「寝た気がしない」原因のひとつ“いびき”。医師が教える改善法3つ
花粉に悩まされるなど、この時期十分な睡眠が取れず日中のパフォーマンスが上がらない人も少なくない。だが、そんな心配は”鼻”環境の改善で劇的に変わる。今回、その真相に迫った。
◆睡眠を妨げる「いびき」そのメカニズムとは?
今年は暖冬の影響もあって、花粉症による鼻づまりやくしゃみで苦しむ人も多い。そんななか「日中眠くてしょうがない」「毎日8時間寝ても疲労が取れない」といった睡眠の質の低下を訴える人も増えているという。
鼻のトラブルと睡眠の質にはどんな因果関係があるのだろうか。「東京疲労・睡眠クリニック」院長の梶本修身氏はこう指摘する。
「眠れない、疲れが取れないと訴えて来院される方の原因の多くがいびきです。いびきをかくということは、睡眠時に休むはずだった脳の自律神経が活動している証拠。どんなに睡眠時間を取っても、疲労回復にはなりません」
そもそもなぜ人はいびきをかくのか。「東京ロンフェルメ耳鼻いんこう科」理事長の竹腰英樹氏は鼻における睡眠中のメカニズムについて次のように説明する。
「いびきをかく人の75%に鼻閉症状があります。鼻の通りが悪くなっている状態です。仕組みは、空気が睡眠中に狭くなった鼻腔を通ることで鼻いびきを起こす。また圧が強くなった吸気が軟口蓋(のどちんこ)を振動していびきに。鼻腔が狭くなり口呼吸に移行すると軟口蓋や舌が振動すると喉いびきを起こします」
◆いびきを引き起こしやすい人の特徴
さらに竹腰氏は、いびきを引き起こしやすい人の特徴を次のように続ける。
「この時期でいえば、花粉症を抱える人。また、アレルギー性鼻炎や鼻ポリープといった病気を持っている人や口蓋垂が長いなど、鼻や気道が塞がれやすい構造を持っている人ですね。それから肥満体形の人にも多い。加齢に伴い喉の筋肉が衰えていくので、50代以上の人も気をつけなければいけません」
睡眠トラブルの引き金となっているいびき。効果的な改善策はあるのだろうか。竹腰氏は自宅で気軽に試せる対策グッズとして次の3つの方法を挙げた。
「まず、鼻洗浄器は花粉症やアレルギー性鼻炎を持つ方にはある程度は効果的です。それから、下顎を前方に移動させ咽頭を広げるマウスピース。いびきを感知するセンサーと連動することで枕の高さを自動調節し、頭を横に向けてくれる枕もおすすめです。いずれも気道が狭くなるのを防ぎ、いびきをかきにくくする効果があります」
実際に、前述の枕を使用して寝ているという前田まこさん(仮名・32歳)は「夜中に枕の向きが変わり横を向いて寝るようになったら、いびきがなくなった。値段は3万円くらいだったけど、治療は怖いしもっと予算がかかるのでこれで十分です」と効果を実感していた。
◆改善されない場合は医療機関へ
それでも改善されなかった場合は医療機関に頼るのが最善だ。
「口蓋垂が長い、軟口蓋が低いことが原因の場合は、レーザーでの切除治療を考えてもよいかと思います。他には、鼻チューブが口蓋垂まで達することで、上気道の間に空気の通りを確保する『ナステント』(前ページ下)。これもいびきを止めるのに効果がありますが、処方箋が必要です」
ナステントを使用したことがあるという佐藤祐樹さん(仮名・43歳)は不眠が改善できたと満足げだ。
「最初は鼻水やくしゃみが止まらなかったが、数日すると慣れた。熟睡できている実感はありますね」
一方で、竹腰氏は使用に注意が必要なアイテムもあると説明する。
「鼻腔テープのいびきに対する効果は、西洋にて実証されていますが、日本での効果は現状では不明です。それから、いびきの音量を抑えるために口に貼るテープは、鼻閉症状がある際に呼吸ができなくなる恐れがあります」
◆睡眠時無呼吸症候群で高血圧や脳卒中の恐れも
さらに、いびきと似た症状で、命の危険を伴う病気があると梶本氏は警鐘を鳴らす。
「1時間に10秒以上の呼吸停止が5回以上ある場合、“睡眠時無呼吸症候群”の可能性が高い。この病気は疲労回復ができないだけでなく、高血圧症や脳卒中、心筋梗塞などのリスクが2倍以上高くなります」
睡眠時無呼吸症候群やいびきの改善には、「CPAP」と呼ばれる医療機器を使った治療法がある。
「鼻から気道に空気圧を送り込んで気道を開く状態をキープする装置。酸素供給をスムーズにすることで呼吸を補助し、睡眠中に脳の自律神経を休めます。いびきや無呼吸に対する有効率は100%。ただし、いびきの原因を完全に治せるわけではないので、症状が続く限りつけ続ける必要があります」(梶本氏)
◆「いびきの根本的な解決策はない」?
CPAP装置を着用し始めて2年たつという大石文雄さん(仮名・51歳)は治療の経過をこう語る。
「口呼吸がひどかったのでフルフェイスマスク型をすすめられました。いびきをかくことはないけど出張の際に持ち運ぶのが面倒です」
梶本氏曰く、「治療薬など、いびきの根本的な解決策はない」というのが現状。春からの新生活を快適に過ごすためにも、まずは医師に相談し自分ができる最善策を見つけたい。
【梶本修身氏】
「東京疲労・睡眠クリニック」院長。大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授時は”疲労と睡眠”について研究。メディア出演や著書も多数
【竹腰英樹氏】
「東京ロンフェルメ耳鼻いんこう科」理事長。いびきや睡眠時無呼吸症候群、アレルギー性鼻炎などを専門に日帰りで終わるレーザー治療なども行っている
<取材・文・撮影/瀬戸大希 櫻井れき>
◆睡眠を妨げる「いびき」そのメカニズムとは?
