感染対策も万全『アカシアの雨が降る時』5月から公演/鴻上尚史
―[連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史>]―
◆感染対策も万全『アカシアの雨が降る時』5月から公演
5月に『アカシアの雨が降る時』という芝居をやります。
今日、二回目のPCR検査の結果、キャスト・スタッフ全員が陰性だったという報告をプロデューサーから受けて、ホッとした空気が稽古場に流れました。
去年11月、『ハルシオン・デイズ2020』の時には、稽古と上演の間、計6回、2週間おきにPCR検査を受けて、毎回、「なんとか生き延びた」と思いながら、上演を終わらせました。
それから半年たって、また同じことをするとは、夢にも思いませんでした。
去年、僕は自分の40年に渡る演出家人生の中で、こんなに空席を見たことがない、という経験をしました。
客席を見るたびに、身を切られるような感覚になりました。
なにより、多くの空席の前で演技をしなければいけない俳優達に、本当に申し訳ないと思いました。
空席が目立つ客席でも、演技のモチベーションを落とさない努力を続けている俳優に、頭が下がりました。
そして、コロナ禍に、わざわざ劇場まで来てくれた観客の人達にも深く感謝しました。
◆「演劇人は演劇を作ってお客さんに提供するのが仕事ですから」
あの時、こんな経験は、もう終わりにしたいと思いました。
けれど、今年もまた、同じことをしなければいけなくなっています。
稽古場の床も机も椅子も小道具も、毎日、消毒し、PCR検査をしてない人はどんな人も稽古場には入れないようにし、一時間に一回、換気し、密にならないように出演者やスタッフを少数精鋭にして、なんとか千秋楽まで、公演を実現しようとしています。
「赤字になる可能性が高いのに、どうしてするんですか?」と聞かれてしまいました。
去年から、何度か同じ答えを繰り返しています。
「八百屋さんが野菜を売るのが、パン屋さんがパンを売るのが仕事のように、演劇人は演劇を作ってお客さんに提供するのが仕事ですから」
そうとしか、答えようがありません。
◆認知症で記憶が逆行、70歳から20歳に
『アカシアの雨が降る時』は、登場人物は3人です。
まずは、70歳の香寿美という役で久野綾希子さん。
久野さんは、劇団四季で数々の主役を演じて、ぶいぶい言わせたミュージカル界の「歌う伝説」ですが、2年前、『ローリング・ソング』で初めてご一緒した時に、素敵なコメディエンヌだということが分かりました。
歌えて、演技ができて、笑いができるなんて、なんて素敵なの、とまた出演をお願いしました。
久野さんの演じる女性は、70歳で認知症になり、自分のことを20歳だと思い込みます。
認知症では、最近の記憶がなくなり、自分が一番輝いていた時代の記憶が現れる、というのは珍しくないのです。ただし、彼女の記憶は、1972年。つまりは、「恋と革命」の輝きが失われ、時代が黄昏始めた時期です。
彼女の息子役に、劇団カムカムミニキーナの演出家であり俳優の松村武さん。ものすごく芸達者です。
そして、彼の息子、久野さんから見ると孫には、2.5次元ミュージカルなどで最近期待の若手、前田隆太朗君。
◆万全の感染対策でお迎えします
久野さん演じる香寿美は、孫の顔が自分の夫とそっくりなので、結婚前の、自分の恋人だと思い込んでしまうのです。
物語は、彼女が一時的に倒れ、入院した病院から始まります。
意識を回復した香寿美は、自分のことを20歳だと思い、20歳の時に、どうしても実現できなくて、ずっと心の奥底に残っていた「ある目的」のために、病院を抜け出します。
おばあちゃんが大好きな孫は、心配でついていきます。
でも、香寿美にとっては、それは孫ではなく、やがて結婚する交際相手であり、自分の「ある目的」には、反対するに決まっている古風な男性なのです。
久野さんと前田君なので、何曲か歌ってもらおうと思っています。
こんな状況ですが、もし、よろしければ、劇場でお会いできたらと思います。万全の感染対策でお迎えします。5月15日から6月13日までです。詳しくは、タイトルでググって下さい。
―[連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史>]―
