熱海の“海が見える”1円物件。文化祭のノリでDIYを楽しみ素敵な別荘に
総務省によれば全国の空き家は800万戸超。今、日本中には激安物件が溢れている。市場価値ほぼ0円となったそんな家を“買って”住居に、セカンドハウスに、投資に、ビジネスに転用しようとする人も。果たしてほぼ0円物件とはいかなるものか? 熱海の別荘地、1円で購入した夫婦のお宅を訪問した。
◆バブル期の別荘地に名物ゴンドラ物件を1円で購入
JR熱海駅から車で急坂を走ること10分。さらに“最寄りの道路”からは石階段で高低差15mを駆け上がった先に、電話ボックスつきの家が立つ珍景があった。
「階段で上がってくるのはツラいでしょ。でもこのゴンドラがあればすごく楽しいんですよ」
笑顔で記者を迎えたマダムは、インテリアコーディネーターの大巻広美さん。彼女がゴンドラと呼ぶのは上の建物と下の道路を結ぶ鉄骨に接続されたボックスのことで、人や荷物を乗せて上下動する。2階から15m下の道路まで高低差約25m。
◆残置物だらけで雨漏りも
「熱海は昔からの憧れだし、海の見える高台に別荘を持つのは夢でしたから、この物件を知ったときは運命的な出会いを感じましたね。
ただ、実際に中を見たらビックリ。布団や家具、食器など残置物だらけ。床が抜けてたり雨漏りしてたり、ひどいものでしたよ。
それでも立地的には文句ないし、もし失敗しても払うのは毎年の固定資産税10万円くらい。購入の心理的ハードルは正直低かったです」
◆夫婦2人でリフォーム
昨年9月に1円で購入後、夫妻は毎週末に東京から熱海に通いながらDIYでリフォームを実施。最近2階の作業が完了し、生活環境は整った。あとは夫が担当する1階の完成を待つだけだ。
「1階は床と壁、天井のほとんどを直しているので時間がかかっています。2階は知り合いにも手伝ってもらって壁を塗ったり、床を張り替えたり家具を作ったりしました。文化祭の前日みたいな楽しさがずっと続いていますね」
3LDKの2階部分は和室、寝室、キッチン、リビングが完成。残る洋室の内装も自由気ままに行いたいと広美さん。
◆支払った費用は…
大巻夫妻がこの物件に住むにあたって支払った費用は、まず2階のリフォームの材料費と工具代が20万円。来客の度肝を抜くべく、壊れていたゴンドラを修理して25万円。その他に、不動産登記にかかる登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税などの諸費用が約40万円といった具合だ。
「別荘を持つことで気持ちにゆとりが生まれ、人生にハリが出ました。熱海は空き家率50%と全国でも高いので、今後は我が家をモデルケースに空き家減少に向けた活動をできたらと考えています」
1円物件、侮れないのだ。
取材・文/沼澤典史(清談社)
※週刊SPA!5月11日発売号の特集「[ほぼ0円物件]の買い方」より
―[[ほぼ0円物件]の買い方]―