カーシェアのマナー違反が深刻化。ゲロ臭やゴミ、爪や皮膚があったケースも

◆利用者増加と共にマナー違反も急増

 車が必要なとき、近場ですぐに借りられるカーシェア。昨年3月に公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団が調査し、同年6月に発表された日本でのカーシェア利用の割合は、車両ステーション数1万9119カ所(前年比10.9%増)、車両台数は4万290台(同15.2%増)、会員数は204万6581人(同25.8%増)と増加の一途だ。

 しかし、利用者が増える一方で問われるのは利用者のマナーだ。レンタカーとは違い、複数の連続シェアが発生する形になるため、次に利用する人のためを思って使わなければいけないサービスであるがゆえに、モラルがない人の次に利用してしまうと不愉快な思いをすることとなる。

◆ドアを開けた途端にゲロの匂いが……

 都内の会社員Aさんはカーシェアで強烈な「ハズレ」の経験を持つ。Aさんは一昨年の夏、友人達とグループで旅行に出かけるためにワゴンタイプの車をカーシェアを申し込み、実際にステーションに向かった。特に問題もなく、さあ出発とドアを開けたところ……

「ドアを開けた瞬間、ゲロの匂いがもわぁ〜として、衝撃のあまりよろめいた勢いで後ろにいた妻にぶつかってしまいました。あまりにも酷い匂いだったので『ゲロはどこだ!』と探したがゲロは見つからず。ただ、匂いの場所は後部座席のシートだとわかって、急いでカーシェア会社のヘルプダイヤルに電話しました」

 結局、その車は使用できなくなってしまったのだが、ステーションにはワゴンタイプの車がこの1台しかなく、代車を用意することはできないと伝えられてしまった。そのため、仕方なくカーシェアを諦めて隣駅にあるレンタカーを借りることになったという。

「後日カーシェア会社から連絡があり、原因は直前に利用していた家族のお子さんがゲロを吐いたそうです。その方は清掃をして大丈夫だろうと思いそのまま返却していたとか。ですが、染み込んだゲロの匂いは車の中で広がっており、ただゲロを拭き取るだけでは消えなかったんです。

 お陰でカーシェアよりも割高なレンタカーを利用するハメになり、手続きなどで時間もかかり出発は大幅に遅れました。もちろん、差額などの補償はナシ。カーシェア会社からは前運転者は退会処分にすると言われたんですが、まぁ、納得いかないですよね」

 カーシェアでは他の会員に迷惑となる行為をした場合、酷い場合は会員資格が停止となる。この場合は先に借りた人が返却時にきちんとカーシェア会社に子供がゲロをしたことを伝えておくべきであった。汚しても清掃すればよい、というものではないのだ。

◆動物の毛やゴミが散乱

 買い物などでよくカーシェアを利用する主婦のCさんはいくつか残念な車に出合った経験がある。

「車内に『毛』がそこら中に付いていたんです。毛といっても動物の毛。おまけにお菓子の袋やティッシュ、ペットボトルまでありました。さすがに酷かったのでカーシェア会社に連絡しました。人の食べかすや使ったティッシュって、触りたくないじゃないですか。おまけに動物の毛も……。あとから使う人のことを考えられないなら、使わないでほしいですよ」

 ほとんどのカーシェア会社の会員規約ではペットを乗せることは禁止事項である。ペットを乗せることはマナー違反と言うよりも、ルール違反である。にもかかわらず、清掃も片付けもせずにそのままにして返却する神経を疑ってしまう。

 またゴミの問題では、車内に残されたゴミだけでなく、カーシェアの駐車場近辺に不法投棄されるケースも問題となっている。カーシェアの駐車場横の一軒家に住む女性は怒り心頭だ。

「ゴミを駐車場にそのまま放置するだけじゃなくて、ウチの前とかにも置いていくんですよ。庭にペットボトルを投げ入れられたこともあります。一度、私がいる目の前でゴミを置いていこうとした家族がいたので怒鳴りつけてやりました」

 返却したら後は野となれ山となれとでも思っているのだろうか。自分の家の前にゴミが置かれたり、捨てられたらどんな気持ちになることか……想像力が欠如しているとしか思えない。

◆社内に散乱する爪と皮膚に思わず叫び声が……

 今回、カーシェアのマナー違反を取材していた中で最も強烈だったのが会社員のFさんのケースだろう。

「家族で出かけようと車のロックを開けたら、何か白っぽいものがシートの上や床に散らばっているんです。何だろうと思ってつまんだ妻が『キャーッ!』って、悲鳴を上げたんです。よく見ると、それは爪を切ったものと足の皮だったんです。いやぁ〜もう、気持ち悪かったですよ。

