会社の創業理念を知らずに働いてはいけない
―[魂が燃えるメモ/佐々木]―
いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第252回
◆3人の患者を表すロゴマーク
医師の鍵本忠尚はバイオベンチャー企業『ヘリオス』の代表取締役を務めています。ヘリオスは「iPS細胞による治療の実用化」を目的に、理化学研究所の高橋政代に依頼された鍵本が2011年2月に設立しました。設立時は100万円の自己資金で始めたビジネスでしたが、2013年には30億円の資金を調達、2015人には東証マザーズ上場を果たしています。
そんなヘリオスのロゴマークになっているのが、オレンジ色の3つの三日月です。この三日月は鍵本が臨床医を務めていた頃に出会った3人の患者を表現しています。
1人目は、大学入学時の健康診断で末期がんが見つかり、余命3ヶ月を宣告された患者です。2人目の患者は原因不明の視神経炎を患い、ステロイド剤治療によってある程度回復したため退院したものの、その1ヶ月後に入水自殺で亡くなった患者です。3人目の患者は加齢黄斑変性という病気で失明し、「生まれたばかりの孫の顔も見れないのか」と嘆いた高齢の患者です。
◆信念は人間関係から生まれる
この三人の影響を受けて、鍵本は「幸運にも健康に生きることができている自分の時間を、患者さんに希望が与えられるような治療法や薬を生み出すために費やそう」という信念を持ちました。このように信念は人間関係から生まれます。
鍵本と三人の患者の関係は、「専門家と素人」です。通常、専門家は商品やサービスを提供する側で、素人がそれを受け取る側です。しかし、時として素人の方が専門家に対して、「なんのためにその仕事をしているのか?」という働く理由を与えてくれることがあります。なぜなら、商品やサービスを求めるのは、何かしらの悩みや苦しみを解決するためであり、その相手の悩みに触れた時、人は自然と「専門家として自分に何かできることはないか」と考えるものだからです。
これは鍵本の体験だけに限りません。たとえば同じ医師の阿部吉倫は、病院やクリニックでの問診をサポートする「AI問診ユビー」を、大学時代の友人と共同開発しました。このきっかけになったのも、阿部が研修医だった時に出会った患者です。
◆働いている会社の理念はなにか?
その患者は問診の際、パソコンで電子カルテを記入していた阿部に、「こっちを向いて話を聞いてください」と訴えたと言います。その時、阿部は「患者と向き合うよりも、膨大な事務作業に時間を取られるのはおかしくないか」「こんな状況は変えなければ」と考え、医者をサポートするサービスとしてAI問診システムを思いつきました。
会社を起業した場合、創業者の信念がそのまま会社の創業理念になります。鍵本の信念は、加齢黄斑変性の高齢患者に影響を受けています。そして、その鍵本が立ち上げたヘリオスは、「iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を、加齢黄斑変性の眼病患者に移植する」という世界初の手術の実用化を目指しています。信念や理念という形のないものが、商品やサービスという形のあるものを作り出しているのです。
ところが、理念は形を持たないが故に軽視されがちです。「あなたの会社の理念は?」と聞かれて、答えられないことはよくあります。そうした理念の軽視は、その会社で働く社員にも支障をもたらします。どんな商品やサービスの提案が通りやすいのか。どんな働き方が受け入れやすいのか。そうしたいわゆる企業風土も、創業理念に基づいているからです。
自分が働いている会社の創業理念は何か。その理念を作った創業者は、どんな人間関係から影響を受けたのか。そうしたヒストリーを知ることは、自分がその会社で気持ちよく働くための大きなヒントになります。これは大企業も中小企業も変わりません。ぜひ興味を持って調べてみて下さい。
―[魂が燃えるメモ/佐々木]―
【佐々木】
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中
いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第252回
◆3人の患者を表すロゴマーク
医師の鍵本忠尚はバイオベンチャー企業『ヘリオス』の代表取締役を務めています。ヘリオスは「iPS細胞による治療の実用化」を目的に、理化学研究所の高橋政代に依頼された鍵本が2011年2月に設立しました。設立時は100万円の自己資金で始めたビジネスでしたが、2013年には30億円の資金を調達、2015人には東証マザーズ上場を果たしています。
そんなヘリオスのロゴマークになっているのが、オレンジ色の3つの三日月です。この三日月は鍵本が臨床医を務めていた頃に出会った3人の患者を表現しています。
1人目は、大学入学時の健康診断で末期がんが見つかり、余命3ヶ月を宣告された患者です。2人目の患者は原因不明の視神経炎を患い、ステロイド剤治療によってある程度回復したため退院したものの、その1ヶ月後に入水自殺で亡くなった患者です。3人目の患者は加齢黄斑変性という病気で失明し、「生まれたばかりの孫の顔も見れないのか」と嘆いた高齢の患者です。
◆信念は人間関係から生まれる
この三人の影響を受けて、鍵本は「幸運にも健康に生きることができている自分の時間を、患者さんに希望が与えられるような治療法や薬を生み出すために費やそう」という信念を持ちました。このように信念は人間関係から生まれます。
鍵本と三人の患者の関係は、「専門家と素人」です。通常、専門家は商品やサービスを提供する側で、素人がそれを受け取る側です。しかし、時として素人の方が専門家に対して、「なんのためにその仕事をしているのか?」という働く理由を与えてくれることがあります。なぜなら、商品やサービスを求めるのは、何かしらの悩みや苦しみを解決するためであり、その相手の悩みに触れた時、人は自然と「専門家として自分に何かできることはないか」と考えるものだからです。
これは鍵本の体験だけに限りません。たとえば同じ医師の阿部吉倫は、病院やクリニックでの問診をサポートする「AI問診ユビー」を、大学時代の友人と共同開発しました。このきっかけになったのも、阿部が研修医だった時に出会った患者です。
◆働いている会社の理念はなにか?
その患者は問診の際、パソコンで電子カルテを記入していた阿部に、「こっちを向いて話を聞いてください」と訴えたと言います。その時、阿部は「患者と向き合うよりも、膨大な事務作業に時間を取られるのはおかしくないか」「こんな状況は変えなければ」と考え、医者をサポートするサービスとしてAI問診システムを思いつきました。
会社を起業した場合、創業者の信念がそのまま会社の創業理念になります。鍵本の信念は、加齢黄斑変性の高齢患者に影響を受けています。そして、その鍵本が立ち上げたヘリオスは、「iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を、加齢黄斑変性の眼病患者に移植する」という世界初の手術の実用化を目指しています。信念や理念という形のないものが、商品やサービスという形のあるものを作り出しているのです。
ところが、理念は形を持たないが故に軽視されがちです。「あなたの会社の理念は?」と聞かれて、答えられないことはよくあります。そうした理念の軽視は、その会社で働く社員にも支障をもたらします。どんな商品やサービスの提案が通りやすいのか。どんな働き方が受け入れやすいのか。そうしたいわゆる企業風土も、創業理念に基づいているからです。
自分が働いている会社の創業理念は何か。その理念を作った創業者は、どんな人間関係から影響を受けたのか。そうしたヒストリーを知ることは、自分がその会社で気持ちよく働くための大きなヒントになります。これは大企業も中小企業も変わりません。ぜひ興味を持って調べてみて下さい。
―[魂が燃えるメモ/佐々木]―
【佐々木】
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中
関連リンク
- 4/19 15:52
- 日刊SPA!
