『鬼滅の刃』全米で1位。煉獄さん“3000万ドルの男”に

 4月23日、劇場版『鬼滅の刃 無限列車(英題Demon Slayer the Movie: Mugen Train)』がついに全米公開スタート。

 オープニング週末の興行成績は2114万ドル(約22億円)と、同じ日に公開されたメジャースタジオ製作配給のアメリカ映画『モータルコンバット』に続く2位。これまで米国内で公開された外国語映画のオープンニング興行収入としては、歴代1位となる快挙を達成。

 その後、快進撃は続き、2週目の週末(~5月2日)ではついに全米での興行収入ランキング1位になりました。日本映画としては「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」以来、21年半ぶりの記録です。

 しかし気になるのは、同作は近年アメリカで話題になった『天気の子』などと比較して、「大正時代」「鬼」「刀」などが登場する和テイスト高めのストーリーです。果たして、アメリカ人にはどこまで受け入れられているのでしょうか?

◆アメリカのアニメファンの熱意で初日完売

https://youtu.be/kF4spb7jp-M

 そもそもアメリカでは、海外でも認知度の高いスタジオジブリ映画でさえ、地方都市ではミニシアターでしか上映されないことも一般的で、シネコンで上映されたとしてもレイトショーで1回きりのイベント上映で終わりなんてこともあります。

 その点、劇場版『鬼滅の刃』はコロナ化で各地の映画館が開き始めたタイミングと重なったこと、他にこれといった大作が同時公開されていなかったことも手伝って、地方都市でも大きなシネコンで上映され、初日の予約はどこも発売とともに完売。

 アメリカのアニメファンは比較的小さなコミュニティではあるものの熱量だけはハンパなく、『ハリウッド・レポーター Hollywood Reporter』によると、興行収入1位だった『モータルコンバット』の約半数にあたる1600館での公開館数だったにも関わらず初登場の時点で2位を記録しました。

◆10日間で37億円超え「ドラゴンボール」抜いた

 実際、映画館全体で見ると未だに客足が戻ってきていないところが多いようですが、同作の上映する劇場には全米公開を待っていたアニメファンが大挙して劇場に押しかけ、中には感染対策に映画館を貸し切りにして観に行く強者もいたそうです。

『フォーブス Forbes』では、劇場版『鬼滅の刃』の勢いが公開から1週間経っても衰えていないところに注目しています。

 2019年に全米公開されたアニメ映画『ドラゴンボール超 ブロリー(英題Dragon Ball Super: Broly)』は、初週末こそ2240万ドル(約24億円)と劇場版『鬼滅の刃』を上回ったもののその後急激に失速し、最終的には3075万ドル(約33億円)で終了。

 劇場版『鬼滅の刃』は公開から10日間ですでに3411万ドル(約37億円・5月2日時点)と、『ドラゴンボール』を超えました。日本では動員2857万人、興収394億円を突破し、煉獄さんが“300億の男”といわれていますが、アメリカでも“3000万ドルの男”ですね。

◆海外ファンがハマる魅力とは

 アメリカ最大の映画批評サイト「ロッテントマト Rotten Tomatoes」での評価も高く、評論家97%、観客99%の満足度を記録している劇場版『鬼滅の刃』。

 とはいえ、客層はやはりアニメ好き・日本好きのニッチな層に限定されているというのが正直なところで、日本のように社会現象になることはありません。

 以前から刀を使うアクション漫画は海外でも人気のあるジャンルの一つで、『鬼滅の刃』も『るろうに剣心』や『BLEACH』などを見慣れているアメリカ人にとっては受け入れやすい作品。かっこいいアクションシーンには満足感を得ているようです。

 日本で指摘されることのある「説明セリフの多さ」もアメリカのファンは気にしている様子はなく、その映像の美しさや個性的なキャラクターたちに夢中になるファンが続出。キャラクターごとに特徴のある着物を身に着けているのもオタク心をくすぐり、SNSには炭治郎や禰豆子のコスプレ写真を投稿している海外ファンが大勢います。

◆刀アクション・映像美・キャラクターに歓喜

https://youtu.be/X5xuf4A6WT0

 アメリカの大学で日本語クラスを教えている友人が学生たちにアンケートを取ったところ、半数は同作のファンだったそうで、ハマった理由は「とにかくシーンの映像が美しく、芸術的」「禰豆子がかわいい」「炭治郎が素敵」といった意見が多かったとか。

 劇場版『鬼滅の刃』の海外ファンの感想をツイッターでチェックしてみると、「この映画の美しさは言葉では表現できない」「煉獄さん(RENGOKU)と猗窩座(AKAZA)の対決に胸が張り裂けそう」「笑えて悲しいって、何これ最強!」と、ビジュアルを褒めるとともに感動的なストーリーをベタ褒めする人ばかり。ちなみに「上弦の三」はアッパースリー(Upper Three)と訳されています。

 日本の伝統文化や時代背景がどこまで理解できているか、漢字一つ一つに意味が込められている技やキャラクターの名称、細かいセリフまわしなどがどれだけ伝わっているかは謎ですが、とにかく今回分かったことは、『鬼滅の刃』はアメリカでもすごく愛されているということでした。

 映画の楽しみ方は人ぞれぞれ。その文化や社会背景が100%理解できなくても、泣いて笑って楽しめればそれはもうエンターテインメントですよね。

Source:「Hollywood Reporter」「Forbes」

<文/橘エコ>

【橘エコ】

アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。

2021/5/8 15:46

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