「スカーレット」63話。喜美子と八郎の麗しい「夫婦貯金」、照子に陣痛が!


(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)

連続テレビ小説「スカーレット」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第11週「夢は一緒に」63回(12月11日・水 放送 演出・小谷高義)


丸熊陶業でも喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)の仲が噂になっているため、早急に結婚を常治(北村一輝)に許してもらわないといけない。
さっそく八郎が川原家にやって来た。
が、常治は取り合わない。第一回の挨拶では、やたら慇懃無礼な態度をとる。
面白いのは、粗暴で教育を受けてない常治が、ものすごくちゃんとしたお詫びの言葉を言うこと。そこは長年の商売経験によって培われたものなのか。トンチの効いた意地悪な言い方といい、地頭は悪くない人ではあるのはわかる。だからこそ、生き抜いてこられたのだろう。こういう野生的な生きる力のある男に惚れるタイプの女はいるものだ。

戸田恵梨香、美しい


常治は毎回毎回、違うやり方で、八郎を避け続ける。
八郎は、許してくれるまで100回でも200回でも挨拶に来るつもりらしい。
八郎の誠実さを心の支えに、貴美子が本来の仕事(絵付け)に励んでいる横顔は美しい。大人の女性の美があった。やっぱり指の細長さが魅力的だ。
そう、陶芸と恋に夢中になっていたが、まだ絵付け火鉢の絵を描く仕事が彼女の本業である。

夫婦貯金


本業の合間、陶芸の勉強は続くが、授業料をとると八郎は言い出す。がめついわけではなく、「夫婦貯金」の提案だった。
どこまでも真面目な八郎。それに比べて喜美子は「ええ〜」といやな顔をする。お金に関してはケチでがめつい。

お金を貯めて、美術館や映画に行こうと八郎は、喜美子の世界を広げていく。
いっしょに美術館や映画に行くことで、じょじょに関係が深まっていく展開というものが物語では書かれがちだが、結婚が先に来て、それからデート的なことになっているのが喜美子と八郎。お見合い時代とはそういうものなのだなあ。

63回で興味深いのは、照子(大島優子)が言う「結婚することでしょってるものが軽くなるんや」というセリフ。
川原家の貧しさや父母の面倒くささ、ふたりの妹への責任など、いろいろ背負っている喜美子が、結婚によって負担が軽減するという考え。

ドラマにおける「結婚」は夫の家で苦労する、結局いつも女性が損するという描かれ方が多い。朝ドラはもれなくそれがついてくるし、視聴者もそれを期待している節もある。が、「スカーレット」はそうじゃなく、新しい可能性を拓くこととして描かれる。
女性が、手に職をつけて、家の呪縛から逃れるという生き方もあるが、結婚だってその方法のひとつなのだ。
現代の女性が専業主婦願望をもつのもそのせいだろうか。

照子に陣痛


照子も結婚して荷物が軽くなったらしい。兄を戦争で亡くして、残った自分が家を継がないといけないと思っていたところに敏春が現れ、父も亡くなって、熊谷家の男はいなくなってしまった、照子にとって敏春は支えなのだ。そして敏春も八郎と同じく、優しくて、都会(京都等)で芸術などの教養を身に着けている人物である。

そんな照子にいよいよ陣痛が……。

話をしているとき、痛みが来るが、また持ち直し、語り笑っているとまた痛みが……。
「おさまった」
「ふざけてんの」
「痛い」
「やっぱり陣痛やんか」
あたふたしながら、ふたりは深呼吸。
たいてい陣痛がくる場面は、慣れない経験への不安、尋常じゃない痛みの恐怖等、深刻な場面になる。それは出産の喜びを強調するためでもあるが、陣痛を愉快な展開に描いてしまう軽やかさも悪くない。

こういうふうに描けば、「結婚」や「出産」離れの若者たちが「結婚」も「出産」にも親しみがわく……のかな。

視聴率は19%台どころか18%台が当たり前になってきた。これまで20%超えが当たり前だった朝ドラだがここへ来て勢いがない。「ひよっこ」のときも最初そんな心配があったが後半盛り上がった。視聴率がすべてではないし、整合性より瞬間のノリを取るようなことをせず、隙のない構成と描写力があるので、このまましっかり描き続けてほしい。
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)


登場人物のまとめとあらすじ (週の終わりに更新していきます)


●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。中学卒業後、大阪の荒木荘に女中として就職。三年働いた後、実家の経済事情の悪化により信楽に戻り、丸熊陶業初の女性絵付け師となるが、絵付け火鉢が下火になり、陶芸の勉強をはじめる。

川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。運送業を営んでいる。家に泥棒が入り、
喜美子の給料を前借りに行く。オート三輪を無理して買ったうえに捻挫して働けなくなって喜美子を呼び戻す。

川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。東京の熨斗谷電機の工場に就職する。新人教育係に恋をする。
川原百合子…福田麻由子 幼少期 稲垣来泉→住田萌乃 末っ子でおとなしかったが、料理もするようになり、直子が東京に行くと気丈になっていく。家庭科の先生になるため大学進学を目指す。

