「実は、妊娠してから夫と…」鬱屈した27歳女が思わず漏らした本音

マサル@ある女の家


結婚している限り、妻が一番大切な女だ。

日本中を見渡したって、リカに敵う女はどこにもいない。

だが、リカは悪阻を理由に一日中寝込んでいる。

3ヶ月前にベッドで蹴り飛ばされたあの日から、一度もリカを抱いていない。拒絶するということは、「ご勝手にどうぞ」という意思表示だと受け取った。

― まぁ、妊娠中なんてどこの家庭もこんなもんだろ。

バレなければ、何の問題もない。リカだってそう思っているはずだ。彼女は、女遊びの一つや二つで発狂するようなタマではない。

「マサルさん、こんなに頻繁に私と会ってて大丈夫なの?」

ジェラート ピケの部屋着に身を包んだマミが、心配そうな顔でこちらを見つめている。

「大丈夫だよ。密会だから」

「密会って響き、ドキドキする」

マミの口元が緩み、笑みがこぼれた。

女優の妻がいて、もうすぐ子どもが生まれる。仕事も順調。水面下で女遊びもうまくやっている。僕は腕枕をしながら、全能感に浸っていた。

― 女遊びがバレる男ってバカだよな。僕みたいに上手くやればいいのに。

マサルの女遊びが、絶対にバレない理由とは?

「おいで」

僕がそう言うと、マミは嬉しそうな顔をして抱きついてきた。従順で、可愛らしい、子犬みたいな女だと思った。

リカとは真逆のタイプだ。綺麗系というより可愛い系。美人ではないがタイプの顔。

プライドの高い美人は、一番になりたがる。リカに対抗してきたりすると面倒なので、このくらいの女が丁度良い。

「マサルさんって、私のことどう思ってるの?」

「可愛いなって思ってるよ。タイプなんだよね」

マミと足を絡ませると、柔らかい肌がしっとりと吸い付いてくる。隣に連れて歩くなら、細くて引き締まった美脚を持つリカのような女が至高だが、ベッドの上となると話は別だ。

