『呪術廻戦』五条悟は「営業マンとしても優秀」と話し方のプロが考える理由

拡大画像を見る

 その人気の高さから“ネクスト鬼滅”の呼び声も高い『呪術廻戦』。よく練られた世界観の設定や魅力的なキャラクターが人気の秘訣ですが、実はこの設定やキャラクターの技には、コミュニケーションやビジネスで役立つ考え方が満載なのです。

◆五条悟の「茈」は営業に必須のスキル

 たとえば、作中でも圧倒的な力を誇る人気キャラクター・五条悟(ごじょうさとる)の呪術もそのひとつ。彼は「無下限呪術」という強力な技の使い手で、物体を吸い寄せる術式順転「(あお)」と、対象を吹き飛ばす術式反転「(あか)」を駆使して多くの敵と戦います。

 たいていの敵なら「蒼」と「赫」で対処できるのですが、難敵の相手には、順転と反転の力を衝突させることで発動する複合術式・虚式「(むらさき)」を使います。この「茈」の威力は絶大で、作中に初めて登場したシーンでは地形を変えてしまうほどの力がありました。

 この「茈」という技の考え方は話術でも役立ちますし、実は営業マンの必須スキルといっても過言ではありません。

◆「蒼」と「赫」をプレゼンに置き換えてみると…

 人前でのプレゼンテーションを例にとって「蒼」と「赫」の状態を説明すると、「蒼」は意識の方向を相手から自分に向けるもの、「赫」は意識の流れを自分から相手に向けた話し方といえます。意識をどこにフォーカスしているのかによって効果が変わるのです。

 簡単に説明すると、以下のようになります。

・術式順転「蒼」:意識を聞き手である「相手」に向けると、「相手から自分」に向けて情報がやってくる
・術式反転「赫」:意識を話し手である「自分」に向けると、「自分から相手」に向けた情報発信の流れになる

 意識を自分に向け続けると、相手の気持ちがどんどん離れていきます。逆に意識を相手に向けていると、相手の気持ちが自分に向いてくるという不思議な現象です。

「赫」とは、自分から相手に向けた状態ですから、「私はこう思います」「私の考えはこうです」「私はこれが問題だと感じました」という話し方になります。意識のフォーカスは自分で、聞き手である外側に向かって情報を放つような話し方です。

 これは発表の基本だといえますし、多くの方が想像するプレゼンのスタイルではないでしょうか。

◆「蒼」を意識的に取り入れる必要があるワケ

 ところが、ここに問題があります。よほど興味のあるネタや、興味のある人の話でなければ聞き手は「聞いてられない」という状態になってしまうのです。聞き手は話をする人に興味があるのではなく、聞き手である自分自身のことに興味があるものです。

 そこで登場するのが、術式順転の「蒼」です。具体的には「あなたはどう思いますか?」「あなたの問題にこう役立ちます」「あなたはどう感じますか?」といった話し方になります。

 自分の意識のフォーカスを聞き手である相手に向けておき、聞き手である外側から、自分に向かって情報を集めるような効果があります。これによって聞き手の興味や関心を維持することができるのです。

◆「意識のフォーカス」を切り替える

 よくあるプレゼンの場では「情報発信をしよう」「用意した原稿を読もう」とするあまり、自分のことを語りまくる一方通行の「赫」になりがちですが、相手の興味、関心をあつめる「蒼」も使うことが必要となります。

 では「蒼」と「赫」の両方を使った例を挙げましょう。

〇もっとコミュニケーションがうまくなったらいいと思いませんか?(蒼:フォーカスを相手、情報は相手から自分へ流れる)
〇私も話すことがコンプレックスで、いろいろと勉強しました(赫:フォーカスを自分、情報は自分から相手に流れる)
〇ちょっと意識するだけで格段にうまくなるコツに興味ありますか?(蒼:フォーカスを相手、情報は相手から自分へ流れる)
〇今回は相手に伝えるうえで重要なポイントを3つお伝えします(赫:フォーカスを自分、情報は自分から相手に流れる)

 このように意識のフォーカスと、相手、自分、相手、自分と切り替えていくのがポイントです。

◆「茈」の話術をプレゼンに取り入れる

 さらに「蒼」と「赫」を組み合わせた「茈」の話術を繰り広げることで、インパクト抜群のプレゼンを行うことができます。例を挙げましょう。

「話を上達するには、相手の考えを理解することが必要です。そうだと思いませんか?」
「原稿を棒読みすることはやめましょう。棒読みされるとつまらないですよね?」
「視覚的な要素もいれましょう。声だけ聞いていると寝ちゃいそうになりませんか?」

 このように自分から情報を発信しながら、相手にも考えてもらう高度な合わせ技が「茈」です。ぜひ試してみてください、効果がありそうだと思いませんか?

 また、「蒼」と「赫」のように、正反対の要素を組み合わせる話術は商品を販売するときなどにも役立ちます。プラスとマイナス、メリットとデメリットの両方を伝えるような話し方です。

◆「マイナスなこと」も伝えるメリット

 たとえば、「値段が高いが、いい味です」「手間はかかりますが、その分、効果は抜群です」といったよういに、伝えるととても誠実に伝えられます。

「マイナスなことを言いたくない場面で、あえてマイナス面を伝えることでプラスとなす」、まさに術式反転ですね。

 悪い面を隠し、いい面だけを強調して販売したとしましょう。もし、相手があとからそれに気づいたら、どんな気分になると思いますか? 「騙された!」となりますよね。それこそ「呪い」が発生していしまいます。

 ましてや今やSNSの発達している時代ですから、すぐに悪い情報が展開してしまうでしょう。ですから、真逆の内容も伝えることは必要な伝え方だといえます。

◆真逆の情報を意図的に加える

 例に挙げたものに限らず、あらゆる物にはプラスとマイナスの面があります。どこに焦点を当てるかによって、プラスやマイナスの見方は変わってくるので、日頃から物事を多面的に捉えるトレーニングを行っておくと、実践しやすくなるでしょう。

 さらにそこに「茈」を加えると、もっとスゴイ効果となるのです。

 たとえば、「値段が高いけど、効果が素晴らしい」という情報に加えて、「実は有名な高級ホテルで使われていて、一般ではほとんど出回っていません」などの情報があったら、価格や機能の次元よりもさらにひとつ上の価値の話となっていきます。

 このように真逆の情報からさらに一段上の情報を加えることで、とても効果的に影響力を発揮できるようになるのです。

◆『呪術廻戦』は優れたオマージュの宝庫

『呪術廻戦』はとても優れた作品です。過去の作品をパロディ(ジョーク)でもなく、パクリ(盗用)でもなく、オマージュ(尊敬しつつ模倣する)という表現をしています。

 これこそビジネスに必要な力といえるでしょう。

「オリジナルなどがない」といわれている現代、いいものを素早く自分に取り入れる「オマージュする力」は、ビジネスでも大いに役立つので、そういった観点から作品を読み進めるのも一興だと思います。

【大森健巳】
ワールドクラスパートナーズ株式会社代表取締役。日本交渉協会特別顧問。短期間に変化の起きるビジネススキルの向上を目指すセミナーや講演会を行っている

関連リンク

  • 3/31 8:35
  • 日刊SPA!

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます