剣心と巴のラブストーリーと『るろうに剣心 最終章 The Final・The Beginning』大友啓史監督が思いを語る

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『るろうに剣心 最終章 The Final』、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が連続公開されます。描かれているのは主演の佐藤健が「絶対に演じたい」と熱望してきたエピソードで、シリーズ史上最恐の敵となる縁役を新田真剣佑が演じています。メガホンをとった大友啓史監督に作品やキャストに対する思いをうかがいました。

<作品概要>

原作は「週刊少年ジャンプ」に連載され、累計発行部数7200万部を超える和月伸宏作の人気コミック「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」。大友啓史監督が2012年に佐藤健を主演に迎えて実写映画化し、大ヒットを記録した『るろうに剣心』はその後シリーズ化され、2014年には『るろうに剣心 京都大火編』、『るろうに剣心 伝説の最期編』が作られた。『るろうに剣心 最終章 The Final』はシリーズ最終章2部作の1つ。最恐の敵・雪代縁との戦いを描く。

緋村剣心役の佐藤健、神谷薫役の武井咲、相楽左之助役の青木崇高、高荷恵役の蒼井優、斎藤一役の江口洋介らレギュラー俳優陣が集結。新キャストにシリーズ史上最恐の敵となる縁役として新田真剣佑、かつての剣心の妻で、剣心が不殺の誓いを立てる理由となった女性・雪代巴役を有村架純が演じる。

<あらすじ>

かつて〈人斬り抜刀斎〉として恐れられ、激動の幕末を刀一本で戦い抜いた男、緋村剣心。新時代を迎え、二度と人を殺さないと誓う。斬れない逆刃刀に持ち替え、日本転覆を狙った志々雄真実をはじめ数々の敵との死闘を乗り越えた今は、仲間たちと平穏な日々を送っていた。

しかしある日、東京が何者かに攻撃され、次々と大切な人々がおそわれた剣心は、次第に追い詰められていく。憔悴しきった彼の前に現れたのは、あの志々雄真実に武器や軍艦を送り込んでいた上海マフィアの頭目・雪代 縁。剣心の〈十字傷の謎〉を知る彼こそが、剣心自ら生み出してしまった最恐最悪の敵だった。剣心に強烈な恨みを持ち、剣心だけではなく〈剣心が作った新時代〉をも破壊するため人誅(じんちゅう)を仕掛けてくる!

一体なぜ? 何のために? すべてを悟った剣心は「自分のせいでござる」と、薫や仲間たちを集め語り始める。それは、剣心の過去に大きく関係し、決して消えることのない十字傷の謎へとつながっていく。それは、今まで明かされることがなかった<十字傷>の謎に迫る「るろうに剣心 最終章 The Beginning」へ続いていく。動乱の幕末期と明治維新後の新時代の2つの時代を通して描く!2つの作品を通して描かれる「るろうに剣心」史上最高のクライマックス。「るろうに剣心」のすべてがここにある――。

自粛期間に音圧を減らし、作品を少し優しい印象に

――今のお気持ちをお聞かせください。

これまでは撮った後にポスプロやって、完成してすぐ公開という流れで映画を作ってきました。それが昨年の夏に公開が飛んでしまい、中途半端な時間ができて、生理的なズレみたいなものが生じたのです。制作自体が大変だった作品ですし、とにかく早く見てほしいという気持ちです。

――公開まで時間が空いたことで、作品に手を加えたりされましたか。

撮影時は『The Final』の公開日がオリンピックと重なっていたので、“オリンピックがライバル”と思って撮っていました。フィクションが作り出す感動も本物のアスリートたちが生み出す感動に負けないくらいすごいんだと示したかったのです。

それほどまでの熱量で作ったにも関わらず、まずオリンピックが延期になり、その後、映画も公開延期が決まり、コロナ禍の中上映するエンタメになってしまった。自粛時間に僕自身が、どこか内省的になったくらいだから、受け止める側の感覚も変わっているかもしれない。純粋にアクションエンターテインメント超大作ということを全面に押し出して、インパクトを重視した仕上がりになっていたけれど、剣心と彼が愛した女性・巴とのラブストーリーというテイストを多少強めた方がお客さんに届くのではないかと気持ちが変わったのです。

そこで、完成していた作品から強い抽象音等を抜き、音のレベルやバランスも多少整えて、お客さんが感じるであろう音圧を減らし、ほんの少しですが優しい印象に変えました。すると試写を観たスタッフや多くの人から「以前と比べて何か変わりましたね」と言われたのです。どう変わったように感じたのかを尋ねると、「ラブストーリー色が強まった」という答えが、思いの他多くて。凄く良くなった、と。そう感じる人が多かったんですね。映像としてはほとんど同じだけれど、相対的な印象として観客にも些細なその変化がちゃんと届くかもしれない、そう確信しました。そういう細やかな修正をこの期間に施しました。

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会

緋色の着物に袖を通した瞬間、健はもう剣心に戻っていた

――今回は剣心の内面的な部分もクローズアップされています。佐藤さんとどのように剣心の内面を作り上げていったのでしょうか。

健は子どもの頃から原作を読み、アニメも見ていたので、緋村剣心に対してものすごく共感して演じています。だから剣心の役作りについて、改めて話す必要はない。衣装合わせで緋色の着物に袖を通した瞬間、健はもう剣心に戻っていましたから。僕らが何か言わなくても彼の中の剣心が目覚め始めたのがわかり、5年間の空白を一気に乗り越えた気がしました。

いろんな愛情や覚悟を背負って演じてきた役ですから、健の心の奥底に沁みついていて、何か動き出した瞬間にそちらの方向に走っていく剣心像が彼の中に生じるのでしょうね。こちらが環境をしっかり整えれば、健はその意図を汲んだ上で必ず応えてくれる。基本的にはそれを信じて、健の背中をしっかり押していけば間違いないと思っていました。

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会

――佐藤さんは監督との対談で、1作目から巴を内包して演じていたと言っていました。監督も巴を意識してこれまでも撮っていらしたのでしょうか。

剣心という人物の生き方のベースには巴との出来事がある。剣心が何を考え、どう動き、何を語るのか。脚本を書きながらふっと、剣心にとって巴との時間がどういうものだったんだろうかということを思い浮かべることはこれまで何度かありました。

――原作の剣心は30歳くらい。佐藤さんがその年齢に近づきましたね。

肉体的には明治の剣心より幕末の人斬り抜刀斎の方が若いけれど、人は年齢だけで老いるわけではありません。心が豊かな楽しい暮らしをしていれば若く見え、辛い経験をしていれば老けて見えたりします。

ほっとして快活な、明治を生きる剣心を演じるには22歳の佐藤健がぴったりでした。そこで剣心のベースを作って、今回、最後に『The Beginning』の剣心を30代の佐藤健が演じるというのはものすごくいいタイミングになったのではないかと思います。健なりの時間と経験を積んできている今の方が巴や剣心の気持ちが理解できるだろうし、巴との出来事に対する読みも間違いなく深い。いきなり『The Beginning』の剣心にはなれない、難しい役ですし、神様がくれたタイミングだと思います。

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会

『The Final』と『The Beginning』はコインでいうと裏表になる

――『The Final』がきっちりと素晴らしい終わり方をしていたので、始まりを意味する『The Beginning』を後から見ると中途半端な気持ちになってしまう人もいるのではないかと気になっています。

確かに物語としては『The Final』で区切りがつきます。一方『The Beginning』は順番としては「5作品目」になりますが、僕らは作りながら「(エピソード)0」と呼んでいました。『The Beginning』は緋村剣心の物語ではなく、幕末を舞台にした“人斬り抜刀斎”の物語です。新時代の到来のため、剣心ならぬ“抜刀斎”は自らの気持ちを抑え、ばさばさと人を斬って、その分だけ血が流れます。返り血を浴び、京都の闇夜を震撼させた凄みがあります。続編ではなく、まったく違う物語として見てください。

ただ、『The Beginning』は『The Final』の中で描かれていた剣心の過去、具体的には彼の底にある悲しみや頬の十字傷の意味、縁が剣心を恨む理由、剣心が逆刃刀を振るう理由をより深く知ることができる物語で、この2作品はコインでいうと裏表になる映画です。『The Beginning』はまったく別物として見てもらいながら、『The Final』の感動を新たにし、より大きくするための作品だと僕は思っています。

――1作目の『るろうに剣心』にも人斬り抜刀斎としての剣心が出てきますが、もっと凄みがあるのでしょうか。

もっと凄みのある抜刀斎が作品を通して描かれています。しかもそれが巴とのラブストーリーに繋がっていく。剣心のいちばんプライベートな側面が見られる作品です。逆刃刀を手にして「二度と人を斬らない」と誓い、人にやさしい“おろ”剣心のこれまで語られてこなかったルーツをより深く知ることができるので、そこを楽しんでほしい。

『The Beginning』で剣心が心の奥底に抱えている歴史と想いを知った上で、もう一度、1作目の『るろうに剣心』に戻ってもらうと、より剣心を理解できるし、剣心の人間的な魅力が分かるはず。タイトルを『The Beginning』にした意味はそこにあります。

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会

新田真剣佑は世界レベルの俳優になるはず

――前作で藤原竜也さんが演じた志々雄真実が圧倒的な存在感を発揮していましたが、今回、新田真剣佑が演じた縁もそれに負けないくらい強烈な印象を残しますね。新田真剣佑さんをキャスティングした決め手をお聞かせください。

マッケンには企画が動き始めてすぐ、2017年くらいに会いました。撮影に入る1年以上前でしたが、一目惚れでしたね。眼差しがきれいで、体幹が強そう。演じるためには努力を惜しまないと公言している。しかもフレッシュ。海外暮らしも経験しているし、演技力がある。会った直後に「最高だね。もう決まりでしょ」とプロデューサーに話し、一発で決まりました。