「うそだぁ、ガキだって思ってるでしょ」

「若いって最高だよ」

マミはまだ22歳で遊び盛り。家庭を妬んで崩壊させる可能性があるから、遊び相手に結婚適齢期の女は選ばない。

「マサルさんと一緒に過ごせて幸せ」

「マミといると癒されるよ」

LINEはスクショされる恐れがあるから、極力しない。甘い言葉は直接伝え合い、文面には残さない。


ただでさえ狭いシングルベッドの上で、ぎゅっと密着する。甘ったるい香りに包まれながら、他愛もない会話をした。

― 平凡な幸せってこういうことか。

日本一の美人と言われているリカと結婚して浮かれていたが、実際に一緒に住んでわかったことがある。

あのレベルの美人が家にいると心が休まらない。

「悪阻で具合が悪いから、一人にしてほしい」とリカは部屋に篭りきり。

プライドが高くて僕に頼ってくることはないので、顔は綺麗だが、可愛げは皆無。

鋭い眼光で睨みつけ、僕を蹴り飛ばしてきたあの日から、恐怖さえ感じるようになった。

一方、マミと一緒にいるときは、骨の髄までリラックスできる。気を使うこともないし、格好つける必要もない。とにかく優しくて、僕の全てを受け入れてくれる。

僕たちは終始ぴったりとくっつき、とろけるようにまどろんだ。十分に満たされてから、もう一度優しくキスをしてマンションを後にした。

「またね、おやすみ」


マミが住むマンションの家賃は、僕が払っている。

港区1LDK、月額25万で癒され放題のサブスクリプション。

バカな男たちは、一緒にタクシーに乗ったり、人目につくような場所で会ったり、自宅やホテルなど決定的な場所で遊ぶから、撮られてしまう。

セキュリティの高いマンションをあてがい、部屋の中で合流すれば第三者にバレることはない。たった25万円でリスクヘッジできるなら安いものだ。

それに、女に恨まれないようにするためには、それ相応の対価が必要なのだ。

そこら辺の男たちは、バカな上にケチだから女遊びがバレるのだろう。対価を支払わずに自分の欲だけを発散させるから、女に恨まれて暴露される。

女遊びは、愛も金も余っている男だけができる贅沢なものなのだ。

一方、リカがベビーシャワーで耐え難い気持ちになってしまったワケ・・・

リカ@六本木


CHANELのマトラッセにCECILIE BAHNSENのペプラムトップスを合わせ、3ヶ月ぶりにオシャレをしたことに気付き、感慨深い気持ちになる。

遂に妊娠5ヶ月。

安定期に突入し、友人たちがささやかなベビーシャワーを企画してくれたのだ。

レストランの個室の扉を開くと、部屋一面がゴールドのバルーンで飾り付けられ、プレゼントのエルメスの揺木馬も置かれていた。

「リカ〜!調子はどう?さすが、体型全然変わってないわね!」

妊娠が発覚したあの日以来、久しぶりに会った久我アサミは、とびきり明るくて、彼女に会った瞬間、僅かに残っていた悪阻の余韻が吹き飛んだ。

「悪阻が酷くて、太る暇がなかったの。でも、やっと解放されて最高に嬉しい!」

私の悪阻はかなり酷いレベルだったらしく、水すら飲めず5kgほど痩せてしまったのだ。

悪阻は毎日24時間一瞬たりとも私を開放してくれることはなく、ここ最近は、マサルとのディナーは全てキャンセルしていた。

肌や髪の手入れなどは一切できず、そんな悲惨な姿をマサルに見られたくなくて、地獄のような日々をたった一人で耐え抜いた。

だから、マサルともろくに会話はできておらず、誰にも会えなかったので、積もる話がたくさんある。


幹事の山岸マコは、某有名美容雑誌の編集長で4歳の子持ち。アサミは、美容皮膚科の医者で、3歳の子持ち。

二人とも経営者の夫を持ち、絶賛子育て中のため、色々と分かり合える気がして会えるのを心待ちにしていた。

「リカ、すごい幸せオーラが出てる!」

「え、そう?久しぶりに二人に会えて嬉しいからかな?」

マサルとの生活はうまくいっていないし、特段幸せでもないけれど、人前に出ると口角を上げて女神のような微笑みをしてしまうのは、女優時代の名残なのかもしれない。

「マサルくんって、なんだかんだ言っていいお父さんになりそうよだね〜」

「バイタリティ凄そうだし、リカのこと溺愛してるし。子どもが産まれても、レスの心配はなさそうね」

何も知らない二人はマサルのことを絶賛してきたが、二人ならわかってくれる気がして、私はつい本音を漏らした。

「いや、既にレスなの。悪阻が辛すぎて妊娠してから一度も…」

「悪阻中は何もできなくて当然よ。妊娠中の行為はリスクもあるし、レスにカウントしないから」

アサミに続けて、マコが呆れたように笑った。

「うちなんて、5年もレスよ。お受験が終わって無事に小学校に入学できたら、離婚しようと思ってるから」

「どこもそんなものよね〜」

重い話をあっけらかんと笑いながら話す二人を見ていると、私の悩みなんて取るに足らないものなのだと言われているような気がした。

「リカ!子どもが産まれたらジーナ式がオススメ。スケジュールをルーティン化するとね、お部屋を暗くしてベッドに置くだけで勝手に寝てくれるようになるのよ」

「私もジーナ式にしたよ〜。超楽だよね。寝かしつけに時間取られないし。リズムができてからは、シッターに預けて毎晩外出してたよ」

全く苦労を感じさせない二人の美しさと快活さを目の当たりにすると、子育ては大変なものだという世間の風潮が嘘みたいに感じる。

「ねぇ、授乳すると本当に胸って垂れるの?」

「うん、信じられないくらい萎むわよ。だから私は授乳終わってから豊胸したよ」

「あはは、私は垂れるの嫌だしお酒も飲みたいから、すぐに薬で止めてミルクにした。ミルクだと人に預けるとき楽だよ。ていうかマコどこで豊胸したの?何cc入れたの?自然じゃない?」

ホテルのようにゴーシャスな産院で完全無痛で出産。子育てはナニーやシッターと協力し、毎晩外出を楽しむ。授乳で胸が萎めば豊胸し、夫以外の彼氏と息抜きしつつ上品な妻を演じてお受験に挑む。

― 私もこの道を辿ることになるのだろうか…。

仕事もプライベートも子育ても楽しんでいる彼女たちを見ていると、「すべて金で解決できる」というマサルの言葉が真実味を帯びてくる。

マサルも彼女たちも、私の不安を軽々と吹き飛ばしてくれたけど、心の底には得体の知れないモヤモヤが残っていた。

大人になってから気兼ねなく付き合える友人というのは、生活レベルが同程度であることが何よりも重要だと思っていたが、心の底から分かり合える親友みたいな存在にはなり得ない。

豊胸手術の話題で盛り上がっている彼女たちに、私が抱える不安や悩みをこれ以上打ち明ける気にはなれず、私は小さなため息をついた。

― はぁ、心置きなく何でも話せる”アイツ”に久しぶりに会いたいな…。


私の心には、ある人物の顔が思い浮び、気がつくと彼にLINEをしていた。

『ユウセイ、久しぶりに会わない?』


▶前回:「気持ち悪い…!」新婚1年目で、妻が夫に嫌悪感を抱いてしまったワケ

▶NEXT:4月9日 金曜更新予定
リカが出産直前に久しぶりに会った男の正体とは…

画像をもっと見る

関連リンク

  • 4/2 5:06
  • 東京カレンダー

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます