店舗になっています。スーパー総菜部門は、全国のスーパーの中から132社エントリーし、書類選考を通過した各エリアのスーパーが試食審査会に進出できます。今回は、35社が金賞や最高金賞を受賞しました」

 スーパーの総菜部門は、試食審査会があるため店舗も趣向を凝らしている。

「試食審査会では、審査員が実食審査で点数を付けます。審査員はだいたい10人ほどで、今年の審査員は、料理芸人のクック井上。さんや、日本コナモン協会会長、日本食鳥協会の会長、唐揚専門店の最高金賞を受賞した有名店の方が試食しています」

◆賞を獲らないと数字が獲れない

「まずは、書類選考でエントリーからノミネートに上がります。東日本の場合は、35社がエントリーし、24社がノミネートに残りました。そこから11社が受賞に選ばれています。金賞に受賞すると、130パーセントに売り上げが増えるそうです。瞬間では2倍になるところも。そのため、“賞を獲りたい”というレベルじゃないんです。“獲らないと数字が獲れない”という思いから、みなさん工夫して参加しているんです。とても大事な大会という位置づけですね」

◆スーパー「ライフ」は唐揚げ専門店にも引けを取らない味

 スーパーでは、美味しい唐揚げを作るために味の改良を重ねているという。

「大事な大会になっているので、この3年でかなりブラッシュアップされてきています。上位の店舗は、専門店と同じ工程で作られており、専門店で出せばというくらいのクオリティに仕上がっています。

 なかでもライフは三年前に一回、最高金賞を獲ったのですが、今回返り咲きで二回目を受賞しました。普通に専門店で出せるレベルです。東京で食べられる総菜だったら、ライフ、オーケーストア、イトーヨーカドー、イオンは、唐揚専門店と同じクオリティです」

 受賞したスーパーの総菜は、手ごろな価格ながらも本格的な味だそうだ。

◆三年連続で金賞受賞、「平和堂」(滋賀県)は別格でうまい

「ライフだと100グラム238円。国産肉を使っているのもありますが、これは総菜では高い方です。でも唐揚専門店の相場が100グラム250円から300円なので、それよりは安いんです。スーパーの総菜部門全体では、三年連続で最高金賞を受賞している中日本の平和堂(滋賀県)は、別格でうまいです! 全店の得点の中でも、ぶっちぎりで高得点でした」

 ちなみに、唐揚げ定食の基本は何グラムなのだろうか。

「唐揚げ定食の基本は、150グラムです。この十年で唐揚げのサイズがアップしていて、お肉を味わえる唐揚げが増えているんです。1個がだいたい35グラムなので、4〜5個くらい。量り売りの場合、グラムではなく『何個ください』って言えばやってくれます」

◆フライドチキンや手羽先との違いは?

 一口に唐揚げといっても、フライドチキンや手羽先とはどう違うのだろうか。

「実は、大カテゴリーが唐揚げで、あとは“ご当地唐揚げ”なんです。全国にいくつもあります。竜田揚げは、奈良県のご当地唐揚げ。フライドチキンは、アメリカのご当地唐揚げ。手羽先は名古屋のご当地唐揚げなんです」

 唐揚げは種類が豊富なようだが、近年では味付けの変化がみられたという。

「醤油ベースが主流だったんですけど、今年は醤油とだしのベースが同じ割合になっています。だしというと、昆布とかつおをミックスして合わせだしにして、プラスあごだしとか、香味野菜だしを入れるとか、醤油がきつい唐揚げよりも、お米に合うような味わいになっているのが、ここ数年のトレンドですね」

◆「オーケーストア」の“塩”唐揚げ、今年は4種類も

 少し前から見かけるようになった塩こうじは、どうなのだろうか。

「塩こうじは、『からあげグランプリ』でいうと、塩ダレ(塩味)になります。オーケーストアでは、去年は『3種類の塩の唐揚げ』という形で、塩のブレンドの唐揚げを出していました。今年は4種類になっています。より複雑で深い味わいになっている傾向ですね」

 唐揚げ専門店を選ぶ際に、一つの目安として同大会で賞を受賞している店なら、ある一定以上のクオリティはあるという。

「ただチェーン店の場合は、本店と支店で差がある場合がある。フランチャイズ契約の店舗だと、クオリティがぶれたりするので一概に全部大丈夫といえない。ただどこも本店はすごい! 美味しい唐揚げを食べたければ、本店巡りをするといい」

 専門店部門でも、金賞を受賞する店にはこだわりが詰まっているそうだ。

「基本はクリアしたうえで、作者の工夫やこだわりが反映されている商品が最高金賞になっていると思います。スーパーだけではなく、専門店も最高金賞の店はちょっと別格なんです。特に本店とかは、一つの作品としてプライドを持って出している。最高金賞を味わってもらうと、唐揚げの楽しさが広がると思います」

◆コロナ禍で有名チェーン店が唐揚げ専門店に進出

 去年から続くコロナ禍の影響から、唐揚げ業界にも異変があったという。

「ゴーストレストラン、バーチャルレストランが増えたというのがこの一年の傾向です。

 異業種からの参入や、他ジャンルからの唐揚げ参入が目立った年でした。モンテローザが経営している『からあげの鉄人』は実店舗は3店舗しかないのですが、同グループの『魚民』というような260店舗を使って、別の場所で『からあげの鉄人』として売っているんです。また『から好し』も、すかいらーくグループが運営しており、全国のガストに併設する形で営業しています。テイクアウトやデリバリーの業態が定着したといえます」

 2019年頃に急速に増えたタピオカティー専門店の跡地に、唐揚げ専門店が増えているように見えるが、実際はどうなのだろうか。

「この1年で唐揚げ専門店は678店舗増えたんです。ここの数字には、ゴーストレストランは入っていないんです。確かにタピオカ跡地に入っているところもありますが、単純にタピオカが潰れるところが多かっただけなんで(笑)。タピオカ専門店は、食べ歩きができる繁華街がメインですが、唐揚げ専門店は住宅地の方がハマるんです」

 では、外で買ってきた唐揚げを美味しく食べる方法はどのようにすればよいのだろうか。

「外で買ってきた唐揚げを美味しくさせるには、最初に電子レンジで30〜40秒全体を温めます。アルミホイルをくちゃくちゃにしたものを下に敷いて、オーブントースターで表面を焦がさない程度に温める。外の水気を取って、外の衣がサクっとするまでトースターで温めると美味しく復活します。もしも、スチームオーブンレンジを持っていたら、一回でスチームを効かせて温めてください」

 さらに、唐揚げに合う飲み物も教えてもらった。

「糖質を気にされている人なら、ハイボールがお薦めです。ビールもいいけど、唐揚げには炭酸系が合うのでレモンサワーもいいと思います。シュワっと油を流すイメージです」

◆唐揚げ戦国時代に突入

 今後の唐揚げ業界はどうなっていくのだろうか。

「スーパーも美味しくなって、専門店やゴーストレストランも増えた。まさに唐揚げ戦国時代です。激戦なので、本当に美味しいお店しか生き残れない。基本に忠実な美味しい唐揚げを出す店を、みなさん応援してあげて欲しいです」

<取材・文/池守りぜね>

【池守りぜね】
出版社やweb媒体の編集を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。 ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。Twitter:@rizeneration

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