――新田真剣佑さんは現場でいかがでしたか。

うちの(「るろうに剣心」)チームが要求するアクションはかなりレベルが高いのですが、それにちゃんとついてきました。さすがに今回は自分の人生の中でいちばん辛い撮影だったと言っていましたけれどね(笑)。しかもデリケートな芝居の表現力を持っていました。どちらか1つならクリアできる人はいるけれど、どちらもできる人はなかなかいません。

最近、韓国の俳優が世界で人気なのは、体躯で西洋の俳優と張り合えるから。マッケンもそれに匹敵する体躯を持ち、華があり、高いアクション能力を備えている。世界レベルの俳優になる人を久しぶりに見た気がしました。

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会

――オープニングからいきなり新田真剣佑さんのアクションが全開ですね。

マッケンの素晴らしさをお披露目するためです。最初に会ったときに、「舞台は用意する。だから、この作品の前にアクションを見せないでくれ」とマッケンに言ったんですよ。彼も自分のアクションをお披露目する舞台としてこの作品を選んでくれ、それまではアクションを封印してきました。この作品の公開が延期になったので、『ブレイブ 群青戦記』が先に公開となってしまいましたけれどね。自分のアクションに関わる身体的なポテンシャルをすべて、この作品で発揮してくれてました。

剣心と縁の感情がどう交差し、決着するのかが見どころ

――1作目の『るろうに剣心』で佐藤健さんのアクションに驚いたのを思い出しました。

僕たちは1作目の『るろうに剣心』で佐藤健が演じる緋村剣心という日本映画の新しいヒーローを世間がびっくりするくらいセンセーショナルにデビューをさせました。剣心は華奢なイケメンだけれど、信じられないくらい強くて優しい。しかし残酷な部分を過去に持っていた。そのギャップを“おろ”という口癖を持つキャラクターが表現する。そこに作品の面白さを感じてくれた方が多かったですね。

――その2人の決戦はアクションだけでなく、内面的な葛藤も表現され、見応えがありました。

剣心は自分のことを殺しに来た相手であっても絶対に殺さない。不殺の誓いの証である逆刃刀で相手の思いを受け止めながら、逆刃刀を振るって間違いを正していくという戦い方をしてきました。マッケンが演じた縁の存在が大きければ大きいほど、それに比例して受け止める剣心も大きく見えてきます。つまり、今回のキーマンは新しく入ってくるマッケンだったのです。

そこをどう魅力的に作り込むことができるか。クライマックスは姉を殺された弟と自らの手で妻を殺めてしまった剣心という義理の兄弟が戦いを通してお互いの思いを知っていく。アクションだけでなく、2人の感情がどう交差し、決着するのかが見どころになっています。

剣心を演じ続けてきた健は本当にすごい。それはみんな分かっているので、今回はマッケンに勝負を賭けました。マッケンはアクションだけでなく、お芝居も素晴らしかったです。

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会

――最後にひとことお願いします。

(公開延期前は)お客さんに見てもらえないことがこんなにフラストレーションになるとは思いませんでした。映画はお客さんに見てもらって完成するものだとこの1年で痛感しました。ご覧になったら、どんな方法でもいいので、ぜひ感想を聞かせてください。よろしくお願いします。

(取材・文:ほりきみき)

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会

<プロフィール>

大友啓史(おおとも けいし)監督

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会

1966年生まれ、岩手県出身。慶應義塾大学法学部卒業。1990年にNHKに入局し、連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズ(01~04)、「ハゲタカ」(07)、「白洲次郎」(09)、大河ドラマ「龍馬伝」(10)などを演出、イタリア賞はじめ国内外の賞を多数受賞する。2009年、『ハゲタカ』で映画監督デビュー。2011年5月に独立し、『るろうに剣心』(12)、『プラチナデータ』(13)、『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14)の2部作を手がける。『るろうに剣心』シリーズは世界50か国以上で公開され、3部作の累計興行収入が125億円を突破、大ヒットとなる。その後も、『秘密 THE TOP SECRET』『ミュージアム』(16)、『3月のライオン 前編/後編』(17)、『億男』(18)、『影裏』(20)と話題作を次々と世に送り出す。2017年より、「OFFICE Oplus」を新たに立ち上げ、海外での映像制作も視野に活動を広げている。

『るろうに剣心 最終章 The Final』

©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会

出演:佐藤健/武井 咲 新田真剣佑/青木崇高 蒼井 優 伊勢谷友介 土屋太鳳/三浦涼介 音尾琢真 鶴見辰吾 中原丈雄 北村一輝 /有村架純 江口洋介
監督・脚本:大友啓史
撮影監督:石坂拓郎 
照明:平野勝利 
美術:橋本 創
装飾:渡辺大智 
録音:湯脇房雄 
編集:今井 剛
VFXスーパーバイザー:小坂一順
配給:ワーナー・ブラザース映画
©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/ The Beginning」製作委員会
2020年/138分/日本/シネマスコープサイズ
4月23日(金)全国ロードショー

映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』公式サイト

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