「なにか隠してる…?」平日夜しか会えない男を女が問い詰めたら、彼が白状した真実
「今度こそ、幸せになりたい」
“離婚”という苦い経験を経て、また恋をして結婚がしたいと願う人たちがいる。
そんな彼らの再婚の条件は、実に明確だ。
「一度目よりも、幸せな結婚!」
それ以上でも、それ以下でもない。
幸せになることを、諦めないバツイチたちの物語。
4話からは、バツイチ子持ちの未央の物語がスタートした。
◆これまでのあらすじ
男性との出会いはあるが、なかなか再婚に結びつかない未央。久々に大学の同級生である純平と食事をすることになった。二人で楽しい時間を過ごしていたが、彼の携帯に元妻からの着信が…。
▶️前回:「誰のために結婚するの?」婚活に迷走するアラフォー女が、思わずもらした本音
『純平:水曜の夜、飯でもどう?』
ベッドに入る間際、未央は純平からのLINEに気づいた。
先月、恵比寿で3年ぶりに食事をして以来、純平とは週1ペースで会っている。ある時は会社帰りにディナーを、また別の日にはどちらかの職場近辺でランチをといった具合だ。
彼から来る連絡の頻度や、自分を見る視線やかけてくれる言葉の端々に、「恋愛」という言葉なくしては成り立たない何かを感じてしまうから未央も意識するようになっていた。
しかし、付き合おうという言葉は一切ないし、ただ一緒に食事をするだけの関係が続いている。
― 純平と一緒にいるのは楽しいけど…。彼は、どういうつもりで私と会ってるんだろう?
もともと大学時代の同級生というのもあって、友情関係を壊したくない気持ちはもちろんわかるが、そろそろこの関係をはっきりさせたい、と未央は考えていた。
それに、もう一つ気になっていることがあった。
純平の背後に見え隠れする、元妻の存在だ。
バツイチだから、元妻が存在するのは当たり前のことなのだが、その存在が大きすぎるような気がするのだ。
未央がそう思うのには、理由がある。
3年ぶりに再会したあの夜。
大きすぎる元妻の存在にやきもきする未央。二人の関係はどうなる?
二人で食事をしているときに、元妻から電話があったが、彼は電話を取らないまま放置していた。
しかし、止まないバイブレーションに根負けして、純平は億劫そうに店の外に出て行ったのだが…。
その後も、未央は純平に会うたび、目に見えぬ元妻の存在を感じとっていた。
それに、純平が会おうと提案してくるのは、きまって平日の夜。土日に会えないのは、元妻に会っているからだと予測していた。
だから未央は、純平にとって自分がどんな存在なのか探りを入れることにした。
『未央:次の日朝早いから、水曜の夜はちょっと厳しいかな。週末はどう?』
未央は当たり障りのない言葉でLINEを返信した。
『純平:ごめん、土日は予定があって。水曜がダメなら木曜はどう?』
純平からの返信を見て、大きくため息をついた。
― やっぱりね…。私は平日の女か…。
『土日は、元奥さんと会ってるの?』と聞きたかったが、未央はそれを聞くことを一旦飲み込んで、『軽く一杯だけなら、いいよ』と返信した。
◆
木曜の夜。
表参道駅から地上に上がってすぐのオープンテラスのカフェで、未央は純平を待っていた。
彼から20分くらい遅れるというLINEが来たが、その時間が過ぎても未だやってくる気配はない。
30分ほど遅れてやってきた純平は、「ほんっとうにごめん!自分から呼び出しておいて、遅刻はないよな」と平謝りしながら席についた。
ドリンクを注文したあと、「埋め合わせするから、なんでも言って」と言う純平に、未央はイタズラっぽく彼の顔を覗きこみながら言う。
「じゃあ、…湘南の方にドライブに連れてって」
「いいね、湘南!いつ行く?」
「休みの日にゆっくり行きたい!」
未央は、あえて土日を提案してみたが、その瞬間、純平のテンションが下がったのが伝わってきた。
「………未央、ごめん。俺、土日がほぼNGなんだわ」
純平の申し訳なさそうな顔を見て、未央は察した。
「もしかして、元奥さんと会ってるの?」
未央の問いに、純平は答えづらそうだ。
「うん。実は…土日は元家族と一緒に過ごしているんだ」
純平によると、元妻は専業主婦で娘2人を育てていけるような経済力はない。そのため経済的なサポートを含め、父親としての責務を果たすために子どもの面倒も見ているということだった。
「そうなんだ…子どもと積極的に会うって、純平えらいね。離婚したら養育費すら途中で払わなくなる人が多いっていうじゃない」
未央はモヤモヤとした感情を抑えきれず、少し嫌味っぽく言った。
未央の元夫だって、養育費の支払いは継続してくれているが、3ヶ月に1回の子どもとの面会ですら義務で続けているように感じる。
「まぁ、娘はやっぱ可愛いし、それに家族の絆ってそんな簡単に切れないものじゃない?」
「でもそんなに家族のことが大切なら、純平ってなんで離婚したの?」
未央は抱いていた疑問を思い切ってぶつけてみた。
「それはさ…」
純平の答えは、思いも寄らないものだった。
純平の驚くべき離婚理由とは?やっぱりバツイチ同士の恋愛は難しい…?
