真剣な顔でコソコソとスマホを覗き込む男。そこに映し出されていた“あるモノ”を目にした女は…?
「こういう人、いるよね…」
出会いの場に足を運んでいると、たまに遭遇する“ひと癖あり”な人。
だけど、そんな“ちょっと癖ありな言動”には、理由があった!?
先週は男の態度にいちいち不安を感じる、ひと癖ありな女が登場した。
さて、今週の体験談は…?
▶前回:3回目のデートで、部屋も予約していたのに。彼女が“まさかの質問”を投げかけてきて…?
Vol.3 ○○好きの男は、あるモノを褒められると喜ぶ!?
今週の体験者:卯野葉月(27歳女・飲料メーカー勤務)
― 今、話しかけても大丈夫かな…。よし、行こう。
葉月はつい3ヶ月前、ずっと夢だった大手飲料メーカーのマーケティング部に転職を果たしたばかりだ。仕事自体は楽しくて順調だったが、ある人との関係で少し悩んでいた。
「あの。昨日お願いした企画書、確認していただけましたか?」
まだ通い慣れないオフィスでのこと。部署の先輩の肩越しに、できるだけ丁寧に声をかける。
「…見たよ。まあまあ良くできてるんじゃない。修正箇所は赤字で書いてるから」
彼はぶっきらぼうに一言だけ告げて書類を渡すと、またPCの方に目を向けてしまう。
― もう、そっけないなあ。
葉月の先輩である後藤俊太郎には、入社以来、指導係としていろいろとお世話になっている。
悪い人ではないはずなのだが、こうして何を話しかけても塩対応ばかり。ましてやプライベートの話なんて一切してくれないのだ。
ただ仕事はいつも完璧で、スーツの着こなしもバッチリ。…何というか“取り入る隙がない”という感じだ。
― ああいう人って、彼女にはどんな態度を取るんだろう?
そんな妄想を勝手に膨らませていた、ある日のこと。昼休み中に真剣な表情でスマホを眺めている俊太郎を見つけた。
本当は良くないと頭ではわかりつつも、こっそり画面を覗いたそのとき。そこには予想もしていなかった“あるモノ”が、映し出されていたのだ。
葉月が見てしまったモノとは…?
― もしかして、彼女とのLINEかな?
そう思ったが、画面に映っていたのは、何やら海外サッカーの対戦表のようなものだった。
「お疲れさまです。…ちょっと見えちゃったんですけど、海外サッカーがお好きなんですね。どこのチームのファンなんですか?」
そんなふうに恐る恐る話しかけてみると、意外にも先輩の表情は少しほころぶ。
「ああ、マンUが好きなんだよね」
― あれ?ちょっと心、開いてくれたかも…!
このときの葉月は、まさかこの会話がのちに“俊太郎の残念な一面”を引き出すことになるとは、思ってもいなかったのだ。
後藤俊太郎(31歳男)の場合
「先輩って、休みの日はどうしてるんですか?何か趣味とかあるんですか?」
午前の会議が終わり、昼休みに入ろうとしていたとき。後輩の卯野葉月が親しげに話しかけてきた。
「別に、何も…。そんなことより、お前まだ仕事あるだろ。働けよ」
咄嗟にそう言うと、彼女は少しショゲた様子で自分のデスクに戻っていく。
― 今のはちょっと、言い方がキツかったかな。
俊太郎が自分の言動を振り返って落ち込むのは、昔からの悪い癖だ。それに、気になっている女性に対してキツくあたってしまうのも。
自分の気持ちを悟られないよう、つい厳しい口調になってしまうのだ。
そのせいで最近ちょっと気になっている後輩の卯野にも、ツンケンした態度を取ってしまった。
― だけど、社内恋愛なんて面倒に決まってるしなあ。
俊太郎は周囲にバレないよう、こっそりとため息をつくのだった。
◆
「ただいま…」
誰もいない暗い部屋に向かって、ひとりつぶやく。
独身、彼女無しの31歳。
3年前に結婚を考えていた彼女に浮気され別れてから、俊太郎は順調に独身貴族への道を歩んでいる。そのため自宅には最新の家電が並び、インテリアは自分好みの北欧デザインで揃えているのだ。
最近ハマっている観葉植物に水やりを終えると、俊太郎はソファに腰を下ろした。
「はあ、今日もひとりか…」
大したことはないが、この部屋は我ながらセンスが良いほうだと思う。それに、いつでも女を呼べるよう清潔にもしている。しかしここで生活を始めてから、女を部屋に上げたことは一度もない。
― もし卯野をこの部屋に呼んだら、センスを褒めてくれるかな。
そんな邪な考えをかき消そうと、テレビをつけて配信中のプレミアリーグを見ようとした。…そのとき。
電源を入れっぱなしにしていた社用スマホの通知が鳴ったのだ。画面を開くと、社内チャットで卯野からのダイレクトメッセージが届いている。
慌てて通知をタップし、トーク内容を見た瞬間。俊太郎は思わず声をあげた。
「えっ、マジか…!?」
そこに記されていた、驚きの内容とは…?
「今回は本当にありがとうございました!先輩が指導してくださったから、あの堤課長のプレゼンも通ったんですよ?」
卯野からのメッセージは、来季のプロモーション企画案が社内プレゼンを通った、という報告だった。
部下に厳しすぎることで有名な、堤課長という女性の上司から褒められたらしい。
◆
後日、卯野から「お礼にランチをご馳走させて欲しい」との申し出があり、丸の内の『o/sio』に来ていた。
― これでちょっとは、俺の株も上がったかな。
自意識過剰かもしれない。だけど今日くらいは少しでもカッコよく思われたくて、ダンヒルのセットアップをおろしてみた。
そうして二人きりでランチを楽しんでいた、そのとき。彼女が唐突に、こんな質問をぶつけてきたのだ。
「そういえば先輩って、イギリスのサッカーが好きなんですよね。留学とかされてたんですか?」
「そう。大学時代、1年くらいロンドンに行ってて…」
そこまで言いかけると、彼女が思いもよらぬ反応を見せる。
「へえ~!でも、わかる気がする。先輩ってスーツとか持ち物とか、イギリスのブランドっぽいものが多いですよね?」
「わ、わかってるじゃん」
それに気づいてくれたのが嬉しくて、思わず変なリアクションをしてしまった。
「今日のネクタイも、すごくセンスいいですよね」
― そんなところまで見てるなんて、もしかして俺に気があるのか?
そう思った俊太郎は、笑顔で口を開いた。
「そうそう。スーツやネクタイはイギリスのブランドって決めてるんだ。やっぱり生地も縫製も全然違う。まぁスーツだけじゃなくて、家のインテリアも結構こだわってて…」
そこまで話し卯野をチラリと見ると、彼女は眉をひそめていた。その表情にハッと我に返る。
「まあでも、卯野って意外とよく知ってるよね。スーツのブランドもそうだけど、サッカーとかもさ…」
そう締めて、ムリヤリ自分の話を終わらせようとする。すると彼女は気まずそうな顔で、こう答えた。
「…私の彼氏、イギリス育ちの帰国子女なんです。今、外資系の証券会社で働いてて」
どうやら卯野の彼氏は、ロンドンに本社がある有名証券会社に勤めているらしい。
― これは、勝てないよなあ。
得意げに自らのこだわりについて語り出した、数分前の自分を殴りたくなってくる。さらに冷や汗をかき始めた俊太郎を気遣ってか、彼女がこんな言葉をかけてきたのだ。
「あの…。そういう先輩のこだわりをわかってくれる女性、きっと現れると思いますよ!」
― 余計なお世話だ!
このとき、俊太郎はガックリと肩を落としながら「この独身貴族生活は、もうしばらく続くだろうな…」と感じていたのだった。
今週のひと癖エピソード:「海外サッカーがめちゃくちゃ好き!」など“こだわり強め”な男には注意。何かひとつ褒めると、得意げな自分語りが止まらなくなってしまうことも!?
▶前回:3回目のデートで、部屋も予約していたのに。彼女が“まさかの質問”を投げかけてきて…?
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