松坂桃李が語ってくれた、ナイトルーティンとは? 日常で大切にしている小さなこと
俳優・松坂桃李、32歳。
183cmの長身に整った容姿。ある意味、現実味のないビジュアルだ。
だが、インタビューすると、誰かが決めたストーリーではなく、ひとりの男として「リアル」な日常を過ごす彼の姿があった。
昨年は、日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞に輝き、名実ともに大きな評価を受けた松坂さん。
その先に見据える目標とは、一体何なのだろうか?
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松坂桃李さんにとって、「32歳」ってどういう年齢ですか?
「無音でもいいですか?」
撮影前、松坂桃李さんに何か音楽をかけるか提案した時に返ってきた言葉だ。無音に緊張感が漂う現場もあるが、心配は無用だった。
「普段は焼酎が好きです」
「うちは飲みながら料理します」
「中3の時に身長がぐんと伸びて」
被写体の穏やかな会話とともに、撮影が進んでいく。無音を心地よく感じさせる優しい雰囲気が、現場を包み込んでいた。
そんな彼が、32歳になった日にあげた固定ツイートに、気になる言葉があった。
〝第2章 宜しくお願い致します〞
なぜ32歳の日に?どういう意味で、第二章なのか。
「この仕事の第二章という気持ちです。32歳になる年に、日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞をいただいて、そこからが次のステージだと思ったんです。
受賞の瞬間は心から嬉しくて、あぁよかった!と安堵しました。でも、そういう感情は一瞬で、檀上から降りたらもう過去の出来事みたいになっていました。
階段を降り始めてからは、次のことを考えていた感じです」
「自分の価値を上げるために、わかりやすい評価が必要だった。評価されれば、自分のやりたいことに出合いやすくなると思うから」
壇上から降りる一歩目が、松坂桃李の第二章の始まり。
賞を手にした次の瞬間に前を見据えたのは、評価がゴールではないからだ。
「役者の仕事は実態があまりないというか、形になるものが他の仕事と比べて曖昧。そのなかで、賞は分かりやすい実績のひとつです。
もちろん賞が絶対ではないですし、受賞に関係なく素晴らしいものもたくさんあります。
でも、僕は賞で自分の価値を上げたかった。賞をとることで、自分の求めている作品や撮られたい監督に出合いやすくなると思ったからです。チャンスを多くするために、そういう目標も達成しなきゃいけないと思って、やってきました」
「パフォーマンスや集中力が上がる気がします」松坂桃李さんが毎日必ず行っていることとは?
彼のモチベーションは、いい作品に出たいという演技への欲求だった。
これは、どの仕事においても強い人のスタンスだろう。
例えば、自分が望む評価を得られないという悩みも、初期設定を変えれば解消する。
「評価がゴールになってしまうと、評価を受けられなかった時にすごく憂鬱な気持ちになると思うんですよ。
でも、評価によって将来これができると、ひとつの過程と捉えていれば、そこに執着しなくて済む気がします。
評価を得られたあと何をしたいか分かっていたら、上手くいかないことがあっても、違う方向から頑張ったらいいかと、人目は気にならなくなるはず」
湯船で汗をかく、25時には寝る。小さなことの積み重ねが大切
松坂さんには、「小さな目標を何個も作って、気づいたら最終的な目標にいる」という理想がある。
仕事に関係なくてもいい。達成できそうなハードルであることが大事。
その目標を、ひとつ教えてもらった。
「どんなに疲れていても、必ず湯船に浸かって、しっかり汗をかく(笑)。
普通の人からしたら〝それのどこが凄いの?〞と思ったりすることを、自分のルーティンとして少しずつやっています。意外と毎日って難しいんですよ。
でも一度習慣化すると、よっこらしょ、しなくてもできるようになる。そうすると、全体がうまく整うというか、パフォーマンス力や集中力が上がる気がします」
お風呂について話す彼は、本当に今夏公開の『孤狼の血 LEVEL2』のポスターの松坂桃李と同一人物なのかとふと思う。
あまりの人相の違いに、やはりルーティンが効いていると思わざるを得ない。
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■プロフィール
松坂桃李 1988年生まれ、神奈川県出身。2009年に俳優デビュー。2018年公開『孤狼の血』で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞受賞。2019年公開『新聞記者』で同賞の最優秀主演男優賞受賞。今年は『孤狼の血 LEVEL2』(8月20日公開)と『空白』が公開予定
■Information
『あのときキスしておけば』
松坂さん演じる壊滅的にポンコツなスーパーの従業員が漫画作者(麻生久美子)と出会い恋に落ちる。しかし、彼女の中身が見知らぬおじさんに入れ替わる前代未聞のラブコメディ。4月30日から毎週金曜23:15~(テレビ朝日系)
『今ここにある危機とぼくの好感度について』
イケメンアナウンサーが名門大学の広報に転職。しかし、次々と不祥事対応に追われていく。現代社会の矛盾とそこに生きる人々の悲哀を描くブラックコメディ。松坂さん主演。4月24日から毎週土曜21:00~(NHK総合)
■衣装
スーツ 418,000円、シャツ 45,100円、ネクタイ 25,300円〈エルメネジルド ゼニア/ゼニア カスタマーサービス TEL:03-5114-5300〉、その他/スタイリスト私物