回転寿司から消えるメニューも? 大型コンテナ船の座礁事故で世界中が悲鳴

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 今年に入ってから、コンテナ不足による海上運賃の高騰が止まらない。世界中でリスクが顕在化し、経済活動にも影響を与え始めている。いったい、何が起きているのか、関係者に取材した!

◆世界の海運業者から悲鳴。日本の物価上昇を招くか!?

 たった一台の車の事故が大渋滞を引き起こすことがあるが、それは海上交通でも同様だった。3月23日、スエズ運河で大型コンテナ船が座礁し、“通行止め”に陥ったのだ。船は29日には離礁したが、世界の物流は今なお大きな余波に揺れている。関東地方の大手輸入家具店に勤務する店員は言う。

「スエズの一件で、ベッドやテーブルなど、ポーランド製の大型家具を中心に、納品が1か月以上遅れる見通し。新生活シーズンの書き入れ時ですが、欠品はしばらく解消されないでしょう」

 欧州産ワインを扱うディストリビューターの幹部もこう明かす。

「フランス産やイタリア産の低価格ワインは、温度調節機能のない普通のコンテナで約1か月かけて運ばれてくるのですが、座礁事故の影響で、ウチの商品を載せたコンテナ船は、気温の高い地中海南部に10日ほど停滞していた。過去に例がなく、到着次第品質を確認しますが、場合によっては売り物にならない可能性もある」

◆座礁事故が招いた、世界規模のコンテナ不足

 座礁事故の影響は、現場となったスエズ運河を通過する欧州航路だけにとどまらず、今後、世界中の海上運送に波及する可能性がある。

 国際物流に詳しい拓殖大学商学部の松田琢磨教授はこう話す。

「世界のコンテナ輸送は、コンテナ容器を回転させることで成り立っています。定形のコンテナに貨物を詰め、それを重ねてコンテナ船で運搬する。目的の港に着岸したらコンテナごと荷降ろしし、別のコンテナを荷積みして次の目的地へと向かう。ところが、コロナ禍で欧米諸国を中心に港湾や通関の現場で遅滞が起き、コンテナの滞留が起きているのです」

 これが直接の原因だ。さらにコロナ流行以前に勃発した米中貿易摩擦のせいでコンテナの新造が減少していたことも一因だ。

「昨年上半期のドライコンテナの新造量は前年同期比で36%も減っています。こうした背景に加えて、巣ごもり需要などの増加もあり、コンテナ不足と合わせてコンテナ船運賃の上昇に直結しました。今回の座礁事故の影響で、コンテナ回転の遅滞がさらに進み、状況の改善にさらに時間がかかりそうです」(松田氏)

◆コスト10倍増も。高騰し続ける海上運賃

 主要なコンテナ船航路の運賃の加重平均であるフレイトス・バルチック国際コンテナ指数を見ると、昨年11月から2月末までの3か月で約76%も上昇しており、現在も前年同期比の倍近い水準で推移している。中国・広東省で医療機器などの受託製造や取次業務を行うブライト・ブリッジ・グループ代表の大橋由享氏も海上物流の現場での異変についてこう明かす。

「BtoBの海上運送では、船に積み込むまでを発送者が負担し、それ以降の海上運賃と通関費用、陸上輸送費を受け取り側が負担するのが通例です。しかし、受け取り側のコストが今年に入って3~10倍に上がった。某大手日系物流会社では、一時20倍も船賃を値上げしていました。コンテナの通関後もいつ荷積みされるのかわからず、到着も2~3日の遅延はザラという状態が続いています」

◆先が見えない海上運送。経済活動にも影響が

 こうした状況について「今年の秋以降も続く」と話すのは、複数の外航貨物船を所有する国内海運業の経営者だ。

「冷凍コンテナやタンクコンテナなどが登場したことで、ありとあらゆるものが運べるようになり、コンテナ船は約20年の間に海上貨物輸送の主役となると同時に、大型化が進んできた。

 世界の主要航路では、10年ほど前までは5000個積みのコンテナ船が主流だったが、今では座礁事故を起こした船のような2万個積みのコンテナ船も増えている。アライアンスを組んで、大きなキャパシティを複数の企業で融通し合うほうが、コスト面でも環境負荷面でも有利だからです。

 ただ、2万個積みレベルの大型船は入港できる港が限られており、国内で言えば京浜と神戸くらい。さらに荷積み荷降ろしにもより時間がかかる。平時はいいいですが、今回の座礁事故やコロナによる港湾の稼働率の低下などイレギュラーな事態になると、とたんに脆くなる」

 世界の港湾が混雑するなか、滞船が増えたり、満船を待たずに出港するケースも増えており、コンテナの偏在とコスト上昇の原因となっている。コンテナ製造も中国に依存するなか、新造コンテナバンの価格も前年の3倍ほどになっており、これも運賃に転嫁される結果となっているという。