 すぐにセンターに電話して『爪や皮膚があるから代えてくれ!』ってキレ気味に伝えると、コールセンターの人が『え? 爪? 皮膚?』って絶句してました。そりゃ絶句しますよ。車内に爪が残ってるなんて、誰が想像できるんだって」

 結局、Fさんは別の車に乗り換えて出かけることができたのだが、「あれ以来、乗る前に隅々まで見てしまうクセがついた」と、軽いトラウマになっているという。

◆“自転車のマナー”のマナーが悪い利用者

 マナー違反によって迷惑を掛けるのは、先述の自宅前にゴミを捨てられた女性のように、なにも次に乗る人だけではない。カーシェアの駐車場近くに住む会社員のKさんは呆れ顔で利用者の自転車マナーについて話してくれた。

「近所のカーシェアは休日になると利用する連中が自転車で来るんです。その自転車を子供たちが遊ぶ公園の中や駐車場横の道路に路駐して邪魔だし危ないし……。車の話なのに“自転車のマナー”が酷い(苦笑)。その駐車場、自転車は入場禁止なのに、駐車場の中まで乗ってきてそこら中に置いてますからね。使ってる人のお里が知れますよ」

 自分さえよければ、このくらいなら大丈夫……その気持ちが迷惑を掛けていることに気づかぬ者が想像以上に多いということか。

◆放置物や汚れ、匂いはすぐに連絡が鉄則

 では、こうした前運転者が残したゴミなどのトラブルはどう対処すればいいのだろうか。編集部では大手カーシェア数社に問い合わせたのだが、コメントがもらえなかったり「自社のケース以外は答えられない」など、なぜかすこぶる対応が悪かった。そこで参考にしたいのが、カーシェア歴4年、今でも月に4〜6回ほど、公私にわたってカーシェアを利用するという会社員のDさんの話だ。

「まず、乗る前にゴミや汚れがないかは必ずチェック。残っていた場合は写メを撮っておきます。マットの泥やシートなどの酷い汚れやゲロなどの異臭がある場合はその場でカーシェアのコールセンターに電話して、事情を説明します。乗車後よりも乗車前に電話しておけば、前運転者のことだと明確に伝えられることができますから。自分のせいじゃないと、そのまま放置して返却すれば、次に乗った人からクレームが入ったら自分のせいじゃなくても、ペナルティが発生する可能性があります。

 私も子供が車内でゲロを吐いて、大変なことになったことがあるのですが、その際もすぐに電話して事情を説明しました。匂いによっては車内清掃が入ることなどで、次の人の予約が取消しになることもあります。そうなると、規約にもよりますが、退会や利用停止などのキツいペナルティが課せられることもあるようです。

 私の場合、返却前に徹底して清掃して返したのですが、後日、カーシェアの会社から『車内はキレイにしていただいており、匂いもなかったため今回は特にペナルティはありません』と連絡があったこともあります」

 Dさんによれば、とにかく「すぐ連絡」と「自分も汚さない」ことが快適に利用するカギだという。

◆カーシェアは良心で成り立っている

 カーシェアは会員利用者が良心とマナーを持っていることが大前提の仕組みだ。汚したら掃除する、ちゃんと連絡する。規約で禁止されていることには理由があるのでちゃんと守る。カーシェアのステーションは駐輪場ではない……何か当たり前のことを書いているので少々バカバカしくなるが、こういったことができない利用者が増えているのも事実である。

〈取材・文/谷川一球〉

【谷川一球】

愛知県出身。スポーツからグルメ、医療、ギャンブルまで幅広い分野の記事を執筆する40代半ばのフリーライター。

2021/5/2 15:53

この記事のみんなのコメント

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  • 今はカーシェア避けたほうがいいと思う。コロナにかかったら最悪じゃん。接触感染もあるわけだしね。

  • う~ん。現代の日本の場合、『ペットは動物ではなく家族だから、乗せるのが当たり前でしょう』ってことらしいから、動物の毛のアレルギー持ちは諦めるしかないらしいよ(^_^;)家族らしいから、神社とかにも平気で入れるしw因みに海外は日本人が思っているより、ペット飼っている家って少ないんだよねぇ……。でも、日本人は平気で高値のペットを購入してくれるから、情報操作してでも売り付けたい国々が多々あるとか……。

  • 子供の時、車で急に吐いた事は経験ある※修学旅行のバスでだけど!、吐きたくて吐く訳じゃないからなぁ※けど後始末は困るよね※、バス会社の人も大変だろなあ※

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