「子どもを産んでないだけで…苦しいのはなぜ?」40代に多い孤立感

 こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

 近年増え続けているといわれる、子を持たないことを選ぶ女性たち。その中には、生涯独身の女性もいれば、子を持たない選択をした夫婦、その他に様々な事情を持つ人たちも含まれます。

 データで見ると、女性の生涯未婚率(50歳時の未婚率)は2000年の5.82%から2015年には14.06%に(*1)、子を持たない夫婦の割合は2002年の3.4%から2015年には6.2%(*2)と、いずれも増えています。

 こうした社会背景がある一方で、まだまだ結婚しないことや子を持たない選択をした女性の中には、「生きづらさ」がついて回っていることも多いといいます。前回記事では、30歳を迎える女性の結婚や出産への焦りや、子を持つことや女性としての“義務”(?)とどう向き合うかの葛藤を描いた映画『Eggs 選ばれたい私たち』を紹介しました。

 今回はそんな人生の岐路に向き合い、結果として子を持たなかった(または持てなかった)女性たちが集う「マダネ プロジェクト」を運営し、『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』(主婦の友社刊)などの著書を持つ、くどうみやこさんに話を聞きました。彼女たちが抱えるモヤモヤとした苦しみとは、一体どんなものなのでしょう。

◆子を持たない理由も立場も人それぞれ

 年齢や理由を問わず、子どものいない人生が決まった女性が集い、そしてそんな女性たちを応援する「マダネ プロジェクト」。

「マダネ」とは、「人生まだまだこれから!」と、新しい女性を象徴する「neo」をかけ合わせた造語です。女性の人生の選択において、現時点ではマイノリティである“子を持たない生き方”。「マダネ プロジェクト」のような場に参加するだけあって、彼女たちはモヤモヤとした苦しみと隣合わせで、生きづらさを抱え続けている人も多くいるといいます。

「子を持つ、持たないの理由は人それぞれですが、『マダネ プロジェクト』には、既婚や未婚にかかわらず、主に3タイプの持たない理由の方がいらっしゃいます

1つは子を持つことに明確な意思を持って、妊活などをしてきたわけではないが、年齢を重ねて気づいたら持てなくなってしまったタイプ。

2つ目は、様々な理由から、欲しくないと思って自分の意志で子を持たない選択をした方。

3つ目が参加者の中で最も多い、子を望んで不妊治療などの活動をした結果、持てなかった方です。3番目の方がやはり苦しみは1番抱えている印象です」(くどうさん、以下同)

 この他にも、病気で子を持つことが叶わなくなった方もいるといいます(後述しますが、くどうさんもこのタイプです)。子を持たない人生といっても、独身か既婚か、さらに上記のような理由の違いや交友関係によって、悩みはそれぞれ異なるといいます。

◆「ママになることが女の幸せ」という刷り込み

「『マダネ プロジェクト』に参加する方のメイン層は、昭和生まれの40代です。彼女達の話を聞くと、親や世間から『ママになることが女の幸せ』というような、古い価値観の刷り込みを強く受けて育っています。しかし現実として、『こうなったら幸せ』という思い込みと『自分はなれなかった』という現実の間で苦しんでしまうことがあります

 あわせて、今は多様性が大切と言われるようになりました。しかし多様性という声が広まる一方で、政治家の失言などで、子を生まない女性はチクチク刺されたりもします。こうした外からの社会圧と自分の中にある思い込みの内圧が合わさり、苦しみを生み出しているんだと思います」

「多様性」や「ダイバーシティ」という言葉のイメージを、まだどこか「自分には関係のない特別な人たちの話」だと思っている人もいるように感じます。ですが実際には、様々な考え方や生き方を尊重しようというのは私たちにとってごく身近で大切なこと。子を持つ持たないの選択肢だって、当たり前にどちらも認めあえたらいいですよね。

◆子を持たない女性のロールモデルが少なかった

「マダネ プロジェクト」は、もともとくどうさん自身が病気によって子を持てなくなった際に、「自分以外の人はどうしているんだろう」「子を持たない女性のロールモデルがいない」という疑問から始まったといいます。

「私は40代で病気になり、産めないことが分かりました。その時はもちろんショックでしたが、私自身も当時出産を考えても、仕事などを理由に、もう少し先でいいと引き伸ばした自覚もありました。何より病気治療が最優先だったので、仕方ないと比較的早くに気持ちを切り替え、その後、子がいない人生ってどんなものだろうと思い、データや書籍を探してみることにしたんです。

 でも、当時は探しても、子を持たない女性の生き方はほとんど取り上げられておらず、実態がつかめませんでした。だからこそ、他の人の気持ちを知りたい。色んな話を聞きたい。そう思い、インターネットを通じて会をスタートさせました。

 その頃の私は『できるだけ楽しく人生を歩むために』というスタンスで始めたのですが、現実に集まってくださった方は、辛さや苦しさをまだ消化できていなくて、この苦しさを誰にも共有できないと、深い悲しみを抱えた方が大半でした

 このことを予想していなかったくどうさんは、非常に驚きました。そして現在の活動につながっています。

◆“旧時代の思い込み”を手放すことができたら

 現在はコロナ禍もあり、オンラインでの開催が続いていますが、毎回参加者枠はすぐ埋まってしまうそうです。

「皆さん本音を話したいとか、他の人の話を聞きたいという目的で参加されるのですが、子どものいないことで感じる疎外感や孤独感は、横のつながりを持てないことで起きている側面もあるなと感じています。

 ママになると、子育てを通じて自然とママ友という横の繋がりを持てると思います。でも子を持たないと、特に地方の方などは同じ持たない者同士の繋がりを持ちづらく、疎外感を覚える方もいます。参加された方の中には、『私の周りにはこんなに子を持たない女性はいません!』と参加して心強く感じてくださる方もいるんです」

 子を持たない女性は増えつつありますが、センシティブな話題のため、日常生活の中ではざっくばらんに話しづらい難しさがあります。少子化の問題と多様性の問題で悩む女性の生きづらさ。それが時代の流れの中で、少しずつ変化している最中であることをお話からはとても感じます。

 本来「子を持つ・持たない」は人生の選択の1つでしかないのに、それに自分の価値や女としての義務といった余計な考えがつきまとう。こうした旧時代の思い込みは、できればこの変化が激しい令和の時代に、置いていきたいものです。

【取材協力】くどうみやこ(大人ライフプロデューサー/トレンドウォッチャー)

大人世代のライフスタイルからマーケティングまで、時流やトレンドをとらえた独自の視点で情報を発信。近年は子どもをもたない大人のマーケットに着目し、子どものいない女性を応援する「マダネ プロジェクト」を主宰。

*1 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2020)」

*2 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(2015)」

<取材・イラスト・文/おおしまりえ>

【おおしまりえ】

水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518

2021/5/7 8:47

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