 国際物流の終着地である消費者にもすでに影響が出始めている。欧米では、インスタントコーヒー用のコーヒー豆が大量に不足し、アメリカではチーズ不足が叫ばれている。日本も例外ではない。『日本経済新聞』(4月2日付)によると、コンテナ不足による入荷停滞が理由で、東京・大田の青果仲卸が外食店や小売店などに販売する輸入レモン、グレープフルーツの価格が上昇。前年同期比でそれぞれ、12%高、11%高となった。

◆回転寿司から消えるメニュー

 南米産の冷凍魚介類を輸入する業者もこう話す。

「外食チェーンやスーパー各社は、場所を取るうえに廃棄ロスになることも多い冷凍魚介類をできるだけ在庫として抱えないよう、ギリギリに発注するんです。南米産の冷凍輸出用の魚介類はこれからがシーズンですが、これまでのタイミングで発注していては、調達が間に合わない。結果、回転寿司などではアジとタイくらいしか回らなくなることも考えられます」

 食品だけではない。ニトリの広報担当者は週刊SPA!の取材に「昨年秋頃より、主に南中国・東南アジア地域からの商品輸入に対して多少の影響を受けている」と回答し、「今の状況は当面続くとみて準備している」としている。

◆日本が直面する、新たな物流危機

 紹介したように、コンテナ不足により足元ではいろいろな影響が出始めているが、時間がたてばいずれは解消するだろう。しかし、今回の事態を機に、日本は新たな危機に直面するかもしれない。

「日本の荷主はこれまで、運送コストに厳しすぎました。しかし、今回のコンテナ不足を機にある程度までの値上げを適正価格として受け入れなければ、より高い運賃を提示する海外勢に買い負ける事態が起こります。これによって日本にモノが入りづらくなることも考えられます。

 すでにアジアと北米・欧州を結ぶ航路に占める日本の割合は5%に満たず、中国や韓国だけでなく、ベトナムやタイなどASEAN諸国よりも存在感が小さくなってきています。このままでは、世界の物流から取り残されてしまいます」(松田氏)

 物流の問題以外にも、さまざまな影響を及ぼすコンテナ不足。我が国にとって問題は深刻だ。

◆コンテナ不足によって価格高騰&品薄に!?

・家電製品
世界中の家電を製造する中国では、コンテナ不足により出荷が大幅に滞っている。スマホやガジェットもしかり。コロナ禍による巣ごもり需要もあり、家電はじわじわと値上がり中だ

・建築木材
米国の住宅市場の活況とコンテナ不足で建築木材が高騰している。『Housing Tribune』(4月8日付)によると欧州産の集成材が日本に入ってこない状況だとか。戸建ての建築費も高騰か

・冷凍海産物
「冷凍とはいえ生食用は鮮度が重視され国内在庫は少なく、コンテナ不足で欠品になる可能性が高い」(食品商社社員)。アルゼンチン産アカエビの輸送コストはすでに2割ほど上昇している

・レモン
『日本経済新聞』(4月2日付)は輸入レモンの価格が前年4月から12%上昇したと報じた。2月以降、米国産が入ってきていないとも。家飲みシフトでレモン消費も増えるなか、影響大だ

・トイレットペーパー
コンテナ不足でパルプの輸出入が世界中で滞っており、主に欧米ではトイレットペーパー不足になると言われている。日本も約17%は輸入に頼っており、多少の影響はありそうだ

<取材・文/奥窪優木 五月花子>


関連リンク

  • 4/18 8:51
  • 日刊SPA!

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この記事のみんなのコメント

4
  • ***

    4/21 13:00

    家具、ベッド、レモン、回転寿司のネタ……何年間も危機になる訳では無いやろ、回復するまで待てば~?回転寿司なんてコロナ状況なんでネタが無くて丁度良い\(^-^)/感染リスクのある外食なんぞに行く事が無くなれば良いわ。どれも数ヶ月程度なら、いや一生無くても死にませんわ。

  • まる☆

    4/21 12:33

    この人本当に物流のこと解ってるのかな?ただ資料揃えて書いてるだけだと思う。コンテナ不足の影響の発端はコロナの蔓延。一文字も書かれてない。コロナ禍で中国で新たにコンテナが作れなくなり、物流も航海に日数のかかる欧州にコンテナが行ったっきりで貯まりにたまって、逆にアジア界隈で全然足りなくなった、のが始まりだよ。海上運賃は既に値上がりてるし存在薄くなるなんて過小評価をあおる。左翼か隣国の腰巾着だな

  • 無ければ無いなりに生活すれば良いよ

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