今年は暖冬の影響もあって、花粉症による鼻づまりやくしゃみで苦しむ人も多い。そんななか「日中眠くてしょうがない」「毎日8時間寝ても疲労が取れない」といった睡眠の質の低下を訴える人も増えているという。
鼻のトラブルと睡眠の質にはどんな因果関係があるのだろうか。「東京疲労・睡眠クリニック」院長の梶本修身氏はこう指摘する。
「眠れない、疲れが取れないと訴えて来院される方の原因の多くがいびきです。いびきをかくということは、睡眠時に休むはずだった脳の自律神経が活動している証拠。どんなに睡眠時間を取っても、疲労回復にはなりません」
そもそもなぜ人はいびきをかくのか。「東京ロンフェルメ耳鼻いんこう科」理事長の竹腰英樹氏は鼻における睡眠中のメカニズムについて次のように説明する。
「いびきをかく人の75%に鼻閉症状があります。鼻の通りが悪くなっている状態です。仕組みは、空気が睡眠中に狭くなった鼻腔を通ることで鼻いびきを起こす。また圧が強くなった吸気が軟口蓋(のどちんこ)を振動していびきに。鼻腔が狭くなり口呼吸に移行すると軟口蓋や舌が振動すると喉いびきを起こします」
◆いびきを引き起こしやすい人の特徴
さらに竹腰氏は、いびきを引き起こしやすい人の特徴を次のように続ける。
「この時期でいえば、花粉症を抱える人。また、アレルギー性鼻炎や鼻ポリープといった病気を持っている人や口蓋垂が長いなど、鼻や気道が塞がれやすい構造を持っている人ですね。それから肥満体形の人にも多い。加齢に伴い喉の筋肉が衰えていくので、50代以上の人も気をつけなければいけません」
睡眠トラブルの引き金となっているいびき。効果的な改善策はあるのだろうか。竹腰氏は自宅で気軽に試せる対策グッズとして次の3つの方法を挙げた。
「まず、鼻洗浄器は花粉症やアレルギー性鼻炎を持つ方にはある程度は効果的です。それから、下顎を前方に移動させ咽頭を広げるマウスピース。いびきを感知するセンサーと連動することで枕の高さを自動調節し、頭を横に向けてくれる枕もおすすめです。いずれも気道が狭くなるのを防ぎ、いびきをかきにくくする効果があります」
実際に、前述の枕を使用して寝ているという前田まこさん(仮名・32歳)は「夜中に枕の向きが変わり横を向いて寝るようになったら、いびきがなくなった。値段は3万円くらいだったけど、治療は怖いしもっと予算がかかるのでこれで十分です」と効果を実感していた。
◆改善されない場合は医療機関へ
それでも改善されなかった場合は医療機関に頼るのが最善だ。
「口蓋垂が長い、軟口蓋が低いことが原因の場合は、レーザーでの切除治療を考えてもよいかと思います。他には、鼻チューブが口蓋垂まで達することで、上気道の間に空気の通りを確保する『ナステント』(前ページ下)。これもいびきを止めるのに効果がありますが、処方箋が必要です」
ナステントを使用したことがあるという佐藤祐樹さん(仮名・43歳)は不眠が改善できたと満足げだ。
「最初は鼻水やくしゃみが止まらなかったが、数日すると慣れた。熟睡できている実感はありますね」
一方で、竹腰氏は使用に注意が必要なアイテムもあると説明する。
「鼻腔テープのいびきに対する効果は、西洋にて実証されていますが、日本での効果は現状では不明です。それから、いびきの音量を抑えるために口に貼るテープは、鼻閉症状がある際に呼吸ができなくなる恐れがあります」
◆睡眠時無呼吸症候群で高血圧や脳卒中の恐れも
さらに、いびきと似た症状で、命の危険を伴う病気があると梶本氏は警鐘を鳴らす。
「1時間に10秒以上の呼吸停止が5回以上ある場合、“睡眠時無呼吸症候群”の可能性が高い。この病気は疲労回復ができないだけでなく、高血圧症や脳卒中、心筋梗塞などのリスクが2倍以上高くなります」
睡眠時無呼吸症候群やいびきの改善には、「CPAP」と呼ばれる医療機器を使った治療法がある。
「鼻から気道に空気圧を送り込んで気道を開く状態をキープする装置。酸素供給をスムーズにすることで呼吸を補助し、睡眠中に脳の自律神経を休めます。いびきや無呼吸に対する有効率は100%。ただし、いびきの原因を完全に治せるわけではないので、症状が続く限りつけ続ける必要があります」(梶本氏)
◆「いびきの根本的な解決策はない」?
CPAP装置を着用し始めて2年たつという大石文雄さん(仮名・51歳)は治療の経過をこう語る。
「口呼吸がひどかったのでフルフェイスマスク型をすすめられました。いびきをかくことはないけど出張の際に持ち運ぶのが面倒です」
梶本氏曰く、「治療薬など、いびきの根本的な解決策はない」というのが現状。春からの新生活を快適に過ごすためにも、まずは医師に相談し自分ができる最善策を見つけたい。
【梶本修身氏】
「東京疲労・睡眠クリニック」院長。大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授時は”疲労と睡眠”について研究。メディア出演や著書も多数
【竹腰英樹氏】
「東京ロンフェルメ耳鼻いんこう科」理事長。いびきや睡眠時無呼吸症候群、アレルギー性鼻炎などを専門に日帰りで終わるレーザー治療なども行っている
<取材・文・撮影/瀬戸大希 櫻井れき>