「離婚したのは、俺の浮気が原因だから。家庭を壊した申し訳なさから、できる限りサポートしてるんだ」
それを聞いて、未央はどう返すべきか言葉に詰まってしまった。
誠実だと思っていた純平が、浮気が原因で離婚していたとは、意外だった。
それに、浮気という負い目があることで、妻と子どものサポートを延々とこれからも続けるつもりでいるということに。
純平の心境を知って、ますます自分との関係をどうしたいと思っているのか疑問に思った未央は、核心に触れる質問をすることにした。
「じゃあ、なんで私と会ってるの?」
「未央のことは、学生時代に憧れていたし。久しぶりに会って、あの頃を懐かしく思い出して、一緒にいるときは恋人といるような気分で会ってるよ、俺は」
平然と言ってのける純平に、未央は呆れた。
「うん、そうだよね。そうだろうなって思ってた」
純平はバツイチ、未央もバツイチ。その条件だけみると、順調にいけば再婚という未来が待っているのかもしれない。
「恋人のつもりって、聞こえはいいけど、都合のいい関係ってことよね。結局一番大事なのは、前の家族ってことだし。こうして会ってるのは楽しいけど、恋人でもない、再婚するわけでもない。この中途半端な関係は、私には無理だわ」
口に出してみて、未央もようやくわかった。
「たぶんお互いに『もしかしたら』って思っていたんだと思うの」
純平は思い悩むような表情で「たしかにな」とだけ言った。
「あのね、純平。余計なお世話かもしれないけどさ…、友だちとして言っとく」
「なに…?」
純平が顔を上げる。
「もし本当に大切な恋人ができたら、土日を元家族のためにすべて空けておくっていうのは、やめたほうがいいよ」
未央はちょっと嫌な言い方だなと思いつつも、思っていることをすべてぶつけてみたのだった。
「…そうだよね。元家族との付き合い方って難しいな……」
ぽつりとつぶやく純平の横顔が寂しく見えた。
◆
土曜の朝。
外は気持ちよく晴れ渡っていて、先週よりも強さを増した日差しに初夏の兆しを感じる。
未央は朝食の後、壮太の公文の宿題を見ながら、1週間を思い返していた。
結局純平とは、「また、近況報告しようね」と言って別れたきり連絡をとっていない。
付き合っていた訳ではないが、平日の夜に何も予定がない日常が戻ってきて、未央は少し寂しさを感じていた。
― 早く気持ちを切り替えなくちゃ。
壮太に視線を向けると、問題を解くことに飽きたのか鉛筆で遊んでいる。
「壮太、早く公文終わらせて、公園にお散歩に行こうか」
すると壮太が嬉しそうに顔を上げた。
「行く!……ねえ、ママ」
「なあに?」
「最近オリバーと会ってないから、久しぶりに一緒に遊びに行きたい」
突然の壮太の発言に、未央は思わず聞き返した。
「オリバー??」
「うん。遊ぼうって言ってみて」
「そうねぇ…。忙しいかもしれないけど、連絡してみるわね」
壮太に「忙しいかも」と前置きしたのは、断られた場合の自分への言い訳だ。
オリバーとは、2ヶ月ほど連絡をとっていなかったが、ここ最近、実は未央も彼に会いたいと心の中で思っていた。
だが、自分からの連絡に彼がどういうリアクションをするのか不安で連絡できずにいた。
― でも壮太が会いたいって言ってるんだもの。
未央はスマホを手に取り、オリバーとのLINEのトークを探し始めた。
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息子が会いたいというならと、オリバーに連絡を取った未央だが…。