伝記や事実を描いた映画の主役を当事者が演じた珍しい作品6選『15時17分、パリ行き』や『8 Mile』ほか
『15時17分、パリ行き』
名匠クリント・イーストウッドが監督した『15時17分、パリ行き』(2018年)は、2015年にフランスの高速鉄道で発生した銃乱射テロ事件を描いた映画。
たまたま鉄道に乗り合わせ、テロ計画に気付いて犯人を取り押さえたアメリカ人青年3人の勇敢な行動を綴った実録ドラマで、当事者であるアンソニー・サドラーとアレク・スカラトス、スペンサー・ストーンが本人役で出演しました。
最初はプロの俳優を起用する案も検討されたそうですが、イーストウッドは事実確認のため3人と話をするうちに彼らを映画に出演させようと思い、カメラの前に立つことすら慣れていない素人を主演させるという画期的な試みに挑むことに。
しかし、いくらテロ事件を食い止めた英雄とはいえ、演技経験がゼロの3人がオスカー受賞監督の演出に応えるには無理があったのか、批評家と観客は3人の演技に納得がいかず、さらに物語の展開もテロ事件に行き着くまでが長すぎるとネガティブなレビューが目立ったようです。
『プライベート・パーツ』
https://static2.srcdn.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/03/Private-Parts-Howard-Stern.jpg?q=50&fit=crop&w=740&h=370&dpr=1.5
1997年に公開された『プライベート・パーツ』は、全米で絶大な人気を誇るラジオのDJ、ハワード・スターンの半生を綴り、ベストセラーとなった自伝の映画化。
もともと、ハワードは地元ラジオ局のDJで全国規模では無名だったのですが、ある日、別居中の妻に会えないストレスでオンエア中に突然キレてしまい、放送禁止用語を連発する事態が発生。
これでDJ生命は終わりか…と思いきや、逆にリスナーにバカ受けする結果となり、ハワードのキャリアに変化が訪れる…という展開で描かれます。
ハワード役の候補はジェフ・ゴールドブラムだった!
もともと、ハワードは自分の伝記映画に主演するつもりはなく、『ザ・フライ』(1986年)や『ジュラシック・パーク』(1993年)などで知られるジェフ・ゴールドブラムが主役に検討されていましたが、最終的に本人が自演することになったのだそう。
そして、彼のカリスマ性と本来兼ね備えているトークの才能が功を奏し、『シンデレラマン』(2006年)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたポール・ジアマッティらのサポートもあり、説得力のある仕上がりに。
映画の評価も総じてポジティブだったようですが、その後にスターンは俳優として他の作品に出演することはありませんでした。現在、彼はシリウスXMラジオの番組で活躍を続けています。
『8 Mile』
2002年に公開された『8 Mile』は大人気ラッパー、エミネムの半生を下敷きにした青春音楽映画。1995年の米ミシガン州デトロイトを舞台にした映画の主人公は、裕福な人々が暮らす郊外と、貧困層が占める地域を分断する“8マイル”の貧しい側に暮らすジミー。
昼はプレス工場で働き、夜はヒップホップ・クラブでラップ・バトルに挑戦して優勝を目指し、プロのラッパーとしてデビューを夢見るジミーの物語が、エミネムが歩んだ道に重ね合わせながら描かれます。
映画でメガホンを取ったカーティス・ハンソンは、エミネムのミュージック・ビデオを見て素晴らしい存在感を持っていると感じ、彼をモデルにした役に本人を起用することにしたのだそう。
その結果、“不可能を可能にする”物語と若きラッパーの熱い青春が大きな共感を呼び、『8 Mile』は全米大ヒットに! そして、エミネムによる映画主題歌「Lose Yourself」はアカデミー賞で最優秀歌曲賞を受賞しました。
エミネムの演技も高い評価を受けたのですが、その後に彼はコメディ映画『ファニー・ピープル』(2009年)や、ドラマ『アントラージュ★オレたちのハリウッド』などに本人役でゲスト出演した程度で、本格的に俳優としてはカムバックしてません。
『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』
そして『8 Mile』の他に、人気ラッパーの人生を描く映画として、50セントことカーティス・ジャクソンの壮絶な半生を描いた『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』(2005年)も忘れてはいけません。
本作の主人公は、父親の存在を知らずにニューヨークのクイーンズで生まれ育ったマーカス。大好きなラップに夢中になる子ども時代を送っていた彼は、ある日、母親が麻薬絡みの事件で殺害されて祖父母に引き取られることに…。
ドン底生活でドラッグの売人となった彼は逮捕されてしまうのですが、刑務所仲間の後押しでラッパーとして再起を図ろうとする…というストーリー。
50セントの人生の75パーセントが映画で描かれた
50セントの人生の75パーセントが映画で描かれたそうで、マーカス役で50セント本人が主演。監督は、『父の祈りを』(1993年)や『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』(2002年)で高い評価を得た社会派のジム・シェリダンが務めたのですが、『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』で本格スクリーンデビューを飾った50セントの演技力が及ばず、レビューはかんばしくない結果に終わってしまいました。
しかし、その後に50セントは出演作を重ねるうちに俳優として成長したようで、大ヒットアクション映画『大脱出』シリーズではHUSH役でお馴じみに。そして、6シーズン続いたサスペンスドラマ『POWER/パワー』では出演&製作総指揮を務め、シリーズ終了後は4本のスピンオフを生み出す手腕ぶりを発揮し、もはやラッパーというよりは主に俳優&ドラマのプロデューサーとして大活躍しています。
『地獄の戦線』
https://static0.srcdn.com/wordpress/wp-content/uploads/2021/03/To-Hell-And-Back-Audie-Murphy.jpg?q=50&fit=crop&w=740&h=370&dpr=1.5
1955年に公開された『地獄の戦線』は、第二次世界大戦で戦い、数々の勲章を受章した米兵士オーディ・マーフィの自伝「To Hell and Back」を映画化した作品。
1949年に出版された自伝でオーディは口述で戦歴を語り、ゴースト・ライターのデヴィッド・・マクルーアが執筆。その作業でオーディは自分が受けた勲章や功績にはほとんど触れず、戦友たちの勇気や献身を中心に語ったそうです。
その自伝の映画版でオーディは自分自身を演じ、興行的にも成功を収めて、彼の演技も大いに称賛されたとのこと。兵士から俳優に転じたオーディはその後も活躍を続け、44本の映画に出演。それだけでなく、カントリーのシンガー・ソングライターとしても成功した彼は、数多くの分野で才能を発揮しました。
『アリ/ザ・グレーテスト』
NEW YORK - DECEMBER 07: Heavyweight boxer Muhammad Ali trains for his fight against Oscar Bonavena on December 7, 1970 in New York, U.S.A. (Photo by Anwar Hussein/Getty Images)
1977年に公開された『アリ/ザ・グレーテスト』は伝説的なボクサー、モハメド・アリの半生を描いた伝記映画。
1960年に開催されたローマ・オリンピックで金メダルを獲得したアリが、マルコムXの影響でイスラム教に改宗した過程や、1974年にジョージ・フォアマンとの対戦でKO勝ちして世界チャンピオンとなるまでの道のりが綴られます。
本作でアリが自分を演じるために主演したのですが、俳優として素人だった彼の演技力が十分でないとの声があり、公開時に35歳だったアリが、20代前半だった頃を演じるには老けすぎているとの批評もあったとのこと。
当時は、俳優の容姿を若返らせるディエイジングの特殊効果など存在しなかったため、現代だったら、その点はクリアされていたのではないでしょうか。
関連リンク
- 4/22 20:00
- 映画board
