382円の万引きで逮捕…元マラソン女王・原裕美子「窃盗症(クレプトマニア)だった私」衝撃告白

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 世界の舞台で活躍したトップランナーが現役時代から悩み苦しみ続けた心の病。その“壮絶な過去”を包み隠さず語った!

 彼女の足の指の爪は、どれ一つとして、きれいに生えているものはない。グニャグニャと波打ったもの、赤黒く変色したもの、極端に小さいもの……。

「だから私は、足の爪にネイルもできないんですよ。年頃なのに(笑)」

 そう言って、原裕美子(39)は明るく笑った。彼女は2008年、北京五輪女子マラソン代表候補になった、元トップランナーだ。彼女の足の爪が激しく変形しているのは、その過去の栄光の“代償”である。

「マラソンでは、一緒に走る選手とリズムが合わず地面にぶつけたり、坂道を下るときにつま先が靴の先に当たったりします。すると、爪の中に血豆ができる。それでも走り続けるため、血豆の上に血豆ができて、最後は爪がはがれ落ちます。それを繰り返すうちに、ちゃんと生えなくなるんです。でも、今の私にとっては、この爪も愛おしく思えます。世界のメダルを獲りたいと思って死ぬ気で練習をした自分、ケガで苦しんだ自分、そして人生がうまくいかなくて悩み苦しんだ自分の過去が、ここに詰まっている気がするんですよね……」

 17年8月と18年2月、すでに引退していた原の名前が、メディアで大きく報じられた。理由は、連続して起こした“万引き事件”。特に18年のそれは、前回の事件の執行猶予中に犯した罪とあって、世間に大きな驚きを与えた。

「18年は、実家に近い太田市内のスーパーで万引きをして再び逮捕されました。ただ、万引きの瞬間のことは、頭の中にもやがかかっているようで、思い出せないんです。気づいたら、チョコレート菓子と袋入りのアメを服の中に隠し持っていた。“早くカゴに移さなきゃ”と焦って店内をグルグル回っていたところ、万引きGメンに声をかけられました。私にとって、万引きによる7度目の逮捕でした。やめたくてもやめられない、盗みたくないのに盗んでしまう自分に絶望し、連行された伊勢崎警察署の留置場で、自殺を試みました。でも、情けないことに死に切れませんでした」

 この彼女の言葉に違和感を抱く人もいることだろう。“盗みたくないのに盗む”万引きなど、あるのか――。

 実は、原は「窃盗症(クレプトマニア)」という病を患っていた。窃盗症とは、近年、日本でも認知されるようになってきた精神疾患の一つだ。アメリカの精神医学会によると、診断基準として「万引きの衝動に対する抵抗ができるか」「不合理な万引きを繰り返しているか」が挙げられている。

「“万引きが病気だ”と言うと、信じられない方もいらっしゃると思います。私もずっと、万引きをやめられない自分は心が弱いからだ、と思っていました。でも、今日はちゃんと買い物をするんだ、と決意してコンビニやスーパーに行っても、店に入ったとたん、“あれが食べたい”“何を盗ろう”という考えに頭が支配されてしまう。自分で自分の心をコントロールできない状態でした」

 18年の事件では、原は財布の中にクレジットカードや2万円以上の現金を持ちながら、総額382円分を万引きし、逮捕されている。今度、捕まれば、実刑判決が確実な中での犯行だった。この事件の裁判では、彼女の窃盗症という病が考慮され、「懲役1年執行猶予4年保護観察付」という異例の判決が出ている。

「あるときから、万引きをする瞬間のドキドキする緊張感と、店を出た後の解放感に、快感すら覚えるようになっていました。その気持ちが落ち着くと、強烈な罪悪感を覚え、絶対に次はしないと誓うのに、店に行くと、また盗んでしまう。何度も逮捕される中で、両親や兄弟を絶望させ、家族関係も壊れていきました。それでも15年以上、万引きをやめられませんでした」

■“食べたら吐く”という減量法

 なぜ、原は窃盗症になってしまったのか。その端緒は、長距離選手としての“減量苦”だったという。

「高校卒業後、実業団の京セラに入社した私が、まず直面したのが減量の問題でした。体質的に、どうしても落とせない体重に悩んでいたところ、偶然、食べたら吐く、という解決策を見つけました。それは大きな間違いだったんですが、つらい食事制限から解放してくれる食べ吐きに頼るようになっていきました。食べ吐きをするには、大量の食べ物が必要です。次第に、私は食べ吐き用に万引きするようになりました。減量で摂食障害を患ったことが、のちの窃盗症につながりました」

 摂食障害と窃盗症の関連性もまた、専門家から指摘されている。物理的な飢餓が、脳の飢餓状態に置き換わることで、“食べ物を貯め込みたい”という強い衝動を生み出すといわれる。

「私自身、18年の事件後、専門的な治療を受けたことで万引きの衝動がなくなりました。回復したことで、“やっぱり私は病気だったんだ”と実感しています。私は摂食障害と窃盗症に長い間、誰にも相談できず、一人で悩んできました。今回、私は隠したい自分の過去を可能な限り、本に記しました。人知れず摂食障害に悩んでいるアスリートは、実は多いんです。本人や家族など周囲の人が苦しみから抜け出すために、私の経験が小さな手助けになれば、と願っています」

 過去を乗り越え、前に進もうとする彼女の“第二のスタート”を応援したい。

原裕美子(はら・ゆみこ)1982年、栃木県出身。元マラソン選手。京セラ入社後の05年、名古屋国際女子マラソンで初マラソン・初優勝を果たす。07年、大阪国際女子マラソン優勝、世界陸上に2大会連続出場し、08年の北京オリンピック代表候補になる。現役時代から摂食障害、窃盗症に苦しみ、これまで万引きで7度、逮捕される。18年2月の逮捕を機に自らの病を公表。治療を続けながら、回復の道を歩む。

●発売中の初の著書『私が欲しかったもの』(双葉社/税込み1430円)

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この記事のみんなのコメント

7
  • りぇし

    3/29 18:36

    この病気、病気だからと罪が軽減されるほど、世の中は甘くは無いそうです。ただ、そう診断されると、本人達を苦しめる悪循環を絶つための治療の糸口が見つかるそうです。

  • ***

    3/29 18:31

    まぁ病気と書いてあるけど、病気だからと言って万引きして良い訳ありませんな\(^-^)/

  • いち(

    3/29 18:20

    後で強烈な罪悪感に襲われるんだろ?何故その時に返しに行かない?

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