●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死しているため、家業を継がないといけない。婦人警官になりたかったが諦めた。喜美子とは幼いときキスした仲。京都の短大を卒業後、婿をとり、身ごもる。

熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。娘には甘い。昭和34年、突然死。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母。敏春を戦死した息子の身代わりのように思っている。
熊谷敏春…照子の婿。 京都の老舗旅館の息子。新商品開発に意欲を燃やす。先代の突然の死により
社長となる。

●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の幼馴染。子供の頃は心身共に虚弱だったが、祖母の死以降、キャラ変し、モテるように。高校卒業後、役所に就職する。

大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。大手雑貨店の影響で雑貨店からカフェに商売替えする。
大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。マツの貯金箱を預かったことで離婚の危機に直面する。

●信楽の人たち 
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を「ゴミ」扱いされる。

工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。
…中川元喜  常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
博之…請園裕太 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。

所沢…牛丸裕司 信作の上司
黒岩次郎…上野俊介 幼少期 溝上空良  信作の幼馴染 お見合い大作戦に参加する。


●信楽 丸熊陶業の人々
城崎剛造…渋谷天外 丸熊陶業に呼ばれて来た絵付け師。気難しく、社長と反りが合わず辞める。
加山…田中章 丸熊陶業社員。
原下…杉森大祐 城崎の弟子。
八重子…宮川サキ 丸熊陶業で陶工の食事やお茶の世話をする。
…西村亜矢子 丸熊陶業で陶工の食事やお茶の世話をする。
西牟田…八田浩司 丸熊陶業の中堅社員。

深野心仙…イッセー尾形  元日本画で戦後、火鉢の絵付け師となる。喜美子を9番目の弟子にする。
若社長の代になり、長崎の若手陶芸家・森田隼人に弟子入りすることにする。
池ノ内富三郎…夙川アトム 深野の一番弟子。深野組解散にあたり、京都に就職。
磯貝忠彦…三谷昌登 深野の二番弟子。深野組解散にあたり、大阪に就職。

藤永一徹…久保山知洋 陶器会社で企画開発をやっていて、敏春に雇われる。
津山秋安…遠藤雄弥 大阪の建築資材研究所にいて、敏春に雇われる。

十代田八郎…松下洸平 京都の美術大学出身。祖父が買った深野の絵をお米に代えた過去がある。丸熊陶業の新商品開発の仕事に携わり、その合間に陶芸の修業をしている。喜美子を女性として意識する。

森田隼人…長崎の陶芸家。深野が弟子入りを申し込む。

●大阪 荒木荘の人々
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対するが、辛抱して彼女を一人前に鍛え上げたすえ、引退し娘の住む地へ引っ越す。女中の月給が安いのでストッキングの繕い物の内職をさせる。
酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。妹を原因不明の病で亡くしている。喜美子に密かに恋されるが、あき子に一目惚れして、交際のすえ、荒木荘を出る。
庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者だったが、不況で、尊敬する上司・平田が他紙に引き抜かれたため、退社。女性誌の記者となり、琵琶湖大橋の取材のおり、信楽の喜美子を訪ねる。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて俳優を目指すが、デビュー作「大阪ここにあり」以降、出演作がない。

●大阪の人たち 
マスター…オール阪神 喫茶店のマスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。
平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ 喜美子の働きを気に入って、引き抜こうとする。
不況になって大手新聞社に引き抜かれた。
石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加 
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。

泉田工業の会長・泉田庄一郎…芦屋雁三郎 あき子の父。荒木荘の前を犬のゴンを散歩させていた。
泉田あき子 …佐津川愛美 圭介に一目惚れされて交際をはじめる。

ジョージ富士川…西川貴教 「自由は不自由だ」がキメ台詞の人気芸術家。喜美子が通おうと思っている美術学校の特別講師。
草間里子…行平あい佳 草間と満州からの帰り生き別れ、別の男と大阪で飯屋を営んでいる。妊娠もしている。

草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいて、帰国の際、離れ離れになってしまった妻・里子の行方を探している。喜美子に柔道(草間流柔道)を教える。大阪に通訳の仕事で来たとき喜美子と再会。大阪には妻が別の男と結婚し店を営んでおり、離婚届を渡す。東京に住んでいたが、台湾に貿易の仕事に行くことに。

あらすじ


第一週 昭和22年 喜美子9歳  家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。
第四週 昭和30年 喜美子18歳 女中として一人前になり荒木荘を切り盛りする。
第五週 昭和30年秋から暮にかけて。喜美子、初恋と失恋。美術学校に行くことを決める。
第六週 昭和31年 喜美子、信楽に戻り、丸熊陶業で働きはじめる。
第七週 昭和31年 喜美子、火鉢の絵付けに魅入られ、深野心仙の弟子になる。
第八週 昭和34年 喜美子21歳 「信楽初の女性絵付け師ミッコー」として新聞に載る。
第九週 昭和34年夏、丸熊陶業の社長が亡くなり深野組解散。秋、喜美子の絵付け火鉢が完成する。
第十週 昭和34年秋、喜美子、十代田八郎に陶芸を習いはじめ、彼に恋をする。

脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき

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