タバコポイ捨てじいさんに悩む主婦、ある日“特大の悲劇”が彼を襲った

 都内郊外にすむ主婦、東山小春さん(仮名/36歳)。昨年の春から、一人娘も幼稚園に通いはじめ、やっとまとまった自分の時間が持てるようになりました。

◆家計の足しにコンビニでバイト

「でもね、その自分の時間も無いようなものです(笑) 娘が幼稚園いってる間は、家計の足しにしようと思って、隣街のコンビニでバイトを始めたんです。入った時は覚えることもいっぱいで…慣れるまで大変でしたね。家に帰っても仕事の段取りのこととかずっと考えてましたから。確かに、やりがいがあるといえばありますね。

 幸いなことに、うちのコンビニは店長も同僚のバイトの人もいい人ばかりです。でも、やっぱり接客業ですから、対人関係でストレスはたまりますねえ。いろんなお客様が来店しますし…」

 小春さんの顔が、ちょっと憂鬱そうになりました。彼女のストレスの原因となったのは、どのような人なのでしょう?

◆常連の感じ悪いおじいさん

「あの、常連さんで、近所に住んでるという、70代くらいのおじいさんがいたんですよ。この人、毎日来店してたんですけど、結構わがままで気難しい人で(苦笑)。例えば商品の並べを終えてないのに、配送箱から商品を抜いたりとか…また、お会計を終えて袋に商品を入れる際に、商品の入れ方にすごくこだわったりとか。

 あと、この方、タバコもよく購入されたんですが、私がまだ仕事がなれてない頃に、この方にタバコの販売をしたことがあるんですが、タバコの銘柄なんたくさんあるから、ショーケースの前で右往左往してたら、『早くしろよ、おせえよ』って舌打ちされたり…。まあ、私もそういうことに関しては言われても仕方ないんですが…。」

◆タバコのポイ捨てを注意して逆ギレ

「でも、この方に注意しなきゃないことがあったんです」

 小春さんが身を乗り出します。

「実はこの方、いつもくわえタバコでやってきて、店の前の駐車場でいつもタバコをポイ捨てして、足の裏でタバコの火を揉み消して入店するんですよ…。で、ある時、いつものようにタバコを捨てて入店してきたんです。でも、その時は火が消し切れてなくて、煙がうっすらと上がっていました。

 私は“注意するチャンス!”と思って、その方に『歩きタバコは危険ですよ。喫煙するなら喫煙コーナーが駅前にありますよ』と言ったんです。そしたら『今日はたまたまタバコ吸いたくなったんだよ! ろくにタバコの種類も覚えてねえくせに、あんたこそちゃんと仕事しろよ!』って怒鳴られて…。もう私、怒り心頭で『クソジジイ! バチ当たれ!』って思っちゃいました」

◆おじいさんの家が火事になる

 そんなことがあって、数日後の出勤日。

「私、通勤は自転車なんですが、来る途中、火事で全焼した家があったんですよ。『怖っ! 私も気をつけなくちゃ』とか思いながらペダルこいで、コンビニについて。そうしたら、同僚の大学生の男の子が、『東山さん、途中の火事あった家、見たっすか?』って。

 うん、見たよって答えたら『店長が言ってたんすけど、あれ、いつもくる、タバコポイ捨てじいさんの家、らしいっすよ…』って。もう私、すごく驚きましよ。でも幸いなことにおじいさんはすぐ逃げたので無事だって。…ただ、火事の原因は寝タバコだったそうです」

◆コンビニにバイトとして入ってきた

 実はその後、驚きの展開が待っていたのです。

「そのお爺さん、その事件以来しばらく、来店しなかったんです。どうやら一軒屋に一人暮らしだったらしくて、当時の噂では遠縁を辿って身を寄せているとかなんとか。私も『まあ、元気でやってくれてればいいなあ。』とか思ってました。…ところが!」

 小春さん、声がちょっと大きくなりました。

「ある日出勤したら、なんと! そのおじいさんがコンビニにいたんですよ!あれは本当に驚きました。しかも、来店したのは、バイトとして採用されたからだったんです。

 驚いて店長に事情を聞いたら『あの人、住む家も無くなって、年金だけじゃとてもやっていけないそうなんです。採用したのは情にほだされたからです。東山さん、ここはひとつ人助けと思ってください。よろしくお願いします』と言われて。まあ、私もいろいろ思うところはありましたけどね。」

◆お客に「モタモタすんなよ」と言われ口論に

 それから小春さんは、新人バイトとなったおじいさんに、仕事を教える立場となりました。「もちろん、気持ちの切り替えに抵抗ありましたけどね。でも、そこは仕事だからと思って割り切って。

 そうそう、おじいさん、最近はレジ係もするようになったんですが、お客さんに『モタモタすんなよ』とか言われて、それでキレて口論になっちゃったんですよ。その後事務室でおじいさんにやんわり注意したんですが、以前と比べてちょっとは反省するようになりましたね。人間って変わるんだなあって思いました。」

 もちろん、彼はきっぱりタバコを辞めたそうです。かなり手痛い禁煙治療となりましたね…。

―シリーズ「ご近所・ママ友とのトラブル」―

<文/榊原瑠美>

2021/4/24 8:47

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