ご飯を握るだけなのに、なんでこんなに美味しいの?究極の旨“おにぎり”2選

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 誰でも簡単に作ることができる家庭料理だからこそ、最高峰を食べてみたい。そんな大人のわがままを叶えるべく向かったのが、行列の絶えない老舗。おにぎりの認識を変えるほどの味に出合う。

◆行列ができる有名店の究極旨おにぎり

 すきっ腹に詰め込む食べ物、あるいは軽食の一つとして理解していたから、ある日、居酒屋の〆で食べた塩むすびの旨さにたじろいた。ごはんと塩というシンプルな組み合わせなのに、なぜか手が止まらなくなった。米と塩がなんでこんなにもうまいのか頭が混乱した。

 玄米や雑穀が幅を利かせるこの時代に、白いごはんはごちそうであると思った。その日から、おにぎりを一つの料理として尊重するようになったのかもしれない。

「ぼんご」は山手線大塚駅前にある人気店。店主の右近由美子さんは2代目にあたり、亡き夫が昭和35年にこの地に店を構えて60年以上がたつ。

 目の前に並ぶ具材を選び、その場で握ってもらうカウンタースタイルは昔から変わらない。今や行列必至の人気店だが、ようやくカウンターに辿り着いたら壁に貼られたメニューと、ショーケースに並ぶ具材でしばし一考。ごはんを誘惑する色っぽいネタと、白米が炊きあがる湯気に思わず腹が鳴る。

 寿司屋に近いカウンタースタイルだからこそ、その日の気分で好きなネタ……ではなく、具材を指さし注文。同時に威勢のいい声が返ってくる。おにぎりを作る職人がキビキビと動くさまは見ていて気持ちがいいし飽きない。

◆シンプルだからこそ職人技が光る奥深さ

 50種類以上ものメニューから、せっかくだからと、ここでしか食べられない変わり種の「卵黄」と「あさり」に決める。

 白く輝くおにぎりを口に入れたら、次の瞬間には米がほどけて、米と具材の旨さが口の中いっぱいに広がった。

「うちは力を入れて握らないの。形を整えて海苔をつけるだけ」と店主が言うように、軽く握ったおにぎりは空気をたくさん含むので口当たりがよく、口の中でごはんとおかずが自由に踊っているような気持ちになる。

 冷凍卵の黄身だけを取り出して醬油に漬けこんだ「卵黄」は、熱々のごはんに程よく溶け出し、米の一粒一粒に絡み合う。生姜の風味がアクセントとなっている「あさり」は、佃煮のようなご飯に合う味付けでありながら、ふっくらとした貝の食感はまったく損なわれていない。

 どちらの具材も、かぶりつくとこぼれ落ちそうなほどの量だ。おにぎりだけで一食分として完結しているのである。

 個性豊かで主張の強い具材たちが、おにぎりという楽曲の中では心地いいグルーブを生み出す。その瞬間を楽しんでほしい。

ぼんごの「おにぎり(卵黄・あさり)」
しぐれ煮にした甘じょっぱい味つけの「あさり」(260円)はごはんとの相性が抜群。人気の「卵黄」(310円)は冷凍してぎゅーっと濃縮させた後に、4~5時間醬油漬けし、絶妙な塩加減となっている

◆ミシュランにも選ばれたごちそうおにぎり

 お次は都内最古のおにぎり専門店から。ミシュラン(ビブグルマン)に選出されたこともある「浅草宿六」は店構えからして凛とした佇まい。店を切り盛りする眼光鋭い3代目、三浦洋介さんがしばしば口にする「おにぎりなんてしょせんは米と海苔と具」というフレーズは、自分の作品に対する強い矜持を感じさせる。

 3代目のおにぎりを口に入れた瞬間に感じるのは完成度の高さ、あるいは一体感だ。新潟県産コシヒカリと、香り高い江戸前海苔が口の中で調和し、その直後に味覚を刺激する具材が見事な旋律を生む。さらに、絶妙な塩加減が素材本来の味を引き立て、宿六のおにぎりをより完成度の高い作品へと昇華させている。

◆都内最古!おにぎり専門店の「いくら」と「山ごぼう」

 訪れたら絶対に食べてやろうと決めていたのは、店で一番値の張る「いくら」と、3代目のおすすめでもある「山ごぼう」。塩漬けにした「いくら」は、これだけで酒のつまみになるほど、完成された品である。頰張るとかすかな磯の香りが、ごはんの湯気とともに鼻に抜けていく。

「山ごぼう」は、最初はおにぎりの具材として成り立つのかと疑ってかかったが、これまたシャキシャキとした具材の食感とごはんが意外なほど合っている。

 18種類あるメニューは、店主が店を継いだときからほとんど変わっていないという自信作だ。

 好きな具材をリピートするもよし、新しい味にチャレンジするもよし。元は家庭料理だからこそ、最高のおにぎりを口にしてその違いに唸ってほしい。

浅草宿六の「おにぎり(いくら・山ごぼう)」
塩漬けされた「いくら」(748円)は醬油漬けに比べお値段は張るが、いくら本来のうまさを堪能できるとあって人気。味噌漬けされた「山ごぼう」(297円)は風味の良さと歯ごたえが絶妙

◆これぞまさに職人技!握り方の流儀

 自宅とお店のおにぎりの違いは口当たり。両店に共通するのは「力を入れて握らない」こと。最初は型にごはんを入れ、具材をのせてさっと握る。

「ぼんご」で使う米は粒が大きく長いので、軽く握ることで空気を含みふわっとした口当たりになる。

「浅草宿六」では握る回数がなんと3回のみ。おにぎりの形を整えたら完成だ。「大切なのは気合を入れて手を抜くこと」(宿六の店主)

<取材・文/キンマサタカ(パンダ舎) 撮影/岡崎隆夫>


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