「コンビニ弁当工場の仕事に嫌気が差して」酒クズ系VTuberの素顔

「金! 名声! 滅びよ人類!」という強烈なキャッチフレーズのバーチャルユーチューバー(以下、Vtuber)がいる。彼女の名は今酒ハクノ(いまさか・はくの)。2018年5月のデビュー以降着実にファンを増やし、現在はYouTubeチャンネル登録者数10万人を突破したのだ。

 本記事では、自ら「酒クズ系バーチャルYouTuber」を自称する彼女にインタビューを敢行。デビューまでの経緯や愛する酒についての想いなどを語ってもらった。

◆彼氏を寝取られ、非正規雇用の仕事を転々とするなかで見た“Vtuber”としての希望

——まずはデビューまでのご経歴についてお聞かせください。

 

ハクノ:永遠のアラサーで、酒クズのほうをしております。大学時代から演劇を続けていましたが、当時の交際相手を劇団内の別の女に寝取られた上、劇団員のほとんどが味方をしてくれなかったことにブチギレて以来、演劇には触れていません。その後は、ネットカフェの看板持ち、マナー最悪のジジイだらけな場末の雀荘メンバー、コンビニの工場で弁当に具材を乗せ続ける係など、非正規の仕事を転々としておりました。

——そこから一転してVtuberになられたのはどうしてですか?

ハクノ:「表現活動をしたいし、あわよくばそれで身を立てたい」という感情が残っていたからですかね。とはいえ、踏み出すのはためらっていました。ですが、応援していた音楽グループの「Linked Horizon」や「Dream Theater」のコンサートで、歳を重ねても己のやり方を貫く姿に奮い立ち、真剣に表現の世界に戻る決意が芽生えました。

やがて、2018年の初頭にキズナアイさんや輝夜月さんをきっかけにVtuberという存在を知りました。当初は縁遠い世界だと感じていたのですが、人間としての面白さで勝負をしているVTuberグループ「にじさんじ」の月ノ美兎さんや鈴鹿詩子さんらを目撃し、「この路線ならば!」と思いデビューしました。

——ハクノさんといえば、『-196℃ ストロングゼロ』(以下、ストゼロ)などの缶チューハイ系飲料を愛飲されていますよね。

ハクノ:正直、私のこの感情を“愛”と呼んでいいのかな。お金がなかったし、酒なんか酔えれば同じと「ストロング系」ばかり飲んでいたんです。酒を本当の意味で好きと思えたのは、Vtuberデビュー後だと思います。動画では酒をエンタメとして届けたかったので、真剣に味わってみたら味に個性があるのに気づかされ、自分にとっての酒の世界が彩りを持ち始めました。本当はビールが一番好きなんですが、「ストゼロ」とは悪友のような気持ちで今も付き合っていますよ!

◆動画で見せる驚異の「爆食」&「爆盛りトッピング」 きっかけはあのラーメン?

——動画では1.5kgの焼きそばや、1kgの唐揚げを苦しみながら食べる企画も多いですが、昔から結構食べるほうだったのでしょうか?

ハクノ:そうですね、昔は替え玉が10円のラーメン屋さんでどれだけ替え玉できるか後輩とバトルしたりしていました。人よりは身長も高くて容量もあったので、結構食べられたのかな。あんな食生活でも昔はガリガリだったので、代謝が良かったんでしょうね。今はぼんやりしていると体型がね……あと負担をかけ過ぎでよく胃を悪くしちゃうんですよ(笑)。

 

——動画で使いまくる“ニンニク”への愛はいつからなのでしょう?

ハクノ:ラーメン二郎インスパイアのラーメンを食べてからですね。「こんな中毒性のある食い物があるんか」とそこで“発見”しましたね、アブラとニンニクは多ければ多いほど幸せに直結すると! それ以降の人生は、基本的にニンニクの素晴らしさを人々に広め、人類を救済するために過ごしています。

◆単なる酒レビューじゃない! 努力で身につけたラップスキルと驚異のトーク力

——ハクノさんの動画はご自身で歌うテーマソングや、ほかのVTuberとバトル動画など、ラップへの愛が垣間見えますが、昔から好きだったんでしょうか?

ハクノ:マジで浅いですよ、私のラップ歴。『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)って番組からです。当時、ラップに縁遠かったオタク仲間たちが熱心に番組を見始めて「みんなおかしくなったのか?」と思い自分も見てみると、文脈を重んじて、心の底のリアルな言葉を格好よく聴かせる、私の知らない教養に基づく戦いの世界でした。

小さい頃にピアノをやっていて音楽経験はあったので「私もできるんじゃないか?」と挑戦した次第です。現在こんな姿勢でVtuber界を歩めているのは、やはりヒップホップマインドをインストールできたからなのかな。

——ハクノさんはラップ動画と同様に、普段のトークでも怒涛のマシンガントークが魅力ですよね。

ハクノ:喋り、本当に苦手だったんですよ。ド陰キャだったので。皆さんが私のトークを面白いなと思ってくださるなら、それは私がある程度練習したからです。演劇を始める前から「この世界で一番喋りが面白いのはプロのお笑い芸人だ」と、テレビに出ている面白い人の喋り方を真似して、抑揚のつけ方や間の取り方を取り込んでいきました。

今Vtuberやっている人で「お笑い芸人なんて……」とか思っている人がいるなら、今すぐその態度を改めた方がいいですよ! 先人から学ばせていただくことは多いです。

◆YouTubeのチャンネル登録者数10万人突破

——最後に、チャンネルの登録者数が10万人を突破したことと、今後の活動予定についてお聞かせください。

ハクノ:本当なら日々の生活と安酒で潰れていくだけだった人間が、今こんな風にインタビューしていただけるのはひとえに皆さんのお陰です。しかもそれが10万人とは、本当にありがたい話です。

ただ、私あんまりこの数字に実感が無いんですよ。誰か飲み屋さんで「今酒ハクノって面白いよなぁ~!」って話してくれませんかね。そしたら私の承認欲求も満たされるんですが。

今後は、まず酒を飲みます。その一方で、酒クズだからというより今酒ハクノだから、と愛してくれる人を増やしたいですね。己の芯が酒クズであるという自覚は持ちつつ、いろいろやっていきたいです。

——今酒ハクノの魅力は決してそのアンダードッグぶりだけではない。諦めない根性とたゆまぬ努力、そしてそのエンタメ精神にあるのだろう。<文/TND幽介(A4studio)>

2021/5/4 15:54

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