『約束の宇宙(そら)』シングルマザーの女性宇宙飛行士を描く感動作!

拡大画像を見る

欧州宇宙機関(ESA)全面協力のもと、ミッションに選ばれた女性宇宙飛行士を描く『約束の宇宙(そら)』。母親であるがゆえの葛藤の中、母子ともに成長していく姿を描いた感動作です!

『約束の宇宙(そら)』あらすじ

フランス人宇宙飛行士のサラ(エヴァ・グリーン)は、学習障害のある7歳の娘を育てるシングルマザー。宇宙飛行士のための厳しい訓練と育児を両立させつつ、宇宙に行くことを目指していた。
そしてついに、ミッション「プロキシマ」の前任者交代要員として乗組員に選ばれ、念願だった宇宙へ行けることになったサラ。しかしそれに参加するということは、娘との長い別れを意味していた。

離婚した物理学者の夫に娘を任せ、ミッションのための訓練に入ったサラ。
しかし、クルーの中には「女性」であるサラが途中参加することを快く思っていない者もおり、全てが順風満帆とはいかない。
また、娘を置いて宇宙へ行くことの葛藤も、次第にサラを不安に追い込んでいく……。

サラは娘との約束を果たし、宇宙に行くという夢を叶えることができるのか?

約束の宇宙(そら)

約束の宇宙(そら)

2019年/フランス/107分

作品情報 / レビューはこちら

監督は、トルコの地方都市に暮らす少女たちの成長を描いた『裸足の季節』で脚本をつとめたアリス・ウィンクール。長編三作目となる本作は、宇宙飛行士全体の10%ほどだという「女性」の宇宙飛行士にスポットを当て、「母親と娘の絆」という普遍的な物語に仕上げました。

主演はティム・バートン監督の『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』やデンマーク人監督による西部劇『悪党に粛清を』などのエヴァ・グリーン。強くてクールな役を多く演じているイメージがある女優さんですが、本作でみせる柔らかで優しい印象はまた別の一面を見せてもらったように思います。

主人公の娘ステラを演じるのはオーディションで300人の中から選ばれたゼリー・ブーラン・レメル。学習障害があり母親と離れ離れになる少女という複雑な役柄を、7歳らしい瑞々しい感性と愛らしさで演じています。母親と離れる寂しさの中で成長していくステラの姿は、深い感動をもたらします。

音楽は坂本龍一が担当。宇宙に行く前の段階の内容でありながら、壮大な宇宙を感じさせる楽曲となっています。

ちなみに、原題の「PROXIMA」はスペイン語で「次(Next)」の意味。日々前進する宇宙開発と女性の社会進出のその「次」を見据えた、希望ある一作だと思います。

知られざる「女性宇宙飛行士」の実態

『インターステラー』『オデッセイ』『ファーストマン』『アド・アストラ』と、近年、宇宙飛行士を主人公にした映画が多く作られています。しかしながら、「女性」宇宙飛行士が主人公の作品はまだまだ多いとは言えません。
上記の作品にも女性宇宙飛行士や宇宙開発に携わる女性が登場しますが、その背景に思いを馳せることができるほど、深く描かれてはいませんでした。
女性でありシングルマザーである宇宙飛行士を主人公にしたというだけでも、本作『約束の宇宙(そら)』は、珍しいタイプの作品と言えるでしょう。

また、宇宙に行った後を舞台にしたSF的な作品ではなく、宇宙に行く前の地球上の準備段階を描いている点も興味深いです。
欧州宇宙機関(ESA)の協力のもと、ドイツ、ロシア、カザフスタンの関連施設で撮影を行ったそうで、サラやクルーたちが寝泊まりする施設も実在の場所。
訓練やトレーニング風景も忠実に描かれており、これまであまり知られていなかった「宇宙飛行士」という職業の実態を垣間見ることができます。

宇宙飛行士の家族のケアを行う専任の担当者がいるというのも、本作で初めて知りました(映画ではドイツ人女優サンドラ・ヒューラーが演じています)。

そして主人公のサラが「娘を思う母親」という誰でも共感できるキャラクターであることによって、これまで遠い存在だった「女性宇宙飛行士」を身近に感じられる作品になっていると思います。


母親になっても夢をあきらめなくていい

現在、多くの人が家庭を持ちながら働いており、以前に比べてその環境も徐々に整いつつあります。とはいえ、まだ十分とは言えないでしょう。

特に女性は出産・育児によって、体力的にはもちろん社会的にもこれまでのキャリアを一旦リセットしなければならない状況が少なくありません。夢を持ちながらもそこであきらめてしまったり、他の職業を選択する人も当然いるはずです。

けれど、皆が「女性だから」「子どもがいるから」を理由に夢をあきらめていては、事態は好転しません。我々の次の世代、そのまた次の世代にも同じ状況を引き継がせてしまうのだとしたら、それは決して良いことではないでしょう。

宇宙飛行士は、人類や地球の未来を担っているともいえる重要な仕事ですから、万全のケアが用意されています。
それでもサラは、娘を置いて宇宙へ行くことに不安をぬぐえません。
それはやはり、感情的な部分が大きいのだと思います。

娘の成長を一時でも見逃してしまうこと、娘にさみしい思いをさせてしまうこと、そして自分に何かあったらどうするのかという心配……。

けれど、映画でサラは娘のステラに宇宙飛行士になった姿を見せることで、夢を叶える素晴らしさを教えることができたのではないでしょうか。
それは、娘にとって離れ離れになる寂しや悲しさ以上に有意義な体験となります。
親が夢をあきらめた姿より、叶えた姿を見せる方が子どもの成長にとっては何倍も良い経験になるのです。

本作を観て、母親も父親も自分らしく輝けることが当たり前の社会になって欲しいなと思いました。
それが「次」の世代への希望になるはずだから。

SAN SEBASTIAN, SPAIN - SEPTEMBER 21: Eva Green, Zelie Boulant-Lemesle and Alice Winocour attend 'Proxima' premiere during 67th San Sebastian Film Festival on September 21, 2019 in San Sebastian, Spain. (Photo by Juan Naharro Gimenez/WireImage)

関連リンク

  • 4/19 14:07
  • 映画board

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます