35歳で会社を辞め海外へ。43歳で資産3000万円を突破できたワケ

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今、労働に縛られずに自由な生活を夢見る人が増えている。欧米を中心に世界的流行を見せる「FIRE」理論は「節約し、カネを貯め、そのカネを投資に回し、カネにカネを稼いでもらい早期リタイアする」というもの。FIRE達成には、まとまった額の資産が必要とされるが、リタイア後もある程度働き、発展途上国を選ぶなら、そのハードルはぐんと下がる。

◆年200万円の生活費でもタイなら余裕のある暮らしが可能

 そんな一例としてご紹介したいのが、タイの首都バンコクで独身セミリタイア生活を送る飯田太郎氏(仮名・43歳)だ。

「35歳までは東京の広告代理店の正社員でした。毎日の超満員電車に揺られた通勤があと30年続くのか……と思ったら末恐ろしくなりました。人生一度きりだし、東京で苦しい生活に埋もれたくないと、貯金300万円を片手に会社を辞めて日本を飛び出しました」

 英語を習得しようと世界一周し、実は日本並みに起業が容易なシンガポールに落ち着いた。

「世界一周でビジネス基礎英語を訓練、会社員時代に社用でひと通りビジネス中国語もマスターしていたので、華人の国シンガポールを選びました。英語と中国語ができる日本人として、当地への進出を計画している日本企業に向け、シンガポールで会社設立支援サービスを始めたんです」

◆シンガポールは物価が高く…

 そして会社設立から3年がたち、実績も50社を超え事業が軌道に乗り、手元の資金に余裕が生まれたところで、シンガポールの株式への課税ゼロ制度を生かし投資をスタートさせた。

「投資はすべて海外の株式。資産の4割が米国のインデックスファンドで、3割が米国株の個別銘柄です。残りは今後成長が期待される、ベトナムやインドなどアジアの新興国の投資信託と一部個別株です」

 一見順調だったシンガポール生活からタイへの再移住の契機は、両国の物価水準のあまりのギャップだった。

「シンガポールで外食するとビール1杯800円と高く、一人暮らしをしたいなら家賃30万円ほどから。その点、タイではローカル居酒屋で友人と飲み食いしても一人1000円程度だし、24時間遊ぶ場所にも事欠かない。つましい生活を心がけて、毎月20万円ほど稼げば、心身ともに十分豊かな暮らしができる。“微笑みの国”と呼ばれるタイですが、本当に笑顔になれる国です」

 かくして飯田氏は、シンガポールで増やした資産1800万円とともに、’19年にタイへ移住。タイへ進出する日本企業の支援や、日本人のタイ移住支援の仕事の成績も好調で、自身の資産も3000万円を突破。タイでの完全FIREも見えてきたという。

◆経済的自立と早期リタイアは日本人に合うのか?

 日本での現実的なFIREの可能性を探ってきたが、資産運用に詳しい実業家の内藤忍氏は、経済的自立を達成すれば、フリーランスなど会社に縛られない生き方が可能になるという。

「業務委託契約が多くなれば、実力がある人の労働の成果は、賃金に反映されます。仕事の境界線が明確になり、緊張感も生まれるので全体の生産性向上は間違いない。これまでのようにデキる人が生産性の低い人のカバーをしなくてよくなります」

 ただ、経済的自立後の「完全リタイア」には否定的だ。

「経済的自立は、食べていくための『ライスワーク』から解放される点で意義があります。しかし、リタイア後には消費行為でしか社会との接点がなくなり、達成感や自己承認欲求が満たされなくなる人も多い。それを避けるためにも自分の夢や目標のための『ライフワーク』を追求して、ある程度働くことは必要だと思いますね」

◆多くの人が投資に参加することで経済は活性化する

 仮に日本のサラリーマンの大多数が「FIRE」を目指し、節約や投資を行うと国内経済には影響はあるのだろうか。

「節約が縮小均衡に繋がるとは限りません。本当に必要な、意味のあるものをみんなが買うようになれば変なものを作る会社が減り、いい商品やサービスを提供する会社が残っていきますから、社会的にもプラスの効果を与えるはずです」

 また、多くの人が投資に参加することで経済は活性化すると内藤氏は指摘する。

「投資とは社会的に意義のあるところにお金が集まり、それによって経済が成長していく仕組み。投資をする人たちの総意によって経済社会の方向性が決まるので、FIREは、日本経済にとってかなりポジティブな要素です」

「ライスワーク」から「ライフワーク」への転換が肝要となってくる。心の余裕と生きがいのある世界が、FIREの先に待っているのだ。

【内藤 忍氏】
マネックス証券の創業などを経て現在、株式会社資産設計実践会代表。著書に『初めての人のための資産運用ガイド』など40冊以上

<取材・文/武馬怜子・沼澤典史(清談社)>

―[セミリタイアする技術]―


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