【かしわ記念回顧】強気に攻めたカジノフォンテンがJpnI・2勝目/斎藤修

 直線で単独先頭に抜け出したカジノフォンテンに対し、差を詰めてきたソリストサンダーが差し切るかのような勢いだった。しかしカジノフォンテンがハナ差だけ残したのは、地元の意地だったか。「いつもだったらあの差なら(勝ったのが)わかるんでしょうが、最後、直線は馬を信じてがむしゃらになっていたのでよく覚えてないです」(張田昂騎手)というのは正直な感想だろう。

 カジノフォンテンも含めて先行馬が多いメンバーだったが、意外にもそれほど速いペースにはならなかった。相手関係がどうであれ逃げるのはサルサディオーネとワークアンドラブだが、サルサディオーネが内枠だったからかワークアンドラブは競りかけていかず2番手に収まった。昨年のかしわ記念をスローペースに持ち込んで逃げ切ったワイドファラオが1コーナーを回るところでスッと内に入れて3番手。そのうしろに、カジノフォンテン、カフェファラオという人気2頭が続いた。

 12秒台前半のラップが続いて最初の3Fは36秒3。逃げたのがサルサディオーネということでは、むしろスローといってもいいペース。同じくサルサディオーネが逃げ、アナザートゥルース、ダノンファラオが執拗に突いていって前半3Fが33秒8という超ハイペースとなった昨年の日本テレビ盃とはまったく違った流れ。今回はインティが出遅れて後方からになったこともあったかもしれない。

 それゆえか、カジノフォンテンの張田騎手は強気に攻めた。ライバルがうしろにいるのにもかかわらず、向正面半ばからみずから動いていった。3コーナー過ぎで先頭のサルサディオーネをとらえにかかったところでも張田騎手の手はまだほとんど動いてなかったので、張田騎手が動かしたのではなく、馬がみずから動いていったのかもしれない。

 直線を向いて一旦は後続との差を広げたが、ゴール前で差を詰めてきたソリストサンダーをハナ差で振り切ったのは冒頭のとおり。川崎記念のときは4番人気とまだ半信半疑の面があったが、今回はそこを勝っての参戦だけに単勝3.6倍の2番人気(1番人気はカフェファラオで2.1倍)。中央の有力馬から厳しいマーク受ける立場で勝ちきったことは、単にJpnI・2勝目というだけにとどまらず、さらに一段階進化したと言っていいだろう。

 地方馬によるかしわ記念制覇は、川崎記念と同じく2011年のフリオーソ以来10年ぶり。地方馬が同年にGI/JpnIで2勝したのも、そのときのフリオーソ以来となった。陣営も話しているように適距離は1600〜1800m。2000mの帝王賞ではライバルのマークがさらに厳しくなると思われ、それでも勝つようなら、地方馬としてフリオーソやアジュディミツオーと肩を並べる存在となるだろう。

 ここまで重賞未勝利のソリストサンダーは、わずかの差で金星を逃したが、向正面でカフェファラオとサンライズノヴァの直後で狭くなって手綱を引く場面があったのが残念だった。インティは出遅れて後方からになったぶん、メンバー中最速の上がり(3F=38秒2)で直線前との差を詰めた。ソリストサンダーは向正面でのロスがなければ、インティはスタートでの出遅れがなければもしかして、と、それぞれ思わせる着差だった。

 前半、好位の内につけてうまく立ち回ったワイドファラオは3着インティから4馬身離されて4着。昨年はやはりメンバーと展開に恵まれた。

 カフェファラオは向正面の馬群の中からあまり行きっぷりがよくなく、カジノフォンテンが手応え十分に前をとらえにいった3〜4コーナーあたりではすでにムチが入っていて、そのあたりで勝負がついた。ジャパンダートダービー(7着)では「1コーナーでタイヤの跡に反応して逆手前でコーナーに入るミスステップがあった」ことや「今まで経験したことがないキックバック」などが敗因として語られたが、そもそも地方のダートが合わないのではないか。

2021/5/6 18:00

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます