コロナ失業でホームレスになった50歳、本当に仕事が見つからない/コロナ禍の日本

 コロナ禍のまま2度目のゴールデンウイークに突入。これまで取材してきた新型コロナの影響が直撃し困ってる人々を今一度振り返りたいと思う。2020年4月28日掲載記事より、以前からギリギリの暮らしを続けていた生活困窮者たちの嘆き。ホームレスになった50歳の実態だ。

◆緊急事態宣言で面接が消え八方塞がりで路上生活に

 新型コロナウイルスの影響が急速に広まるなかで、各支援団体も動きだしている。4月11日に取材班が訪れたのは、東京都庁のふもとで開催されていた、「認定NPO法人もやい」と「新宿ごはんプラス」による食料配給と相談会だ。

 開始時間の14時になると100人ほどの参加者が行列をつくり、スタッフから次々と食料が配られていく。以前から路上生活だった人もいれば、新型コロナの影響で路上生活になった人も参加。両団体の代表を務める大西連氏によれば、「4月は毎週土曜日に定期開催しているが、これまでの炊き出しでは見なかった顔ぶれが2、3割参加している」という。

 その参加者の中で取材班が出会ったのが、今年に入ってから職を失い路上生活になったという、横田健二さん(仮名・50歳)だった。

◆コロナショックで警備の仕事がなくなる

 現在は上野公園で寝泊まりしているという横田さん。電車賃もなく、この日は歩いてきたという。

「昨年末までは働いていたキャバクラの従業員寮に住んでいたのですが、人間関係のトラブルで辞め、退職後は金銭的に家が借りられず、ホームレス状態になってしまいました。ただ、日雇いの警備の仕事をしていたので、少しでもお金があるうちはサウナに泊まっていたんです。

 けれど新型コロナの影響でそれもムリになって。なんとか頼み込んで知人の家で寝かせてもらうこともありますが、家主の都合もあるので毎日というわけにもいかず、今は野宿がメインですね」

 上野で野宿した際には先輩ホームレスから食料をもらったり、炊き出し情報も聞けたという横田さんだが、不自由な生活に変わりはないと続ける。

「さすがに何日かに一回は風呂に入りたいんで、たまに奮発してサウナに泊まっていたんですが、東京都から休業要請が出たのでそれもできなくなりそう。野宿で疲れると感染するリスクも高まるし、そもそも収入がないので病院にも行けないから怖いですよね」

 今後の見通しを聞くが「仕事がないので、まったく先のことを考えられない」と話す。

「肉体労働でいいから働きたくても、本当に仕事がないんです。警備員のアルバイトも、週末の自粛要請が出だした2月から軒並みキャンセルになり、その流れで僕ら警備員は事実上解雇。その後、ほかの面接が決まっていたんですが、面接会場に行ったら『緊急事態宣言が出たので、キャンセルになります。5月6日以降にまた問い合わせてください』と。

 どうやら携帯に電話してくれていたようなのですが、僕の携帯が止まっているので繫がらなかったんですね。少なくとも5月6日までは収入ゼロで過ごさないといけません」

 取材した4月11日からおよそ1か月、全財産の1万円で乗り切らないといけないという。

「だからこういう食料配布は本当にありがたくて。政府や東京都からは支援金が出ると言っていますが、なるべく早く欲しいです」

◆ついに生活保護受給者

 取材の数日後、公衆電話を使って横田さんから近況報告があった。別の団体の炊き出しに参加して健康診断をすると、血圧が200を超える異常値だったという。電話口からは「急いで役所に相談しに行き、生活保護になりました。ついに僕も受給者ですよ」と自嘲気味に笑う声がむなしく響いていた。

【「もやい」理事長・大西 連氏】

新宿ごはんプラス共同代表。日本国内の貧困問題や、生活困窮者への相談支援活動などに取り組む。著書に『絶望しないための貧困学』(ポプラ社)など

<取材・文/週刊SPA!編集部>

―[コロナ禍の日本]―

2021/5/4 8:30

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