『呪術廻戦』七海建人が実力も実績も十分なのに、特級呪術師になれないワケ

 前回は『週刊少年ジャンプ』で好評連載中の『呪術廻戦』の中から、「伏黒恵がエリートで優秀なのに、イマイチ活躍できない理由」にお話しましたが、今回は「七海建人が特級呪術師になれないワケ」を紹介します。

◆周囲から信頼を集める七海建人

 七海はスーツとメガネ、七三分けがトレードマークの「1級呪術師」。作中最強の五条悟にも信頼されている実力者で、主人公の虎杖悠仁からも「ナナミン」という愛称で呼ばれて慕われています。

 呪術の極致といわれる「領域展開」こそ習得できていませんが、七海は絶大な威力を誇る「黒閃(こくせん)」の連続発生の記録保持者でした。

 黒閃という技は、打撃と呪力との誤差0.000001秒以内で相手に当てることで発生する絶大な威力を誇る技ですが、タイミングが難しすぎるため、意図的に狙って出すことはまず不可能といわれています。

 1回でも出せたらスゴイというこの技、虎杖が1日5回(うち4回は連続)の新記録を出すまでは、七海の1日4回が最高記録でした。

◆ゾーンに入ることで潜在能力を発揮

 なぜそんなに難しい技を4連続も成功できたのかについて七海自身が解説していますが、1度決めるとアスリートでいう「ゾーン状態」になり、呪力操作が呼吸のように自然とめぐるとのこと。

 このゾーン状態に入ることは高いパフォーマンスを発揮する上でとても有効なため、アスリートだけでなくビジネスの現場でも求められている大事な能力です。

 1度でも難しい技をゾーン状態に入ることにより、4連続を達成したことから七海はとんでもない実力者ということになります。

 そんな実力者であるのになぜ特級呪術師になれないのか。私なりに考えてみたところ、どうも七海の術式「十劃呪法(とおかくじゅほう)」に原因があるのではないかという結論に至りました。

◆実は「7:3」がベストではない

 十劃呪法とは、攻撃対象を「7:3」に線分し、強制的に弱点を作り出すことのできる術式です。

 簡単にいうと相手の身体を「7:3」の比率に分けて、その分け目が弱点となります。そこに正確に攻撃を当てることでクリティカルヒットとなり、格上の敵であっても大ダメージを与えられるという強力な技です。

 しかし、この比率に最大の問題がありました。「7:3」で分けると本当のクリティカルヒットにはなっていないのです。

◆「8:2の法則」とは?

 いったいどういうことか? 実は世の中の法則は「7:3」ではなく「8:2」に分けるほうが理に叶っていることがわかっています。

 これはイタリアの経済学者、ヴィルフレド・パレートが発見した法則で2割の要素が全体の8割を生み出しているというばらつきの状態を示すことから「80:20の法則」、「2:8の法則」、「ばらつきの法則」などとも呼ばれています。

 簡単にいうと「全体の中で重要な部分は2割で、そこが8割の効果を上げている」ということです。

 ビジネスの現場ではよく「売り上げの8割は、全体の2割の顧客が占めている」や「2割の労力で8割の成果を出す」などといわれているので聞いたことのある方も多いと思います。

◆「1割の雑味」が真価の発揮を阻害

 七海の十劃呪法はどうでしょう? 2割が重要なのにもかかわらず、七海は3割のポイントに弱点を作ってしまっているわけです。

 つまり重要な部分に1割の雑味が混ざっていることになります。これが真のクリティカルヒットとならない原因であると推察されます。

 この状態で戦い続けたため、戦いの最後は刀折れ矢尽きる状態となり、惜しくも敗退を余儀なくされてしまいました。

 もしかしたら名前が、七海(ナナミ)ではなく、八尼(ハチニ)だったら、十劃呪法が真のクリティカルヒットとなり、特級呪術師になれたのかもしれません。

◆「8:2の法則」は会話でも重要

 パレートの法則はビジネスやコンサルティングの現場でよく使われますが、ほかにも「8:2」の考え方はモテる男の会話術としても使えます。

 たとえば、女性に悩みごとを相談されたとしましょう。このとき、頑張って役に立とうと思ってペラペラとしゃべってしまうのはNG。

 なぜなら、そもそも女性は男性に問題を解決してほしいと思っていないことが多いものです。

 

◆明確な「解決」を求められないときもある

 悩みを相談されるとき、相手が望んでいるのは「解決」をしてもらうことではなく「共感」をしてほしいと思っていることが多くあります。

 ですから、頑張って解決しょうと話すのではなく、話を聴くのが8割、話すのが2割ぐらいのほうが「わかってる男」となるわけです。

 たとえば、「うちの飼ってる犬がいたずらして、ソファを噛んじゃうんだよね」などと聞いたとき、モテナイ君はすぐに「いたずら防止のグッズあるからそれ使いなよ」とか「ドッグトレーナーに預けたら?」などと言ってしまいます。

 そうすると相手は「そっか、ありがとう」とお礼を言っても、相手の心の中は「……」と微妙な状態になっています。

◆沈黙は「耐えるもの」ではない

 それでは、正しくは何というべきなのでしょうか? たとえば、「あー、それは困るね」とまずは相手の言っていることに共感し、その後に「いつも噛むの?」と聞けばいいのです。

 すると、相手は「ううん、でかけている時だけ、私が忙しくて遊んであげられないからいけないんだよね」などと言いながら、心の中では共感してもらえていることで喜んでくれるのです。

 もしかしたら読者の中には、会話の沈黙に耐えられないという人もいるかもしれませんが、無理に話す必要はありません。

 沈黙は耐えるものではなく、「会話の間を楽しむもの」と考えるとよいでしょう。

◆聞くのが8割、話すのは2割

 自分のことを話すよりも、相手は何を大事にしているのか、何を感じているのかに注目をするようにしてください。

 聞くのが8割、話すのは2割。これを心がけるだけで、コミュニケーションが格段にレベルアップをしていきます。

 そうすれば七海から「後は頼みます」と託されることでしょう。

<文/大森健巳>

【大森健巳】

ワールドクラスパートナーズ株式会社代表取締役。日本交渉協会特別顧問。短期間に変化の起きるビジネススキルの向上を目指すセミナーや講演会を行っている

2021/5/4 15:53

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