◆感染対策も万全『アカシアの雨が降る時』5月から公演
5月に『アカシアの雨が降る時』という芝居をやります。
今日、二回目のPCR検査の結果、キャスト・スタッフ全員が陰性だったという報告をプロデューサーから受けて、ホッとした空気が稽古場に流れました。
去年11月、『ハルシオン・デイズ2020』の時には、稽古と上演の間、計6回、2週間おきにPCR検査を受けて、毎回、「なんとか生き延びた」と思いながら、上演を終わらせました。
それから半年たって、また同じことをするとは、夢にも思いませんでした。
去年、僕は自分の40年に渡る演出家人生の中で、こんなに空席を見たことがない、という経験をしました。
客席を見るたびに、身を切られるような感覚になりました。
なにより、多くの空席の前で演技をしなければいけない俳優達に、本当に申し訳ないと思いました。
空席が目立つ客席でも、演技のモチベーションを落とさない努力を続けている俳優に、頭が下がりました。
そして、コロナ禍に、わざわざ劇場まで来てくれた観客の人達にも深く感謝しました。
◆「演劇人は演劇を作ってお客さんに提供するのが仕事ですから」
あの時、こんな経験は、もう終わりにしたいと思いました。
けれど、今年もまた、同じことをしなければいけなくなっています。
稽古場の床も机も椅子も小道具も、毎日、消毒し、PCR検査をしてない人はどんな人も稽古場には入れないようにし、一時間に一回、換気し、密にならないように出演者やスタッフを少数精鋭にして、なんとか千秋楽まで、公演を実現しようとしています。
「赤字になる可能性が高いのに、どうしてするんですか?」と聞かれてしまいました。
去年から、何度か同じ答えを繰り返しています。
「八百屋さんが野菜を売るのが、パン屋さんがパンを売るのが仕事のように、演劇人は演劇を作ってお客さんに提供するのが仕事ですから」
そうとしか、答えようがありません。
◆認知症で記憶が逆行、70歳から20歳に
『アカシアの雨が降る時』は、登場人物は3人です。
まずは、70歳の香寿美という役で久野綾希子さん。
久野さんは、劇団四季で数々の主役を演じて、ぶいぶい言わせたミュージカル界の「歌う伝説」ですが、2年前、『ローリング・ソング』で初めてご一緒した時に、素敵なコメディエンヌだということが分かりました。
歌えて、演技ができて、笑いができるなんて、なんて素敵なの、とまた出演をお願いしました。
久野さんの演じる女性は、70歳で認知症になり、自分のことを20歳だと思い込みます。
認知症では、最近の記憶がなくなり、自分が一番輝いていた時代の記憶が現れる、というのは珍しくないのです。ただし、彼女の記憶は、1972年。つまりは、「恋と革命」の輝きが失われ、時代が黄昏始めた時期です。
彼女の息子役に、劇団カムカムミニキーナの演出家であり俳優の松村武さん。ものすごく芸達者です。
そして、彼の息子、久野さんから見ると孫には、2.5次元ミュージカルなどで最近期待の若手、前田隆太朗君。
◆万全の感染対策でお迎えします
久野さん演じる香寿美は、孫の顔が自分の夫とそっくりなので、結婚前の、自分の恋人だと思い込んでしまうのです。
物語は、彼女が一時的に倒れ、入院した病院から始まります。
意識を回復した香寿美は、自分のことを20歳だと思い、20歳の時に、どうしても実現できなくて、ずっと心の奥底に残っていた「ある目的」のために、病院を抜け出します。
おばあちゃんが大好きな孫は、心配でついていきます。
でも、香寿美にとっては、それは孫ではなく、やがて結婚する交際相手であり、自分の「ある目的」には、反対するに決まっている古風な男性なのです。
久野さんと前田君なので、何曲か歌ってもらおうと思っています。
こんな状況ですが、もし、よろしければ、劇場でお会いできたらと思います。万全の感染対策でお迎えします。5月15日から6月13日までです。詳しくは、タイトルでググって下さい。
―[連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史>]―
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- 4/28 8:51
- 日刊SPA!
