コロナ禍の秋葉原、時代によって次々と姿を変貌させる街の未来とは
昨年、秋葉原の名物店のひとつだったキッチンジローがコロナ禍のあおりを受けて閉店。跡地が「コンカフェ無料案内所」なるものに様変わりした。これに象徴されるように、今、昔ながらの飲食店やオタク向け小売店が消えてコンカフェが秋葉原を席巻している。3度目の緊急事態宣言に入り混迷の状況だが、時代によって次々と姿を変貌させるアキバに迫る!
◆“変化する街・アキバ”を大人も楽しめるコンカフェが席巻中!?
昨年9月、コロナ禍で秋葉原の老舗洋食店「キッチンジロー」が閉店。その3か月後、跡地に繁華街でよく見る「案内所」が出現し、大きな話題となった。
「ついにアキバに風俗案内所ができたかと悲嘆する声もありましたが、蓋を開けてみればコンカフェ案内所。まさに今、秋葉原にコンカフェ全盛期が到来してます」
そう語るのは、秋葉原の地域情報誌『1UP』で編集長を務めた佐藤星生氏だ。
「最近はバニーガールなど露出の高い店のほか、飲み放題が300円の激安店も増加。また、他業種の会社がコンカフェを開店するなど、競争が激化しています」
◆オタクの聖地はここ30年でどのように変遷してきた?
オタクの聖地はここ30年でどのように変遷してきたのか。街の事情に詳しいしげの氏は語る。
「’90年代までは電子工作やオーディオが盛んでしたが、Windows95が発売され、電気街はパソコン機器が主体となり、“電脳の街”と呼ばれるように。’00年代にはメイド喫茶が流行し、オタクと美女の純愛を描いた作品『電車男』もヒット。世間からの注目が集まるなか“会いに行けるアイドル”AKB48が誕生。サブカルの街として定着し始めていましたが、無差別殺傷事件が起こり、歩行者天国が休止に。一時は活気を失いました」
その後、’10年代前半にピークを迎えるのが、アイドル文化だ。
「AKBがブレイクしたことで、一般層もアキバの地下アイドルを認知。なかでも、アキバ的要素を色濃く反映したでんぱ組.incは海外からも注目される存在に。さらに、オタクに馴染みやすい世界観とコンテンツ性をもつコンカフェ店が急増しました」(しげの氏)
◆上野や神田に流れていた会社員が秋葉原で飲むように
佐藤氏は「’10年代の半ばには昼間から深夜まで営業するコンカフェも多くなった」と話す。
「飲食店だけでなく、“アキバブランド”に乗じたメイドマッサージやメイドカジノなどが出てきたことで、今までは上野や神田に流れていた会社員が秋葉原で飲むように。女のコへのワンドリンクに4000円~5000円かかるプチぼったくり店が出始めたのもこのタイミング。
また、その流れでJKリフレなど、未成年ビジネスが横行。過激サービスを意味する裏オプションが流行しました。しかし、’16年の一斉摘発でJKビジネスはほぼ消滅状態です」
◆再開発によって新たなブームが到来する可能性も
今後予定されている「外神田一丁目計画」の再開発によって、新たなブームが到来する可能性も。
「予定では高さ163mの複合ビルにオフィスやテナントが入り、川沿いにホテルや住宅も建設される。個人的には秋葉原と親和性の高いeスポーツ専用の競技会場ができたら面白いですね」(しげの氏)
一方、佐藤氏は「今後もアキバらしさは失われない」と予測。
「良しあしはあれ、今、アキバはオタクから一般人まで楽しめる街になりつつある。さまざまな文化を受け入れつつもDEEPさを失わないのがアキバの強さなんです」
【佐藤星生氏】
アキバ系フリーマガジン『1UP』元編集長。アキバ文化に精通している専門家。これまで100件以上のメイド喫茶やコンカフェを取材している
<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!4月27日発売号の袋とじ「秋葉原DEEPガイド」より
―[秋葉原DEEPガイド]―