宝くじはパチンコ依存を救うのか?

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―[負け犬の遠吠え]―

ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は48回。

 今回は、お友達とスクラッチくじで勝負をしたお話です。


◆転がり落ち続けるためにもエネルギーが必要

 言わずと知れた公然の秘密だが、日刊SPA!は人生の下り坂にいる人間に

「その転がり落ちるエネルギー、金に変えてみない?」

 と声をかけて刹那の花火を上げさせる死神代行サイトだ。僕もちょうど一年位前に声をかけられて今に至る。

 奈落という言葉があるが、こと人生、特に日本人に生まれてしまってはそれほどの底は見られない。特に底の底に行くにはある程度の気合いが必要であり、それを持たないほとんどのクズが中途半端な場所で吹き溜まる。インターネットの繁栄が著しい最近では、僕や、僕みたいな中途半端な者たちが「本物」に見つからないようにこういった小さなラッキーを手にするため、日々露悪的な自虐で両翼を飾り、電子の海を飛び回っている。

 が、今言ったように転がり落ち続けるのにも大量のエネルギーが必要なわけで、「もうこれ以上ダメになること」に疲れてきてしまう。結局のところ僕も毎日パチンコ屋に行って一喜一憂するのに飽きてしまい、疲れてしまい、アルバイトを始め、金を返し始めている。

 下り坂にも終わりはある。僕はもう止まってしまった。そしていつか借金を返済してまともな生活に戻る途中で再びパチンコや競馬にハマってしまうだろう。堕ちるのも中途半端な人間は跳べる高さも中途半端なのだ。

 だがSPA!はこんなクズの事情を汲んではくれない。

「やっぱり日記ばっかじゃ厳しいんで、せめて二週間に一回くらいはギャンブルやってくださいよ」

 原稿料が生活の血肉になってしまった後の話であった。貯金が無い人間は数万円の誤差で生活に支障をきたす。

「ギャンブルか……」

 気持ちが乗っていない時に他人から強要されるギャンブルほど苦しいものはない。この時ばかりは普通の人たちみたいに「金が減るのになんでやるの?」と疑問を抱いてしまった。傷つくことから逃げ続けた人間の居場所はいつも棚の上だ。本当になんでギャンブルなんてしなきゃいけないんだろう。

◆金を借りたことを時々振り返る

 朝のアルバイトを終え、適当なパチンコ屋を探す。多重債務者は非常に図々しい生き物なので、働き始めると途端に頑張ってる自分を褒め、誰も庇ってくれないから自分で怒る。

「どうしてこんなに頑張っているのに金を返し続ける生活を強要されなきゃいけないんだ」

 無論、金を借りたからである。こうして時々振り返らないと化け物になってしまいそうだ。

◆ヒンズー教徒の友人からメシの誘い

 パチンコ屋に入るかどうか迷っていたら友達から飯に誘われた。

「俺が奢るから来てよ」

 話のわかる友達だったので行くことにした。なんの脈絡もないように見えるだろうが、大人とはそういうものだ。常に目的があるのは子供だけ。大人になったら好きなことにこだわる必要なんてないし、昨日辞めると言ったタバコを今日吸ってもいい。

 彼はヒンズー教という宗教に入っているので牛を食べることができない。僕はヒンズー教とイスラム教のどちらの友人もいるのだが、豚が食べられないとラーメンが、牛が食べられないと肉を売りにしている店の全てが食べられなくなる。どうして彼らの神様は肉を食うなとか言ったんだろうか。美味しいのに。

 鳥を食べちゃいけない宗教はあまり聞いたことがないので、外国人の友達と遊ぶ時は大抵焼き鳥を選ぶ。

「最近何やってんの?」

「ずっとバイトしてる。そっちは?」

「同じようなもんかな。大学卒業して時間が空いたから何かビジネスを考えたい」

 僕はビジネスという言葉が嫌いなわけでもバカにしてるわけでもない。日本人から聞くビジネスの話は大抵が詐欺だから嫌なだけだ。でも彼はどうやら本当に「ビジネス」が好きらしく、そのために日本の大学まで卒業している。でも僕は大学を出ていないから内容はちんぷんかんぷんだった。

◆スクラッチを削って勝負に出る

「要するに転売ってこと?」と言ったらかなり不服そうな顔をしていた。世の中の仕組みの話は、学の違いが如実に出る。

 昼間から2時間ほど酒を飲んで店を出た。

「そういえばTwitterすごいね。いつかインフルエンサーとしての仕事をあげるよ」

 と言われた。だからいつか転売業者の宣伝をするかもしれない。

 大人になってから、外でやることがないことに気づいた。飯を食った後の「この後何する?」ほど不毛な会話は無いだろう。

「そういえばSPA!の人にもっとギャンブルしろって言われててさ」

「パチンコ?」

「そうなんだけど、もうパチンコも座ってるだけで疲れてきちゃうんだよね。前は5万くらい負けてもまだ座ってられたけど、今は30分で当たらなかったらもう体力の限界って感じ。」

「じゃあスクラッチは? 安いし」

「いいよ。1000円ずつ買って、当たった金額が多い方が勝ちね。で、1000円」

◆スクラッチくじ2枚で勝負

 300円のワンピースクジと犬の写真のクジを二枚ずつ買った。

 ギャンブルとしての宝くじは、かなりコスパがいい。手軽に買えて、大体当たらないことが前提で、ほとんどが忘れた頃に当選番号の発表をするので、幸運が飛び込んでくる錯覚に陥る。ワンピースのスクラッチくじは最高で500万円が当たるが、それもほとんど期待していない。当たる気がないのに買っているのがバカみたいに見えるかもしれないが、この心のハードルの低さもスクラッチの魅力だ。何回買ってもどうせ当たらないから、その場のノリで買ったらそれまで。アツくなりすぎてバカみたいに買い増すなんてことはほとんど起こらない。

「おっ、200円当たった」

 友達が嬉しそうに200円のクジを見せる。

 スクラッチくじは10枚単位で買うと必ず1枚は当たる。今回1枚ずつバラバラの物を買って当たったので確率は1/10、4枚買ったから4/10くらいだ。僕は全部外れた。

「マジかよ」

と言いながら1000円を渡す。

「飯奢られた分チャラになっちゃったじゃん。普通の割り勘だよこれ。」

「返そうか?」

「いや、いい。武士に情けは不要」

◆お茶漬けみたいなギャンブル

 帰り道、タバコを2箱買おうとしたら見事に金が足りなくて、やっぱり受け取っておけば良かったな、と思った。

 家に帰る頃にはスクラッチの余韻は完全に消えていた。ギャンブルしたい衝動もほとんど無い。お茶漬けみたいなギャンブルだな。

「友達とスクラッチくじを買う」

 もしかすると、宝くじはパチンコ依存から抜け出す近道なのかもしれない。ただし、ご利用は計画的に……

〈文/犬〉

―[負け犬の遠吠え]―

【犬】
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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  • 日刊SPA!

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